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友達にゲームを勧められてしまった話  作者: しらすめし(遅筆屋Con-Kon)
20/57

取引を持ちかけられてしまった

「ただいま戻りましたー」

「「戻りましたー」」

「はぁーい、お疲れ様ー」


 ダンジョン攻略を終え、オレたちはユリネさんの店に戻ってきた。


 帰り道でもやっぱり注目の的で、正直居心地が悪いったらなかった。正直なところ、普通の装備が欲しい……。


「どうだった、新装備の性能は?」

「凄かったです。ゴブリン程度ならダメージゼロでしたし」

「ダメージゼロなんて、初めて見ました……」

「レベルは低いはずなのに、フリントさんは凄いです」

「へぇ〜そうなのね、役に立ってるようで良かったわ」


 役に立ってるどころじゃないけどな。


 むしろ、初期のメイルにはもう戻れないと思うくらいの高性能ぶりだし、見た目の注目度さえ気にしなければずっと使っていたいくらいだ。


 それはそうと、ダンジョンの報酬は結構渋かった。



 ボロボロの指輪アクセサリー:キングゴブリンが何処からか拾ってきた指輪。装飾は無く、ヒビが入っている。MP+2、INT+1。



 正直、弱い。無いよりはマシといった程度の性能でしかなく、しかもINTを必要としないオレには無用の長物だ。


 本当にこんなのが、ボスのドロップ品なのかと疑いたくなる……。


「ハズレを引いちゃったみたいね。とりあえず身につけておいたらどう?」

「え? いやでも、こんなもの付けていても……」

「忘れたの? デスペナルティの事」

「デス…………、あ」


 そうだった。


 倒された時のデスペナルティ。


 所持金の半額と、ランダムな装備品1つ。


「ハズレのアイテムをひとつ身につけておけば、それだけ重要な装備品を失う事を避けられる。PKを仕掛けてきた相手に、少しでも得をさせない為の工夫は大事よ」

「そう、ですね……」

「ま、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」


 どういう事……?


「専用装備は、他人が使えないだけじゃないの。生産職プレイヤーによるオーダーメイド品は、製作者が認めない限り売却もトレードも出来ないわ。それをPKして奪ったところでただのガラクタ……。解体して素材にするくらいでしか見返りが得られない。だから、トップランカーほどオーダーメイド品で装備を統一しようとするのよ」


 そんなシステムになっていたのか……。知らなかった。


 となるとこのゲーム、結構金策の重要度も高いな。オーダーメイド品となると、結構値が張るものだし……。


「そこで、私からひとつ提案があるのだけど」

「提案?」

「そ」


 そう言って、ユリネさんはピラリと1枚のチケットを取り出した。


 ただのチケットでは無い。金色に輝く、黄金のチケットだった。そんなバカな。


「これは、〈ギルド結成チケット〉よ」

「ギルド結成……」

「私はいわゆる"微課金勢"でね、月額のブースト券を購入してるの。その初回限定報酬として、これを貰ったの」

「そ、そうですか……。でも、それをどうしてオレに?」

「取引しない?」

「取引、ですか?」

「これをあげるから、君がギルドを立ち上げて欲しいの。その見返りとして、私が君のギルドの専属生産職プレイヤーとして加入してあげる。どうかしら?」

「え」


 それは、結構オレにとって破格の条件なのでは……?


「どうして、その提案を?」

「ギルドを立ち上げれば、ギルド専用のウィークリーミッションとマンスリーミッションが発生する。それを定期的にクリアするだけで、ギルドメンバー全員がその報酬を毎回貰えるの。それに、ダンジョンを攻略するパーティーメンバーにも困らない。ギルドに所属するだけでもメリットだらけよ?」

「いえ、それもそうですがそうじゃなくて……」


 オレとしては、ユリネさんが何故オレのギルドに入りたがるのか、それが聞きたいのだ。


「他のギルドに加入すれば良い話なのでは……?」

「それも考えたんだけど、ちょっとね……」

「はい……?」

「例えば、報酬目当てで大規模なギルドに入るでしょ?」

「はい」

「そしたら生産職の私は、少なくとも数十人分の装備品を用意しなくちゃならない。依頼がくる限り、毎回ね。それだけでも、結構しんどい」

「はぁ……」

「同調圧力っていうの? 私、それが嫌いなのよね。ギルドが大人数である程、何も言われなくても周りに合わせなくちゃいけない空気感……。そういうの、結構キツいのよ。かと言って、自由にやっていたらそれはそれで気に食わない人がいるかもだし、それでギルドを転々としていると変なイメージがつくかもだし……。だから今のところ、ギルド勧誘メールは全てお断りしているの」


 なんというか、苦労してるんだな……。


「でも、ギルド報酬が欲しいのも確かだし。それなら、君に作って欲しいなって思ってね」

「どうしてオレなんです?」

「フリント君は、他のプレイヤーと違ってガツガツしてないし、始めたてでまだフレンド同士の繋がりもほとんど無い。君のところでなら、私も自由にさせて貰えそうだしね」


 要は、オレのギルドに入る事で勧誘の嵐から解放されたいって事か……。


「どうかしら? 私を君のギルドに入れてくれたら、専用装備をたくさん作ってあげるわよ? もちろん、サクラちゃんとスミレちゃんの分もね」

「わぁ……!」

「本当ですか?!」

「ええ、もちろん。フリント君さえ良ければ、だけどね?」


 まぁ、オレとしては断る理由は無いかな。


 元々大人数は苦手だから、他人のギルドに入るつもりは無かったし。


「……分かった。作るよ、ギルド」

「決まりね。じゃあ、これあげるわ」


 ユリネさんからチケットを受け取り、とりあえずストレージに入れた。


「今日はもう終わるから、ギルドは明日で良いかな?」

「良いわよ。それに、ギルドにする為の拠点探しもあるし、一生モノの名前も考えなくちゃだしね」

「えっ……」


 衝撃の事実。


 ギルド立ち上げって、拠点探しから始まるの……?


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