第8話 メッセージ
「……………」
レインが話し終わると、劇団メンバー達の間に静寂が訪れた。
「……官能小説ですか…?」
「フン…別に変な事はしてねぇよ……まぁ…そういう事だ…」
そしてレインは、劇団メンバー達の方を向くと、真っ直ぐな声で言った。
「……ケリを付けないといけないのかもな…」
「…そうした方がいいと思いますよ」
すると、ソフィアがそこで、思い出したかの様にして、劇団メンバー達へ叫んだ。
「…ちょっと待て、明日も早いんだ。そろそろ寝ないとまずいだろ!」
「……たしかに…ッ!」
それを思い出した劇団メンバー達は、急いで拠点へと戻っていった。
「…話に夢中で……すっかり忘れていた…ッ!」
それから次の日の朝、劇団メンバー全員がレインに呼び出された。
「……昨日…俺は俺と王の件に……『ケリを付けないといけない』と言った……だから俺はケリを付ける」
「はい」
レインはポケットから手紙を取り出し、全員の前で読む。
“シャロル様へ、私が騎士団を脱退した事に関して、伝えたい事がありますので、会ってもらえませんか。今夜、街の時計塔の最上階で待っています”
「………………」
「……ケリを付ける為…誰かこの手紙を王に届けてきてくれないか…?」
「いや!自分で届ければいいじゃないすか!」
「恥ずかしいだろ!」
レインとメンバー達が話し合った結果、クラウンが手紙を届ける事となり、クラウンは城の前まで向かった。
「……よし、行くか」
その時、クラウンは近くの路地裏で、数人の男に絡まれている少女に目が留まった。
「離せ…ッ」
「そんな事言うなよ〜、俺らと遊ぼうぜ?」
『うわ、可哀想。助けてあげよう!……けど…何の役を演じようかなぁ〜……』
その時、クラウンは瞬間的に強いと思っている存在を想像した。すると、目元へ傷が浮かび上がる。
「おい」
「ああ?」
「離してやれ」
レインの姿となっていたクラウンは、タチの悪い男達へと言った。
「何だテメェ…?」
「……レイン…ッ!?」
「痛い目を見たくなければ、とっとと去るんだな」
「痛い目を見るのはそっちじゃねぇか!?」
タチの悪い男達は、一斉にレインへと襲いかかった。レインは、近くにあった石を拾うと、男達の顔面へヒットするよう的確に投擲した。
「グワァ!?」
「ぐげ!?」
「い……いくぞ!」
男達はよろめきながら、去っていった。
「フン、全く。大丈夫か…?」
クラウンが子供の方を向くと、少女はフードを取った。クラウンは少女と思っていたが、その子はシャロルだった。
「…シャロル…様…!?」
「レイン……」
まさかの展開に、クラウンは動揺を隠せなかった。しかしクラウンは、レインを演じながらシャロルへ自然に話しかける。
「……こんな所で会うとは…」
「…フッ……たまに…一人で街を歩くのが好きでな…」
「………丁度良かった…」
クラウンは、シャロルへ手紙を手渡す。
「これは……?」
「……あとで読んでください」
そしてそそくさと、シャロルの前から姿を消す。
「レイン…!」
『…これでよし……』
そのままクラウンは、拠点へと戻っていった。クラウンが去ったあと、シャロルは手紙を読む。
「…………………レイン…」
その夜、時計塔の最上階にて、腰の短刀を研いでいたレインの前に、シャロルが現れる。
「……来たか」
「………ああ」
レインは研ぐのをやめ、シャロルの前へ立った。
「……余が剣を持ちたいと言ったあの日も、お前は剣を研いでおったな」
「…そういえばそうだな……」
月を見るシャロルへ、レインが静かに語り始める。
「……まずは…俺が騎士団を辞めた理由を話すか…」
「……………」
「…シャロル……アンタは…」
「レイン」
レインが話すのを遮るように、シャロルがレインへ言った。
「……余がお前に恋をしている…と言いたいのだろう…?」
「……………ああ」
「そしてそれは……実ってはならぬ恋であり…それを実らせぬ為に…国の騎士団を辞めたと……そう言いたいのだろう?」
「話そうと思ったこと全部言うじゃねぇか」
レインが思わずそう言うと、シャロルが無邪気に笑った。
「…余の恋が許されぬものであり、何よりお前が望まないものである……お前に言われずとも……そんな事分かっておる…」
「……シャロル」
「だが、言わせてくれ」
「余は、お前のことが好きだ。お前の為なら、王の位も、この国も、何もかも捨てられる。余と、契りを結んでくれませんか…?」
シャロルが、レインへと手を差し伸べる。
「………………」
「………余は…お前のことを愛してやまなかった……お前の事を考えない日など無いほどに……」
そして涙を流しながら、シャロルは震える声で言った。
「……………貴方に出会えて…幸せでした…ッ」
「…シャロル様」
するとレインが、自分の涙を拭き、シャロルへと言った。
「……俺も…貴方が愛してくれて…幸せでした…」
二人は月の下で、大粒の涙を流した。
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