第4話 夜明けの騎士団
「……つまり、お前は役に入り込む事ができれば、その役と同じ力を得るという事だ」
そう説明されるが、クラウンはいつも通り無気力なままだった。
「うわぁ…僕の職業スキルそんな凄かったんですね……」
「それに、お前は演者としては天才だ。役作りにも本気で取り組み、本番では想像以上の演技を披露する。これが何を意味するか分かるか?」
「…んー……」
「鬼に金棒、無敵という事だ」
それを聞いても、クラウンは表情を全く変えなかった。
「……クラウン…お前の居場所はここだ」
「はい」
「…変な事は考えるなよ……」
「分かってますよ!」
クラウンが無邪気に笑みを浮かべると、劇団メンバーは一安心した。
「良かったぁ〜!、その力使って復讐するとか言い出したら、どうしようかと……!」
「…フン……そうか…」
レインは、笑みを浮かべると練習場から出て行った。
「……お前の事だから復讐に行くって言うと思ったんだが…」
「………サリーが…怒ると思って…」
クラウンは練習場の天井を眺めながら、呟いた。そして次の日、劇団メンバーで副団長のソフィアが、慌てた様子でレインの部屋へ駆け込んできた。
「団長!!」
「どうした騒々しい、お前らしくないぞ」
レインが仕事をしながら言うと、ソフィアは息切れしながらレインの仕事台を叩いた。
「…と……とんでもない公演の依頼がきました…ッ!」
「……話せ」
「レッドイン王城にて…クラウンが見事な剣技を披露した…【金色の剣聖と漆黒の魔王】を公演してほしいと……国王からの依頼です…ッ!!」
「なんだと…!?」
貴族の前で公演する事はあったが、国王からの依頼は初めてだった。
「それと…これも…」
依頼書と共に手渡された一枚の紙を見て、レインは目を丸くした。
「………全員を招集しろ…」
「はい…ッ!!」
すぐに劇団メンバーが練習場に集まり、それを確認したレインが、メンバーへと伝えた。
「……というわけで…国王から直々に依頼があった」
「…王様の命令聞くの久々だな」
「昔を思い出すぜ」
ざわつくメンバー達へ、レインは続けて言った。
「そして、演武の依頼も来ている。この後、クラウンとソフィア、クレイは来てくれ」
「…なるほどな……」
「国王が演武を、ねぇ」
「王に命令されて、それを実行する。昔と同じだな」
そして最後に、レインは勇気づけるようにメンバーへ、言い放った。
「それじゃあ、公演は1週間後だ!各々、稽古に励め!」
「「「はいッ!!」」」
「演武って…何ですか?」
「……行けば分かるさ」
そう促され、クラウンはソフィア、クレイと共に、レインの部屋へと向かう。
「…来たか」
「演武ってなんですか?」
「………夜明けの騎士劇団としてではなく、夜明けの騎士団としての依頼の事だ」
「騎士団…?」
レインは、何も知らないクラウンへ、ゆっくりと説明し始めた。
「……元々…この劇団は夜明けの騎士団という…王国公認騎士団だった……」
「え…王国公認騎士団…?」
王国公認騎士団、国に所属している騎士達が集まった組織で、国王の出した任務を引き受け、遂行する。民間の依頼を受け、それを遂行する通常の騎士団とは違い、民間からの依頼は引き受けられないが、十分な衣食住が補償される。
「……まぁ…色々あって公認騎士団を辞め、劇団になったのだ……だが、これでもそこそこ名の売れた騎士団だったからか、辞めた後に魔物退治や護衛などの依頼が殺到してな、辞めた後、劇団をする傍ら裏で、引き受けていたのだ」
「なるほど……」
「そして今回、国が公認騎士団を辞めた俺達に、王としてではなく、一個人としての依頼を発注してきた……その依頼を…お前達3人が担当してほしい」
「…そういうことですか」
そして、レインが演武の内容を説明し始めた。
「時は公演の当日、国王を暗殺しようとする傭兵アサシンの存在が判明したらしい。そのアサシンを捕まえて、何処が暗殺しようとしたかを探れというものだ」
「……もっとヤバいと思ってましたが、結構簡単っすね」
「ふむふむ……って!駄目ですよレインさん!」
ソフィアがハッとして、レインへと言った。
「当日にクラウンが演武を担当したら、誰が勇者役するんですか!?」
「まぁ、慌てるな。その問題の打開策ならもう考えてある」
「マジですか!?」
レインは、その概要をクラウン達に伝えた。
「………スゴい作戦っすね…」
「面白いですね!」
「よし、それじゃあ稽古してこい。剣術と魔法の訓練も忘れずにな」
「「はい!」」
そして、クラウン達はレインの部屋を後にした。
「…夜明けの騎士劇団……騎士団と劇団を両立させるなんて凄いなぁ〜…!」
「……団長の采配がいいのさ。俺達は基本、団長の命に従うだけだからな」
「まぁ、従った結果、全部上手くいくからな!……あの人、未来見えてんじゃねぇのかって思うわ……」
団長の話をしながら、3人は練習場へと向かっていった。
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