ゴブリン迷宮のボス
「ウオオオォォォ……」
「ギキキィィッ!」
「うわぁお……」
ボスの間に突入すると、そこはゴブリンの大群が待ち構えていた。
その一番奥には、一際大きなゴブリンの個体が佇んでいる。きっとアイツがボスに違いない。
【キングゴブリン】
Lv:30
「うん……、うん?」
レベル、30?
「あれ、レベル低くない?」
「いえ……、普通くらいですよ?」
「そう、か……」
どうやら、ちょっと感覚が狂っていたみたいだ。
自分のレベルだってまだ低いのに、レベル30を低く感じるなんてどうかしている。
とにかく集中だ!
「オレが突っ込んで引きつけるから、とりあえず援護よろしく!」
「は、はいっ!」
「任せてくださいっ!」
数が数なので、全員で手分けしないと片付けきれない。
「スタッグビートルアームズ、右腕展開!」
オレは右手にも大バサミを出現させ、両手でゴブリンを挟みながらボス目掛けて突っ込んだ。
「うおおおお! 効いてる! ダメージ通ってるっ!」
とうとう通常攻撃でまともなダメージが入るようになった事で、大バサミで挟んでから倒すまでの時間がかなり短くなった。
というのも、ロックヴェノムアームズが追加された事で、スタッグビートルアームズと合わせて2つ分の武器の攻撃力が単純に上乗せされているらしく、オレのSTRはかなり上昇していた。
そこに、さらにSTR1.5倍補正である。通常攻撃のダメージが入るのは道理であった。
「【振動拳】!」
そこに、さらにMPを消費してスキル振動拳を発動。ヒット数3倍効果で、雑魚ゴブリンならなんと挟むだけで確殺出来るようになった!ヒャッハー!
「はあああっ!」
「ええいっ!」
サクラちゃんとスミレちゃんも、それぞれで奮闘していた。
スミレちゃんが弓の攻撃スキルで数体まとめてなぎ倒し、撃ち漏らしたゴブリンをサクラちゃんがメイスでボコボコに殴り潰していた。しっかりと連携が取れてて、あちらは問題なさそうだ。
「よっしゃ! 雑魚全滅!」
「ウオオオ……!」
取り巻きを全滅させる事に成功した。
グズグズしていると雑魚ゴブリンはどんどん復活してくるので、さっさとキングを潰さないといけない。
悪いけど、速攻でカタをつける!
「チェェェンジ、ロックヴェノムアームズ!」
スタッグビートルアームズからロックヴェノムアームズへと武装を切り替え、キングに殴りかかった。
「うおおお! 【ヴェノムショット】!」
至近距離から攻撃スキルのヴェノムショットを撃ち込んだ。まるでサブマシンガンのごとく連射し、キングは猛毒状態に陥った。
「【ヴェノムフォッグ】!」
そこに、さらに毒の霧を周囲に展開。毎秒の毒ダメージがキングを襲う。猛毒と併せ、キングのHPゲージがもの凄い速さで減っていった。
うわ何コレすっげェ……。
「グオオオぉぉぉ……!」
「っと」
キングは手持ちの剣で攻撃してくるが、それを左手で難なく受け止める。そして、オレのパッシブスキル【物理反射】によってキングは強制的に反動ダメージを負い、HPの減りがさらに加速する。
キングの攻撃を受け止め続けていると、やがてキングのHPはゼロになり、消滅。同時にドロップ品が入った宝箱が出現した。
「ふぅ、終わった終わった」
「「え、えぇぇ……」」
後ろで見ていた2人は、何とも言えないような声を漏らしていた。
「どうしたの?」
「い、いえ……」
「キングゴブリンを、あんな方法で倒すのは初めて見たので……」
「え。……皆は、どうやって倒してるの?」
「えっと、遠くから高火力の魔法を連射したり……」
「要するに、力でゴリ押しですね。キングゴブリンはそこまで防御力はありませんから」
「そっか……」
そりゃそうか。
特殊ギミックのようなものも見当たらなかったし、火力さえあればゴリ押しで十分というのは本当らしい。レベリングに大人気というのも頷ける。力で殴れば良いのだから。
「さて、戻ろっか」
「「はい!」」
今回は新装備の性能を試すのが目的だったし、その目的は十分に果たせた。
ここにはもう、用はない。
オレたちは転移ポータルに乗ってダンジョンを脱出した。




