第7話 レインの過去
「レイン!」
「シャロル様」
「何をしておるのだ?」
「剣の刃を研いでいるのです」
数年前の話、レッドイン王国の王子であり、8歳になるシャロルは、夜明けの騎士団を作り、王国公認騎士団として国に仕えていた23歳のレインに懐いていた。
「レイン!」
「シャロル様」
「余も剣を使いたいぞ!」
「……まだ早いです」
レインは、シャロルに小さな木の剣を手渡した。シャロルは、不満そうにレインを睨んだ。
「何だこれは!」
「それで充分ですよ」
「おいおい、一回くらい使わせてやれよ」
そこへ、重そうな鎧を着るブラッドが歩いてきた。
「ブラッド!」
「シャロル様、俺の剣を振ってみるか?」
「やめろ」
レインは立ち上がり、ブラッドが差し出した剣を奪った。
「……幼くして剣を持ってもロクなことにならん」
「おいおい、英才教育って奴だぜ?」
「ガキの頃に剣を握った結果、俺達みてぇな剣以外知らねぇ、馬鹿な奴が生まれたんだろ」
「レインは馬鹿ではないぞ」
ピリついたレインとブラッドの間に、シャロルが割って入った。
「……プッ…ハハハハハハッ!!……この雰囲気で言うかよ…!」
「…はぁ……シャロル様、貴方にまだ真剣は早い。今はこの木剣で我慢してください」
「……分かった」
そして、城の庭にてシャロルが自分の身の丈にあう木剣で、素振りをしていたある日。
「やぁシャロル様……」
「…お主は……むぐッ!?」
使用人数人が、シャロルの口を塞ぎ、袋の中に入れた。
「お前を連れてきたら、あの方から金が貰えんだわ…!」
「おい!早くしろ!」
「き…きさ…ッ」
「へへ…!」
そしてそのまま、あの方と呼ばれる人物の元へと運んでいった。
「まだ来てないみたいだな」
「……何をしているのか分かっているのか…無礼者…!」
「へッ…うるせぇガキだぜ」
使用人は乱暴にシャロルを袋から取り出すと、地面に転がせた。
「おい!殺すなよ!」
「分かってるよ、ちょっと遊ぶだけさ。このガキ、女みてぇな顔立ちしてるしな」
『誰か……』
その時、シャロルの耳に、怒りの混じった聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい」
「あ…?」
その瞬間、いつのまにか背後に立っていたレインに、使用人は殴り飛ばされた。
「大丈夫かシャロル様!……よし…ギリギリセーフだな…」
そして服を破かれているシャロルを見て、レインは使用人達を叩きのめした。
「もう大丈夫だ、安心しろ」
「……レイン…」
「シャロル様!大丈夫か!?……ってもう倒してんじゃねぇか!」
「遅いぞブラッド」
その一件以来、剣術の練習をしているシャロルは、レインが担当の時のみ、ソワソワしていた。
「……………」
『…なんかシャロルがこっち見てんな……まぁいいか…』
そして時が経ち、シャロルが10歳になる頃。レインは深夜に、シャロルから呼び出された。
「何かありましたか…?」
「…レイン……」
すると、シャロルはレインに抱き付いた。レインが困惑していると、シャロルは恥ずかしそうに言った。
「は…ッ!?」
「お主を見ていると…胸が熱くなるのだ!」
「シャ……シャロル様!?」
「それに……お主の事を考えてると…ここも…」
「…ッ!!」
それを見たレインは、シャロルをすぐにベッドへ寝かせた。
「シャロル様、一旦落ち着いて
そしてレインが慌てた様子で、部屋から出ようとすると、顔の赤いシャロルがレインの腕を掴んだ。
「離れたくない……」
「シャロル様…ッ」
「……ここにいてくれぬか…?」
「…分かりました」
シャロルが寝付くまで見守ったレインは、次の日ブラッドに相談した。
「………お前…マジか………まさかヤッてねぇよな…」
「そんなわけがない俺は絶対にそんなことはしないッ!!」
テンパった様子で、レインはブラッドへ言った。
「…けどそれ……普通にヤバくねぇか…?……シャロルはこの国の跡取りだぜ?」
「……………」
「……シャロルは同性のお前に惚れちまった…これが何を意味するか分かるよな?」
ブラッドの言う事を、レインはしっかりと理解していた。
「…全部話してケリつけてこいよ……それがお前の為でもあり…シャロルの為でもある…」
「………そうかもな…」
できなかった。弟のように可愛がっていたシャロルの気持ちを、突き放す事などレインには不可能だった。
「………国王…私は騎士団を辞めます」
そして、騎士団の仲間を率いてレインは城から去っていった。
「何故!?…何故だレイン!?」
「…………………」
「レイン!!」
「……シャロル…」
満月の夜、レインは別れ際にシャロルへと言った。
「ガキの子守りはもう飽きたんだよ、やはり俺は血で血を洗う傭兵稼業が向いてる」
「…な…ッ…」
シャロルを拒絶できないのならば、シャロルが自分を拒絶すればいい、レインはそう考えた。
「……じゃあな」
「待て!」
シャロルが走って、レインについてくる。
「…それなら……余も行くぞ…」
「消えろ」
「消えぬッ!」
それを聞いて、レインはシャロルへ雷の魔法を打ち込んだ。雷は、シャロルの動きを封じ、シャロルはその場に膝をつき動けなくなった。
「がッ…!?」
「……じゃあな」
レインはそう言い残し、闇夜の中へ姿を消した。
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