パーティーに誘われてしまった
―――10分ほど前の事。
「ログインっと。……ん? ボイスチャット?」
ユートピアにログインして早々、ボイスチャットの申請が届いた。
お相手は、ユリネさんである。
いったい何事かと思いつつ、申請を許可した。
『はあい♡ 数日ぶりね、フリント君』
「気持ち悪い声出さないでください、ユリネさん。何かあったんですか?」
『あら、つれないわね。でも、そこもイイッ♪』
「……切りますよ?」
『冗談よ、冗談!』
まったく……。
オレのフレンド、変人しかいなくない? 2人だけだけど。
『コホン。……えっとね、君に会いたいっていうプレイヤーの子たちがいるんだけど』
「ほほう」
オレに会いたいというプレイヤー……。
ユリネさんが"子"というからには、そのプレイヤーはアバターの外見だけでなく、中身も彼女より歳下という可能性が高いな。
『それでね。君、今日も採掘場跡にいるでしょ?』
「いますけど……」
ログイン情報は時間だけで、場所までは分からないはずなんだけど……。
って、このところ毎日採掘場跡に入り浸ってるし、バレて当たり前か。
『その子たち、多分これからそっちに行くと思うの。だから、とりあえず話だけでも聞いてあげてちょうだい』
……"たち"?
最初は聞き間違いかと思ったけど、そうじゃなかった。
「えっと、ひとりじゃ無いんですか?」
『ええ。その子たち、リアルじゃ双子らしいの』
「ああ、そういう……」
要するに、兄妹仲良くコンビプレイして遊んでるって訳か。仲が良くて結構な事だ。
ヒロアキの奴も、いつになったらゲームが出来るようになるのやら……。
『そういう訳だから。……あの2人の事、よろしくね?』
「了解です」
『それじゃあね〜』
「はい。それじゃあ」
通信終了。
さて、と。
いつも通り、鉄鉱石集めでもするか。
そうすりゃ、向こうから来てくれるでしょ……。
―――ドォォォン!
「およ?」
少し離れたところで、衝撃音が聞こえてきた。
爆発物じゃない、何かが着弾した音。
この辺の魔物はそんな強くない。あんな衝撃音が出るほどの攻撃は、魔物相手にはオーバーキルもいいところだ。
残る可能性としては、プレイヤー同士の戦闘だが……。
もしかして、ユリネさんが言っていたプレイヤーだろうか?
だとしたら、相手はおそらくPKプレイヤーか……。
こないだオレも、ここで襲われたばかりだからな。そういう可能性も十分有り得る。
「といっても、AGIの低いオレがノコノコ行ったって、捕まえきれるとはとても……いや、ちょっと待てよ?」
オレは慌ててステータス画面を開き、スキル一覧を確認した。
「おお、良いの持ってんじゃんオレ!」
それは、この辺でひたすらタンコーロウを狩りまくっていたが為にいつの間にか獲得していた、専用スキル。
―――スタッグビートル・バンカーショット!
スタッグビートル・バンカーショット:左手の鋏を目標に射出する、中距離物理攻撃スキル。引き寄せ可能。威力:小。持続ダメージ補正:小。クールタイム:30秒。
取得条件:固有武器〈スタッグビートルアームズ〉を装備した状態で、ナックル武器の熟練度2に到達する事。
これさえあれば、足の遅さをある程度カバー出来る。
後は、出来るだけ気づかれないよう射程ギリギリまで近づくだけだ。
「……こういう時、気配遮断スキルとか隠密スキルとか欲しくなるよなー」
どれも短剣、または刀剣装備専用のスキルだけど。
ナックル装備のスキル一覧には、そういった隠密の類のスキルは一切無い。所詮は脳筋系の武器か。
「さて、と。ぼちぼち救援にでも行きますか!」
◆◆◆
―――そして、現在に至る。
「大丈夫だった?」
「あ、はい。おかげさまで……」
「あ、ありがとう、ございます……」
ふむ。
武器は違うが、それ以外の見た目はそっくり同じ、ゴスロリ調のドレスアーマーで揃えられている。顔のデザインもほぼ一緒。瞳の色が少し違うのと、サイドテールの位置が逆になっているくらいだ。
いくら現実では双子だからって、そこまでするのか……。もの凄いこだわりを感じる。
「見た事の無い、大バサミの武器……」
「やっぱり、あなたがユリネさんが言っていたプレイヤーなんですね……」
「まぁ、そうだね……」
うーん、この感じ……。
喋り方の癖といい、なんか歳下と話してる気分だ。
実際、中の人の歳なんて知らないけども。
なんとなく、そういう感じがする。
「あ、私はサクラと言います。こっちは妹のスミレ。私たちは双子で、いつも一緒にプレイしてるんです」
「ど、どうぞ、よろしくお願いしますっ!」
「ご丁寧にどうも。オレはフリントって言うんだ、今後ともよろしく」
「「オレ……?」」
「?」
オレが自己紹介した後、2人は無言になってしまった。
「どうかした?」
「え、えっと……」
「もしかして、男の人なんですか……?」
「そうだよ。一応言っておくけど、このアバターの性別も男だからな」
オレはプロフィール画面を開き、2人に提示した。
それを見た2人は、驚愕の声をあげた。
「う、うそ……」
「男のアバターって、こんなに可愛く出来るものなの……?」
一見褒めているようで、微妙に失礼にも聞こえそうな発言は止めていただきたい。
「……お姉ちゃん」
「言いたい事は分かるけど……、でも……」
何やら悩んでるみたいだけど、そういえばオレに用があるって話なんだよな。
一応、聞いてみるか。
「ちょっと良いかな、2人とも」
「「は、はいっ!」」
声が揃う2人。
意識してやってる訳じゃない、よな……?
「ユリネさんから、2人はオレに話があるみたいに聞いてるんだけど……。合ってるかな?」
「は、はい。その、合ってます……。ね、お姉ちゃん?」
「え、ええ、その通り、です……」
「……」
さっきから歯切れが悪い。
もうちょっとはっきりして欲しいところだが、もうちょっとだけ待ってみる事にする。
「えと、その……」
「〜〜〜っ! あーーーっ! もういい! 決めた!」
いきなり姉のサクラが叫び出した。
「お願いします! 私たちと、パーティーを組んでくれませんかっ!」
「お、お願いしますっ!」
「お、おぉ?!」
勢いよく頭を下げる2人に、気迫で圧倒されるオレ。
(……え?)
今、オレの脳内は……。
(もしかして、パーティーに誘われた……?! え、うそ? ……オレが?!)
めちゃくちゃパニックを起こしていた。




