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魔法は悪である。
これは子供でも知っている常識。
かつて魔法使いたちの時代があったそうだ。
しかし魔女狩りとともに魔法使いは表舞台から姿を消した。
魔女狩りから二百年。
多くの魔法使いが死んだ。
既に魔法を都市伝説などという輩も現れている。
いい時代になった。
だが、完璧ではない。
まだいるのだ。
排除しなければならないーーゴミを。
そうでなければーー
魔法使いは悪である。
◼︎
「魔法なんてあるわけないだろう!!」
「え、そうなの!?」
僕は予想外の返答に思わず声をあげる。
おっさんにとってその反応は意外だったのだろう。
「なんだ小僧。魔法信者か?あいつらに連れてかれちまうぞ?」
「あいつら?」
外へ目を向けると重々しい制服を着た男女が歩いていた。
目の前のおっさんは明らかに声を小さくして、その正体を教えてくれる。
「魔女狩りって言葉くらい聞いたことがあるだろ?あいつらはまだ魔法使いがこの街に潜んでると思っているのさ」
「へぇ」
「そもそも魔法なんておとぎ話でしか聞いたことがねえ。そんなものに警察を動かすだなんて、よっぽど暇なのかねぇ」
そう言うとおっさんは、手に持っていた酒を飲み干す。
「どこの田舎から出てきたのか知らんが、この街で魔法の話はしない方がいいぞ。魔法使いなんて言葉はもってのほかだ。疑わしきは罰せよじゃないが、あいつらのことだ。殺されちまう」
「……ふぅん。でももう手遅れかも」
「は?」
僕の背後に二人。
おっさんの背後に一人。
どうやら狙いは僕のようだ。
「ウィル=グリシアだな」
「……オーワタシ、コノクニニキタバカリデース、コトバ?マダワカリマセーン。ア、コノクニハー、チョトダケ、アツイデスネー」
「あたりか」
すぐさまこちらに向けられる銃口が3つ。
恥ずかしいことをした。
というか否定した方がよかっただろうか。
いやきっと意味はなかったな。なにを言ってもこうなったに違いない。
その証拠に全員今にも発砲する勢いだ。喧嘩っ早いやつは苦手だ。
「だとしたらなにか?」
次の瞬間、頭に衝撃がはしる。
背後の一人が僕を地面に叩きつけたのだ。
「お前を拘束する。いいな抵抗はするな」
しないよ。痛いもん。
けれど口にはださない。
そういえば師匠はよく僕を教育だなんて言って殴ったな。
時代が時代ならきっと大問題に発展しているに違いない。
って嫌なことを思い出してしまったじゃないか。
「ついてこい。お前に身柄は我々があずかる」
「はぁ」
気がつけば目隠しと手錠がかけられている。
ほんとう厄介なことになった。観光目的できたというのに。全くついてない。
「こ、小僧!!おまえ魔法使いなのか?」
連れられ店を出ようとした瞬間、背後からの声に振り返る。
視界は真っ暗だが、そこにはおっさんがいるのだろう。
「魔法使いなのか?」この質問にはこう答えるべきだろう。
「いやだなあ!!おっさんが言ったんだよ。おとぎ話だって。あっはっは」
「そうか、そうだよなーー」
「そうだよ。僕は魔法使いさ」
店内を沈黙が支配する。
BGMだけが陽気に木霊する。
「うて!!この店にいる者、全員だ!!」
背後の一人が合図をだす。
それに反応するように、二人が銃を構える。
「そうはさせないよ」
僕は一つ。一番得意な魔法を展開する。
【解体魔法】それは唯一、僕が師匠に認められた魔法。
銃が発砲されるよりも早く、銃はバラバラに分解される。
「なっ!!見えないはずなのになぜ!!」
「教えない」
続いて手錠を分解し、目隠しをはずす。
自由だ。やっぱりなにかに縛られるのは趣味じゃない。
さっさと終わらせて観光しないと。
あ師匠へのお土産はなににしよう。
毎日投稿です。