第7話 純白のセカイ
真っ白な空間。
空も地面も何もかもが白く、輝いて見える。
そしてそれに付け足されるようにして、クラスのみんなが次々に現れ、何事かと混乱が巻き起こり、辺りがザワザワとし始める。
と、そんな時。
誰かの指を鳴らす音が異様に響いた。
急に辺りが何も聞こえないほどに静まり返る。
声を出していても、音が思うように響かない。
『やぁみんな。』
突如、少年のような、少女のような声が耳元で響く。
そして全員が全体の中心に目を向けた。
そこにはいつの間にか、今までに見たことのないような姿をした子供が立っていた。
黒い髪は短く……と思いきや、よく見れば長い髪のようにも、銀髪にも見え、少年かと思えば青年にも少女にも見える、不思議な姿。
そんな人間が、いきなり目の前に現れたのである。
『誰なんだ、というような顔をしているね。そうだなぁ……とりあえず今は「パルラ」って名乗っておくよ。みんなよろしくね。』
そうして自己紹介を終えたパルラは前に歩き出す。
まるで氷の上を歩いているようなスピードと歩法で、みんなの前を通過し、口角を上げる。
『ハハッ、やっぱりみんな変わってない。僕としては嬉しいよ。では!僕がみんなをここに連れて来たワケを教えるね!!』
そうして、この不思議で真っ白な空間で、パルラが説明を始めた。
『先に言おう、君たちをこの世へ連れてきた張本人はこの僕!君たちにはとあることをやって欲しくて連れてきたんだ♪そしてそのあることとはいったい!?』
身振り手振りを効かせ、あちこちを歩き回り、にこやかに笑いながら説明を続ける。
『それは!!!魔族を倒し、この世に住まう14の種族を救うこと!!で、あーる!!!君たちにはその資格があり、それ相応の力を持っている!!リキはちゃんと感じ取れたでしょ??力は違えど、それに並んだ能力、技能がここにいる全員に備わっている!!元々あった技能は底上げされ、その技能を最大限に活かせる能力が全員に配られているんだ!』
そこまで説明すると、なんの力なのか、体が浮き上がり、まるで浮遊霊のように動き回る。
通った後にはキラキラとした粉が舞い落ち、体に降かかってきた。
『じゃあ今度は、どんな能力を得たのか、今現在はどのような技能なのかを視認する方法を教えるね!!』
そこまで説明を終えると、いきなり景色が大きく変わる。
いきなり現れた台の中心にパルラが立ち、説明をしている。
そして自分たちはと言うと、いつの間にか綺麗に並べられた椅子に座らされており、その体の前にはちょうど良いサイズの机が並べられ、まるで学校の教室を模しているようにも思えた。
『ハイハイ、驚くのもいいけどちゃんと話を聞いてねー?まず、見る方法だけどぉ、簡単で異世界系あるあるっ!『ステータスプレート』と応えるだけでいいのですっ!試している人がいたけど、教える前に見つかっては面白くないからね。制限させてもらっていたよ。それで表示(の説明)に移るんだけど、意外に量が多いからめんどくさいんだよね。まぁ、説明するけど。』
そうして、渋々説明に入る。
代わりに自分のステータスプレートを見せながら説明を始めた。
数値を表す部分だったり、個人情報に該当するところはどこも文字化けしていて視認することはできなかった.
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名:■□▪▫■□ Lv.■□▪▫■□
■□歳 ○
H P:■□/■ M P:■□/■
STR:■□ CON:■□
POW:■□ DEX:■□
AGI:■□ INT:■□/15
LUK:■□ SIZ:■□/15
スキル:
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪
職称:
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪
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『……っと、コレが俺のステータスね。文字化けは個人情報だから。知らなくていいことなのです。では!見方を説明するよ!』
しばらくの説明が続く。
見方と言えど、それはどれも少し考えれば分かることで、そこまで聞き入れるべきものではなかった。
STRは力量を表し、CONは耐久力、POWは担力、DEXは器用さ、AGIは素早さ、SIZは個人の大きさ、INTは個人の知識量を表す。
LUKはそのままの意味で、運の良さを表し、スキルは今現在使えるものが書き記され、そのランクレベルも同時に書き足されるらしい。
ちなみに職称というのは、いわゆる呼び名のようなものらしく、周りから鍛冶師と言われれば鍛冶師と記され、勇者と呼ばれれば勇者と記される。
なので、幾つもの職称を持つ人は少なくない。
それと、罪状も同じようにそのに付け足されるらしく、あまり油断はできないとのこと。
ついでに言うと、SIZとINTは特別で、最大値が15までしかないらしい。
INTの平均は6で、10を超えていれば難関大学を合格できるレベルで、13を超えれば、賢者と呼ばれてもおかしくはない。
『説明は……このぐらいかな?では次に、君たちに魔族に対抗するために、やって欲しいことがある!』
そう言うと、パルラがみんなの横を歩き回りはじめる。
『君たちには大いなる力が備わっている。しかし、それを最大限に引き出すには、あるものが足りない。それは、武器である。それも普通の武器ではない。
勇者に聖剣が必要なのと同じように、君たちにもそれ相応の武器が必要になる。ではその武器はいったいどこにあるのか?安心したまえ。ちゃぁんと分かる。
外の、周りがよく見渡せるところに行って辺りを見渡してみるといい。金色の光の柱があるはずだ。
そこに行けば……君たちにあった武器が置かれてある』
そこまで言い終えて、全体を見回す。
にこやかに笑い、もう大丈夫!と言わんばかりにひとつ頷いたところで、何かを思い出したように顔を上げた。
『……あっ、そういえば……いやでも…………まぁ、大丈夫か!なんとかなるっしょ!』
目線の先にいるのは、2人の先生。
降り積もる不安。
慌てる先生。
だが声が出せず、静かな空間にただパルラの声が響く。
『大丈夫だって。安心して!起きてみればわかるよ。……たぶんだけど……。』
「「……!!!?」」
『では!!もうそろそろ時間だ。魔族は強大だ。少々手こずるかもしれないけど、何とか14の種族を救ってくれることを願っているよ。では、またそう遠くない未来に逢おう!!』
「〜〜〜〜〜!!!」
『じゃあね〜!☆』
そう、パルラが言った途端、視界にノイズが入り始める。
気づいた頃には視界は真っ暗になり、今現在目を閉じていることに後になって気付いた。
「あれ……」
目を開けると、もう既に日が昇っていた。
全員が同時に目を覚ます。
部屋のカーテンを開けると朝日が眩しく照りつけ、目を刺激した。
何かが大きく変わり始めていることを、その場にいる勇者全員が感じた。
この世界は……元にいた世界とは大きく、何かが違う。