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第1話 異世界に転移した#1

風が吹く。

太陽の光に照らされ、黄緑色に輝く木の葉が揺れる。

真夏の暑苦しいこの時期、汗を制服に染み込ませながら、俺たちは校長の話を聞いていた。

まだ朝と言えど、夏は夏。

暑すぎる。

この教室の冷房もつい先程動き始めたところで、まだとてつもなく暑い。

女子も男子も、肩あたりまでしかない袖から熱気を流し、熱を逃そうと体が動く。

額を拭い、顔を仰ぎ、首元を開く。

クラスの全員がひとつの教室に集まっているからか、熱気がとてつもない。

湿度は上がりっぱなしだ。

先生も暑そうに体を仰いでいる。

この時期、各学年がひとつの場所に集まるのは危険とされ、それぞれの教室にそれぞれのクラスが集まり、リモートという形で、画面の向こうで校長が話をしている。

学期末。

明日はついに、夏休みだ。

一月以上の長期の休暇。

そして、大量の課題。

天国とも地獄とも言えるそれは、生徒を大いに興奮させる。

「ついにこの日が来た」と。

明日は誰しもが待ちに待った夏休み。

……の、はずだった。


「うぁぁぁ!!!」


「何だこれ!?」


「あ、慌てないで!落ち着いて!!」


突如、床に黄金の光が描かれる。

3つ、4つの円が次々に描かれ、その中に見たことの無い文字が並べられている。

突然の出来事に、一気に混乱が巻き起こる。

だが、それも束の間。

ほんの一瞬の騒ぎの後、その教室は、不自然な程に静まり返った。


風に乗ってやってきた黄緑色の木葉だけが、教室の中心に残った。


…………………………


真っ白な空間。

全身に纏わり付く浮遊感。

何かが勢いよく自分の体に流れ込んでくる。

あの教室にいた全員がそれを感じていた。

どこかに落ちている。

どこに落ちている?

それは誰にもわからなかった。

周りを見ればそれぞれの生徒がそれぞれの体制でどこかに落ちている。

恐怖のあまり、声を荒らげる人もいた。

そして今度は、視界が眩い光に包まれた。

…………………………


「うぐぁっ」


「イッタタタタ……」


眩い光が晴れたと思えば、腰や背中に衝撃が走り、とても辛そうに起き上がる。

「大丈夫か?」「何が起こっている?」

小さな混乱と、心配する声が点々と聞こえてくる。

真っ白い壁、見たことの無い屋根、床。

そして目の前には、豪華で頑丈そうな、とてつもなく大きい扉。


どう考えても学校ではない。


ここから得られる情報はそれだけだった。

ちょうど全員が立ち上がったその時、大きな扉が重い音を立てて開かれる。

外からの眩い光が入り込み、目を薄めて全員がそこに注目する。


「おぉ、あなた方があの伝説の勇者様たちでしょうか??」


その声が聞こえてきたのと同時に見えたのは、たくさんの鉄の鎧に包まれた騎士たち。

その前には、若い女性と老人、そして超強面な男性がいた。

声を聞いた限り、先程の声の主は老人だろう。

白い髭を生やし、杖をついている。

顔はあまり不気味には見えず、むしろ優しそうな顔をしていた。

次に、若い女性が1歩前に出て、閉じた口を開く。


「神の御加護があらんことを。あなた方は、神様の貴重なお目で選び抜かれた、勇者様です。そして、私たちの身勝手な理由で呼び出してしまい、誠に申し訳ございません。」


艶やかな金色の髪に、美しい容姿。

そしてその柔らかい唇から発せられる、透き通るような声色は、誰しもの目を釘付けにさせた。

そして今度は強面の男性が1歩前に出て、誰よりも大きな声でこう言った。


「我々一同!!貴方様がいらっしゃることを大いに楽しみにしておりましたァ!!!!!」


思わず全員が耳を塞ぐ。

まるで耳元で叫ばれたような、それほどに大きな音だった。


「ガイルさん。そんなに大きな声を出されてしまっては、まだ幼い勇者様方が萎縮されてしまいます。」


「むっ!それもそうだなァ!!この通りだ!どうか、許してくれないだろうかッ!!!」


膝に手を付き、頭を下げる。

次に向けてきたその目は、まさに羨望の眼差しだった。

キラキラとしたその目からは、なんとも言えない気味悪さが溢れ出ている。

すると、今度は老人が前に出てきて口を開いた。


「ふぉっふおっふおっ、気迫があるというのも騎士道じゃ。マイン様もそう制するでない。ガイルよ、おぬしも時と場合を考えたまえ。それにまずは名を名乗らねばなるまい」


「申し訳ありません。」


「すみませんん!!!」


すると、改まったように老人がこちらに向き直り、ひとつの咳払いの後、それぞれが自己紹介を始める。


「ゴホンっ、勇者の皆様。どうかお許しください。ワシの名は、ヴァン=ウォルフォードと言いますのじゃ。大魔導師をやっておりまする。お見知り置きを」


「私は!!ウルファイド王国聖騎士団第一軍特官幹部せいきしだんだいいちとっかんかんぶ及び、大隊長!!ガイル=ウルハインである!よろしく頼む!!!!!」


「私は、聖女のマイン=ウルファイド=ハイリアです。どうか、今後ともよろしくお願いします。」


この時、その場にいた、勇者と呼ばれた皆は確信した。


異世界にやってきたのだ、と。

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