第62話 Zクラスからの帰還
「誰だお前ら?」
「Bクラスの奴だって」
3人はZクラスの生徒に囲まれる。
「Bが何のようだコラ!?」
「……どうせまた肝試し的な感じだろ」
するとクラウンは、Zクラスの生徒達へ言った。
「Zクラスに見学に来ただけですよ、帰っていいですか?」
「あ?」
生徒の1人が、クラウンに近付く。クラウンがグリムの方を向くと、グリムは笑いを堪えている。
「……俺たちを舐めてんだろ」
「…いや別に……」
その時、生徒がクラウンに殴りかかった、クラウンは無意識にかわして、背負い投げをした。
「うがッ!?」
「おい!」
「なんだテメェ!!」
『ヤバい……ついやってしまった…』
生徒達は、今にも襲いかかってきそうな雰囲気で、3人を睨む。3人は、コソコソと話す。
「……おいクラウン…お前結構強いんだな…」
「…どうする?」
「魔法で逃げようか…?」
3人が話していると、グリムが言った。
「君達何してるんですか?」
「…グリムさん…」
「見学に来た人達のもてなし方じゃないでしょう」
そして、グリムは生徒達に言う。
「すみません、僕の友達が」
「いや、大丈夫っス……」
「ほら、3人は帰るんですから、道を開けてください」
グリムのその一言で、生徒達は道を開けた。
「…良かった……帰れそうだ…」
「……吾輩なら倒せるというのに…」
「ンなわけねぇだろ!…こんなヤバい奴等に勝てるわけねぇ!」
すると、道を開けている生徒の1人が、ボソッと呟く。
「やっぱ騎士は雑魚だな…」
「………は?」
アーサーが、呟いた生徒を睨む。
「今なんつった…?」
「騎士はザコいって言ったんだよ」
「…ンだとテメェ…」
生徒がアーサーに詰め寄る。
「帰れるうちに帰っとけよ、雑魚職業の騎士くん」
「ねぇ」
「あ…?」
その瞬間、アーサーは生徒をブン殴った。そして、一瞬怯んだ生徒に、アッパーを喰らわす。
「か…ッ!?」
そして倒れた生徒の顔面を、何度も殴った。その光景を見たクラウンとマーリン、Zクラス生徒は、あっけに取られて呆然と眺めていた。
「もう一回言ってみろよ!ああ!?…誰がザコだって!?」
「アーサー…」
「誰にもザコだなんて言わせねぇ!騎士は強ぇんだ!騎士は!」
すると、グリムがアーサーを止めに入る。
「友達がすみません……代わりに僕が謝ります…」
「………あ…っ」
アーサーは、ハッとして後退りした。
「なので……このくらいで許してもらえませんか…?」
「あ…あぁ…」
膝をつくグリムを見て、アーサーは震える声で言った。
「俺…俺は……」
「アーサー…行こう……」
そして、3人はZクラスを後にする。その数秒後に、生徒は目覚めた。
「くッ…あの野郎………あっ…グリム…さん…」
「……君は後でお仕置きね」
「…は…はぃ……」
◆
Bクラスの学生寮の、アーサーの部屋で3人は話していた。
「……悪い………俺…ついカッとなって…」
「誰だって、あんな事言われたらキレるだろう」
「だね」
するとアーサーは、少しの沈黙の後に話し始めた。
「俺さ…騎士って職業が……嫌なんだよ」
「…え?」
「………俺はもっと…上位の職業になりたかった……もっと強くなりたかった……なのに…俺は騎士だった……」
そして、アーサーは低い声で言った。
「……けど諦めきれねぇんだ…騎士でも……勇者パーティみたいに強くなれるかもって……職業で人は決まらないって…」
「……………」
「だから……職業で人を判断する奴は…許せねぇんだ…」
「それはみんな一緒だよ」
クラウンが、アーサーの肩をポンと叩いて言う。
「……君があの時…手を出さなければ……間違いなく僕が手を出していたと思うよ」
「…そうだな」
「…………お前ら…」
そして、クラウンが声色を戻して、2人に言った。
「さて、辛気臭い話は終わりにして、ババ抜きでもしようよ!」
「…いいなそれ!」
「フン……」
3人は、トランプを持ってババ抜きを始めた。
◆
「……ランスロット」
「…ライト……久しぶりだな」
学園の外で、ライトがランスロットと向かい合っていた。
「オリジナルは見つかったのか?」
「……いや…まだだ……オリジナルどころか…オリジナルの手先すら見つかっていない」
「…まぁ……だろうな…」
ランスロットは、学園を見上げながら言う。
「そんなすぐ見つかるようなら……オリジナル討伐はとっくに完了しているからな」
「……それで?…近況報告しに来ただけか?」
ライトが尋ねると、ランスロットは少しの沈黙の後に答えた。
「…これを見ろ」
「これは……髪の毛?」
ランスロットが、黒い髪の毛をライトに手渡す。その瞬間、ライトは息を飲んだ。
「……これは…クラウドRの…!」
「ついさっき見つかったものだ……もしかしたら…このエレノアに……攻めてくるかもしれない」
「……………ヤバいな」
「…ああ」
「Zクラスには番長と呼ばれる存在がいる!」
「番長…?」
「番長とは…このZクラスの王!……絶対的存在である!」
「番長に逆らった者には……死あるのみ…」
「…死だと…?」
次回『グリムの入学式』!!




