第3話 夜明けの騎士劇団
「…ハァ……ハァ…」
「コイツ……人間じゃねぇな…亜人か……」
息切れするサリーへ、残り1人になった黒騎士が詰め寄る。
「このアマァ!!」
『……クラウン…』
「ほげッ!?」
黒騎士は、その場に倒れた。その背後には、大きな石を持つクラウンの姿があった。
「ぼ…僕もやれるよ……!」
「……フッ…ナイスだよ…クラウン……」
「こんの…ガキがァ!!」
完全に倒れたなかった黒騎士が、クラウンへ斬りかかる。しかし、間一髪サリーが守った。
「サリー!」
「…クラウン……」
サリーは完全に刃を防げず、腹に傷を負っていた。血が流れ出してくる。
「……ごめん…クラウン…」
「サリー…ッ!?」
「クラウン!!…私の古い知り合いに……レインという男がいる!…その男はレッドイン王国で、夜明けの騎士劇団という劇団の団長をしている男だ!」
傷口を押さえながら、サリーはクラウンへ叫ぶ。
「その男に頼れ!」
「サリー!?…何する気!?」
「……絶対に…生き抜くんだよ……ゴフッ…」
「サリー!!」
そう言い残し、サリーは黒騎士へタックルして、崖から落ちていった。
「サリー…!!」
1人残されたクラウンは、黒騎士達の亡骸の上で、ひたすらに泣いた。眩しい朝日が、号泣するクラウンを照らしていた。
「…………今日も大反響だったな!」
「お前の演技がスゲェからだよ!レイン!」
「…へへ…あんがとよ」
「団長!!」
夜明けの騎士劇団の本拠地にて、劇団メンバーの1人が慌てた様子で団長レインの元へ走ってきた。
「……なんだこの少年は」
「団長に会わせてくれって……」
「…あなたを頼れって…言われた……」
「……誰にだ」
「サリー…」
その名前を聞き、レインの目の色が変わった。
「………なんだと?」
クラウンは、半泣きで今まであった事を洗いざらいで話した。レインは、静かに話を聞いていた。
「団長ぉ…面倒見ましょうよぉ……」
劇団メンバーは、涙目になりながらレインに言った。
「お前の事情は分かった……良いだろう…お前の面倒を見てやる」
「うぉぉ!良かったな坊主!」
「ただし、うちの劇団で働いてもらおう。この劇団も、結構カツカツでな。『働かざる者食うべからず』だ」
「…分かりました」
そして、クラウンは夜明けの騎士劇団のメンバーとして、本拠地にある部屋に住むことを許された。そこから数日後に早速、劇の役として出演する事になった。
「……という事で、クラウン。お前は悪しき竜王を討伐する勇者、つまり主役として出演する事となった」
「おいおい!早速主役かよ!」
「……まだ劇の基本的な事を教えたばっかだろ…?」
メンバーが困惑する中、クラウンは自信満々に答えた。
「やります!」
「マジか!」
「……期待しているぞ」
ある程度の稽古をして、あっという間に月日は流れた。本番の日に、クラウンの背中をメンバーが叩く。
「いいか?、役になりきるんだぞ?」
「分かってますよ…!」
「よし、行け!」
そして、クラウンが舞台へ颯爽と登場する。
「我が名はマーカス!悪しき竜王を倒さんと参った!」
「……おいおい…マジか…」
「…団長……!」
劇が終わり、クラウンの元へ大勢の客が訪れた。
「君、今日が初舞台なのに、凄いね!!」
「スゲー名演技だったよ!!」
「ヤバ過ぎんだろアンタ!!」
そんなクラウンが裏に戻ると、メンバーがクラウンを褒め称える。
「マジでスゲェ演技だったよ!」
「ありがとうございます…!」
そして火がついた様に、クラウンは劇を成功させていった。そこから時が経ち、クラウンが18歳になったある日。
「…演じてるってより……もう役そのものになりきってるな……」
「剣聖ローズよ!、貴様の首を取れば、魔王様もさぞお喜びになるだろう!」
「やってみろ!!」
「でやぁあ!!」
クラウンは、魔王の手下役の劇団メンバーの攻撃を華麗に避け、凄まじい剣技を披露してそれを撃破した。
「なぁ、クラウンって剣とか使えないよな…」
「ああ……だから今回の舞台の戦闘シーンは、クラウンがあまり動かなくていいものにしたらしいが…」
「……めちゃくちゃ使えてないか…?」
劇が終わったあと、クラウンはレインから呼び出され、練習場に来ていた。
「何ですか?」
「クラウン、目の前に敵がいるとして、この前演じた剣聖として戦ってみてくれないか?」
レインから木剣を渡され、クラウンは素直に応じた。
「…ふッ……はッ!!」
「……やっぱり…」
クラウンは見事な剣さばきを披露し、劇団メンバーを驚かせた。
「……クラウン…お前の職業スキル【演者】は……とんでもないものかもしれない…」
「僕も薄々思ってたんですよね……なんか…演じてると……普段できない事もできてしまうから……」
「よし……とりあえず…次は賢者の役を…」
そして、指名された役をクラウンは演じた。すると、高度な魔法が展開され、劇団メンバーをあっと驚かせた。
「…確信に変わったよ……お前の職業スキル【演者】は…………役を演じていると、その役と同じ力を使えるという力を持っている…ッ!」
「…やっぱりそうですよね……なんかおかしいと思った…」
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