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第31話 大当たり!!

「はッ…!?」


クラウンが目覚めると、そこは病室だった。隣には、笑みを浮かべるグリムの姿があった。


「…僕は……」

「2時間37分42秒17も寝てましたよ!」

「……数えてたの…?…怖いなぁ……」


ベッドに座ると、クラウンの腹に痛みが走った。


「いッ…つ…」

「昨日の事、覚えてませんか?」

「………確か…黒死鳥と……仕合を…」

「…ええ、そうですよ。クラウンは黒死鳥と、仕合をしたのです」


そしてグリムは、昨日の事を話し始めた。





「…………死神…此れは避けられるか…?」

「………」


居合いの構えを取った黒死鳥を、クラウンはニタニタと笑っていた。


「死ッ!!」

「無駄ですよ…?」


2人が斬りかかる速度は、ほぼ同時だった。


「……ッ!!」


刃の無い刀が、クラウンの腹にめり込んでいた。クラウンの剣も、黒死鳥の左肩にめり込んでいる。


「あ…ぐぅ……」

「……ッ…」


そして、クラウンがその場に倒れると、黒死鳥はクラウンをジッと見ていた。


「……死神…までは至っていなかったか……」

「…クラウン……凄いスピードで強くなってますね…」


黒死鳥はグリムの方を向くと、刀を突き付けながら言った。


「次は……グリム殿…貴殿と手合わせを……」

「いえ、もう無理ですよ?」

「……な……………ッ!?」


すると、黒死鳥はその場に跪いた。左手の力が入らず、感覚が無かった。


「…そんな状態では……僕と戦えませんねぇ……」

「……演者クラウンか……くッ…見事也……ッ」

「相討ち…ですね!」

「……………某も…まだ未熟也…」


そしてフラフラと立ち上がると、黒死鳥はグリムに背を向けて言った。


「…演者クラウンとの仕合は引き分け……今度はクラウンを倒し…貴殿に挑ませてもらう……」

「楽しみに待ってますよぉ〜!」


ゆっくりと歩きながら、黒死鳥は去っていった。





「……引き分け…」


クラウンは、自分の手を見ながら言った。


「…まだ……完璧に死神を演じる事は……」


するとグリムが、クラウンの手を持ち、優しい声で励ました。


「それでも、3分の1は演じられていましたよ!」

「……グリム君…」

「あの黒死鳥との仕合も、引き分けに持ち込むし!…凄いじゃないですか!」


そして、剣を渡すとグリムは囁いた。


「……だから、そんなに落ち込まないでください」

「…ありがとう」


剣を受け取り、クラウンはベッドから降りた。外に出ると、そこはいつもの宿だった。


「え……ここまで運んでくれたの…?」

「はい!僕!力持ち!」

「……ごめんね、世話かけて…」

「いえいえ!」


その時、ソフィアがチラシを持ちながら、歩いてきた。


「おっ!…もう怪我は大丈夫なのか?」

「はい、おかげさまで」

「そうか、それは良かった」

「そのチラシなんです?」


グリムが尋ねると、ソフィアは「これか」と言って、2人に手渡した。


「なんでも、近くの商店街で、クジ引きをやってるらしいんだ」

「ほぉ〜!」


チラシを見ると、商店街のとある店で、1000G以上の商品を買った客は、クジ引きができるという旨の事が書かれていた。


「俺は…ハズレだったからこの……スライムゼリーだったけどな…」

「スライムゼリー……」

「まぁ、上手いからいいけどよ」


スライムゼリー、子供に人気の安い菓子。水色のスライムで、いちご味。


「クラウン!やってみましょうよ!」

「いいけど……今って戦争中だよね…」

「まぁまぁ!どうせ一等の旅行なんて、当たらないんだしさ!」


「大当たり〜!一等の聖魔剣山の旅行券を贈呈〜!!」


クジ引きをした結果、クラウンは大当たりだった。


「いやいやいや!!あり得ねーだろ!!」

「やりましたね!クラウン!」

「……でも…喜んでいいのかな……今、戦争してる最中だから行けないでしょ…」


「…クラウン、最近お前はよく働いてるから、休暇を与えようと思っていたんだ」

「……え」


レインにそのことを話すと、レインはいつも通り落ち着いた雰囲気で言った。


「その休暇で、旅行に行けばどうだ?」

「……こんな上手い話…あるわけない……僕、死ぬのかな」


4人まで行ける事が分かり、クラウンは周りの人を誘った。


「…すまないクラウン。用事があるのだ」


イリスは用事があり、行けなかった。


「その日は、前線の指揮をせねばならない」


レインは、前線の指揮をしなければならない為、行けない。


「すまぬ、4人の王も前線で戦っておるのだ。余も、対策を考えなければならぬ……」


王達も誘うが、ダメだった。


「その日は丁度、魔王に頼み事されててな」


エリーも諜報任務の為、行けない。その結果……。


「いやぁ〜!…まさかみんな行けないとはな!」


4人まで行ける旅行はクラウン、グリム、ブラッドが行くこととなった。


「ブラッドは全然、重要な任務を任されませんからねぇ〜!」

「ぅおい!…それを言うな…!」

「けど、どうしようか……」


あと1人、誘う人をクラウンが考えていると、レインがやってきた。


「クラウン」

「レインさん!」

「……俺の…まぁ…友達なんだが……コイツはどうだ…?」


レインは帽子と仮面をした、顔の見えない者を連れてきた。


「…誰ですか?」

「……レ…レイヴン……」

「1人余ってるのなら、コイツを連れていってほしい」

「…まぁ、いいんじゃないですかぁ?」

「そうだね……あっ…初めまして…レイヴンさん…」


レイヴンは、クラウンに差し出された手を、ゆっくり握って握手した。















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