第22話 ブラッドの失恋
「フフ…ッ……クラウン…今頃、どんな反応してますかねぇ…!」
「どうしたグリム」
「何でもないですよぉ〜!」
レインの元へ、グリムは走っていった。そしてグリムとレインは、更衣室の中へ入る。
「ここの銭湯は格別でな、入った事あるか?」
「ないです」
「俺もだ」
「一度入ってそうな口振りなのに、入った事ないんですね」
そして服を脱ぎ、グリムとレインは大浴場の中に入る、
「…おっ!…来たか……ッて!…グリム!!」
「ほよ?」
「おま…髪を下ろすなッ!!」
ブラッドが青ざめながら、グリムへ叫ぶ。
「……トラウマが蘇る…ッ!!」
「あー、あれか」
「確か、僕とブラッドが出会った時の……?」
「そうだよ!、あんな恐ろしい事しやがって!」
◆
「あー……もうダメだ…」
「……おいおい」
失恋したブラッドは、とてつもない負のオーラをまといながら、酒場で飲んでいた。店主は、呆れながらブラッドへ言った。
「…女なんて山ほどいるじゃねぇか」
「……女なら誰でもじゃねぇよ〜!…あの……可憐な乙女が良かったんだよぉ〜…」
号泣するブラッドの目の前で、長い髪がふわりと舞った。
「…おぉ……」
「……可愛い…」
長い髪の少女は、酒場の戦士達には目も暮れず、ブラッドの横へ座った。
「らっしゃい。随分と場違いな、嬢ちゃんが来たもんだな」
「……うぅ…………う?」
ブラッドは、横に座った少女を見て涙を流しながら尋ねた。
「…な……なんだよぉ〜…嬢ちゃん……俺を慰めてくれんのかよぉ〜?」
「……店主さん、レッドバイスを2つ!」
「ほぉ、その年でレッドバイスを知ってるとは、だがこれはかなり強いぜ?」
店主がそう言うと、少女はブラッドを見ながら言った。
「…レッドバイスは元々、失恋した酒職人が、本能のままに作り出したお酒……」
置かれた赤い酒を見ながら、少女は語る。
「その後、失恋してドン底に落とされた人が、このお酒を飲んだ、すると新たな出会いがあった。それ以来、これは『出会いの酒』と呼ばれ、失恋した人達は飲む事が多い」
「こりゃ驚いた、アンタ相当な酒マニアだね」
そして、ブラッドに酒を渡すと、少女は言った。
「飲んでみたらどうです?」
「…ホントかよそれ……」
ブラッドは、酒を飲みながら少女を見つめていた。
「………zzz…」
「あちゃー……潰れちゃったよ」
レッドバイスのロックを、三杯飲んだブラッドは、その場で眠ってしまった。
「…どうするよ嬢ちゃん」
「………………」
そして、ブラッドが目覚めると、そこは宿のベッドだった。
「あっ!…目が覚めました?」
「…くッ……酔い潰れたのか俺は…」
少女を見ながら、ブラッドは尋ねた。
「寝ちゃってたので、宿まで運びました。代金は既に払ってます」
「…悪いな……」
「一杯飲んだあと、ブラッドさんがレッドバイスを瓶ごと出せって言って……断る店主から奪い、そのまま……」
ブラッドは、昨日のことをかすかに思い出し、頭をかかえた。
「俺…とんでもねぇことしてんな………今度謝っとかないと……」
「すみません……一杯だけのつもりが…」
「いや、アンタのせいじゃねぇよ……」
少女は平謝りした後、ブラッドに笑顔で言った。
「では、私はこれで……また、会えたら…」
「待ってくれ!」
ブラッドは、少女の肩を掴んで尋ねた。
「俺はブラッド、あなたの名前を聞いても…?」
「…………アリスです」
「…アリス…良い名だ………こんな出会いでなんだが、今夜、食事でもどうだろうか。ここまで運んでくれた礼もしたいし」
「……喜んで…!」
少女は笑みを浮かべて、快諾した。そして夜。待ち合わせ場所でブラッドが待っていると、少女が現れる。
「…アリス…さん…ッ」
「待たせたみたいで…すみません……」
「いえ!」
その後、2人はレストランで食事をする。麗しく、優しいアリスに、ブラッドは引かれていった。
「……また酒を飲んじゃったなぁ…」
「そうですね……」
ほろ酔い状態の2人は、夜の街を歩く。すると、ブラッドは恥ずかしそうに言った。
「………アリスさん、今夜は……2人でいませんか…?」
「……私も、今言おうとしてた所です…」
そして、2人は手を繋ぎ、少し高い宿へと向かった。
「………………………」
2人は宿の部屋で、お互いに向かい合う。
「…アリスさん……うわッ!」
「あッ…」
ブラッドが緊張したのか、何も無い場所で躓き、ベッドに倒れた。そして、アリスが馬乗りの状態になる。
「アリス…さん……」
「…ブラッドさん………僕ッ!…もう我慢できないよぉ!!」
その瞬間、アリスは自身の着ていた服を脱いだ。すると、逞しい腹筋があらわになる。
「ぽぇ…?」
情け無い声を出したブラッドへ、アリスは笑みを浮かべながら言った。
「アハッ!……期待しちゃいました?…すみませ〜ん…僕、男なんですよぉ〜……!」
「…………………ヴッ…」
「けどまぁ、それでも良ければどうぞ……僕もブラッドさんみたいな男性は嫌いじゃ……って…あれ…?…ブラッドさん!?」
ブラッドは白目を剥き、泡を吹き出しながら気絶していた。
「………どうしよう…困ったな……血だけ頂いて、寝かせておきましょうかぁ……」




