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第6話 モレスビー


 ラエの要塞で夜を明かした次の日、モレスビーの街に戻る前に50人の冒険者とダンとデイブは寄り道をして森を抜けた先にある2人が100体程の獣人を倒した草原に向かった。


「模擬戦を見た時に2人の実力は十分に理解したつもりだったけれどもそれにしても凄いな」


 ブルーが立ち止まって見ている草原にはまだ相当数の獣人の死体が転がっていた。BクラスやCクラスの冒険者達が残っている死体から魔石を取り出している。ダンもデイブもこれらの魔石はいらないと言ったのでBクラス以下の冒険者にとっては手に入れた分だけ金策になると一斉に草原に飛び出して行っていた。


「雑魚はいくらいても所詮雑魚だよ」


「それはノワール・ルージュだから言える台詞よ。残念ながら私たちではこの数を相手に1パーティで向かい合って勝てる気がしない。それがたとえBクラスだけであっても」


 マリアンヌはデイブの言葉に答えながら草原を見ていた。目に入る獣人達はそのほとんどが綺麗に首から上を切断されて絶命している。そして顔の原型を止めていない顔らしきものも多数転がっていた。おそらく2人が魔法で倒したのだろう。見る限り1体に対して攻撃は1度だ、魔法でも剣でも一度の攻撃で1体を倒している。


 昨日の模擬戦の後ダンに自分の模擬戦の時の事を聞いたら彼は一言、


「動きが大きすぎる。予備動作が大きいと攻撃を読まれやすい上に攻撃に連続性がなくなる。もっと1回の動作をコンパクトに、そして鋭くするんだ」


 と言っていた。確かに大きな予備動作は一見派手に見えるが攻撃の間隔が開き、連続攻撃には向いていない。集団戦には適していない。


 ノワール・ルージュの2人とボルケーノのメンバー達が見るともなくBクラス、Cクラスの冒険者達が魔石を回収しているのを見ていると突然デイブとダンが森に体を向けた。ボルケーノのメンバーが何事かと同じ様に顔を森に向けた時にはデイブが精霊魔法を撃って森の木の影から出てきた獣人の頭を吹き飛ばした。


「……全く気が付かなかった」


 マリアンヌが言うと他のボルケーノのメンバーも頷く。


「格上と対戦し続けていると勝手に気配感知の能力がアップする。これはジョブに関係なくだ」


 デイブが言った。


「なるほど。つまり私たちでも鍛錬すればそのレベルになれるということだよね?」


 その通りだとダンとデイブが頷いた。それにしても魔法の威力も凄い。振り返り様に無詠唱であの距離であの威力か……マリアンヌがクラウドを見ると彼もびっくりした表情をしていた。


 魔石を集め終えると一向は再び森を抜けて草原を歩いていく。途中で野営をした翌日の昼ごろ、一行の目の前に都市を囲んでいるであろう高い城壁が見えてきた。


「あれがモレスビーの街だ」


「ラウンロイドの城壁に近いものがあるな」


 先頭を歩くマリアンヌの声を聞いてダンがデイブに顔を向けていった。


「こっちは本当に獣人が襲ってくるからだろう。頑丈な造りにしてある」


 デイブが言う。50人が街の城門に近づいていくと詰所から衛兵が出てきた。顔馴染みのマリアンヌを見て声をかけてくる。


「ご苦労さん、全員無事に帰ってきたみたいだな」


「ああ。皆無事よ。それとこちらの2人は客人。身元は私が保証するわ。これからギルドに顔を出すつもりなの」


 衛兵の2人は赤いローブと黒いローブの2人連れを見てから顔をマリアンヌに向ける。


「マリアンヌが保証するなら問題ないだろう。ようこそモレスビーの街へ」


 城門を潜って街の中に入るとそこはダンとデイブにとっても馴染みの風景だった。広い通りが走っていて通りの左右には建物があり露店が並んでいる。通りを歩いている人の服装もモスト大陸で見るそれと大差ない。


 市内に入って5分程歩くと冒険者ギルドの建物が見えてきた。

 中に入るとこれもモスト大陸と同じ様な造りになっていた。カウンターにクエスト掲示板、そして打ち合わせ用の広いスペース。酒場も兼ねているんだろう。奥にカウンターがある。


 ボルケーノの5人がカウンターに近づいていきギルマスとの面談を求めた。他の冒険者達は自分達のギルドカードを別の受付嬢に出している。


「クエストが終了したんですね。わかりました」


 そう言って奥に消えていった受付嬢が戻ってくると


「2階の会議室で話を聞くそうです」


 わかったと答えると振り返ってデイブとダンを見て


「彼ら2人は客人でね。ギルマスに紹介したいんだけど良いかな?」


「ボルケーノの皆さんが言われるのなら問題ないでしょう。ご一緒に2階にどうぞ」


 一連のやりとりを聞いていたダン。ボルケーノはこの街で唯一のAランクの冒険者パーティだと言ってたな。なるほど信用があるわけだ。


 ボルケーノの5人とダンとデイブが2階の会議室に入って座っているとそう待つ事なく1人の男とマリアンヌとのやり取りをした受付嬢の2人が部屋に入ってきた。赤いローブと黒いローブをきた顔の知らない2人がいるのを見て、そしてギルマスはまずはマリアンヌに顔を向けると口を開いた。


「ラエの要塞で無事獣人を倒してきたみたいだな。全員無事に帰ってきたと報告を受けてるぞ」


 ギルマスの言葉にボルケーノのメンバーがお互いに顔を見合わせた。そうしてマリアンヌがギルマスと受付嬢に顔を向けて言った。


「100体ほどいた獣人を倒したのはここにいるノワール・ルージュのデイブとダンの2人なの。今回私たちは何もしていないわ」


 その言葉にびっくりするギルマス。他のメンバーも頷いていた。

 ギルマスはローブを着ている2人に視線を移すと、


「初めて見る顔だな。俺はコーエン。このモレスビーのギルドマスターをしている」


「俺はデイブ、こっちがダン。俺達は他の大陸からやってきた冒険者だ。ジョブは俺が赤魔道士、ダンが暗黒剣士。2人でパーティを組んでいる」


「他の大陸からやってきただと?それで赤魔道士?暗黒剣士?」


 びっくりして言うギルマスのコーエン。隣の受付嬢も驚いて目を見開いている。デイブがマリアンヌの顔を見ると頷かれたのでデイブはギルマスに顔を向け、


「長い話になるが聞いてくれるかな?」


「頼む」


 コーエンのその言葉でデイブが話を始めた。モスト大陸からこの大陸に飛んできたこと、そこで見かけた獣人をダンと2人で倒したこと。そしてモスト大陸ではランクSの冒険者だったことなど。


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