第20話 共通の敵
「では行くぞ!」
時間になり、騎士達と王は森の前まで歩いていく。そして、森の前に立つと、ハイルロッドが言った。
「我はハイルロッド!、人の王が1人!……そちらと話がしたい、代表者を出せ」
すると、森の中からローブをしている、小柄な魔物が出てきた。
「……どうぞ」
魔物は人間達を、森の中へと案内した。ピリつく雰囲気の中、森を進んでいき、魔物の国へと出た。
「…こんな国が……」
「我らの国と変わらないではないか……」
国を見て、騎士達があっけに取られていると、目の前にボーレインと、エンドーが歩いてきた。
「はは!…久しぶりだな夜明けの騎士団!」
「……異界のモノ……確かエンドー…だったな」
「ボーレイン、貴様、ここで何をしている!!」
バルガイドが、怒り混じりの声でボーレインへ叫んだ。
「よぉ、父上」
「…シャロルの暗殺未遂、挙げ句の果てには魔物の国を作るとはな!…何が目的だ!」
「ああ、このブラディーンの事か。これを作ったのはエンドーね、そんで、俺の目的はだな」
「え?、もう言っちゃうの?……そこはもう少し引っ張らないと、これが漫画なら展開早すぎるよ」
「……魔物の国を作り、余の暗殺を企む……お前達の目的は何だ」
シャロルが尋ねると、ボーレインはゆっくりと話した。
「作るんだよ、第二の帝国を」
「……なに…ッ!?」
帝国と聞き、王達や騎士達がどよめく。
「貴様……!」
「…この国を作ったのも、勇者の子であるシャロル暗殺を企んだのも、全ては帝国を作る為だよ。国名は、ブラディーン帝国…でいいか」
「もー、全部言うじゃん……」
「いいだろ別に?…お前だって、早く戦争したいと思ってんだろ?」
「……まーね」
その瞬間、周囲の魔物達が、王達へ刃を向ける。それと同時に、騎士達も周囲の魔物へ構えた。
「いやー、王全員が来てくれて助かったよ。ここで殺せば、暗殺の手間が省ける」
「ボーレイン…ッ!!」
「いいですねぇ〜!この展開!!ここでドンパチします?」
するとハイルロッドが、騎士達へ叫んだ。
「多勢に無勢!、一旦退くぞ!!」
「あれ?、逃げるの?」
「マナテイル!」
ハイルロッドがマナテイルの方を向いた。マナテイルが、杖を掲げる。その瞬間、周囲の魔物達が吹き飛んだ。
「今よ!」
「よし!脱出するぞ!!」
魔物達が離れたスキに、騎士と王達は森の中へと戻っていく。
「……やっぱ、話し合いは無駄でしたね!」
「ああ……ひとまず逃げるぞ」
森の中を駆けていると、目の前に魔物が現れる。
「フンッ!」
レインは、その魔物を薙ぎ払う。だが、魔物は次々と現れた。
「クソ!…コイツらァ!!」
クラウンが声のする方を見ると、ハインドがデタラメに、剣を振り回している。
「……バカが、何だあの太刀筋は…」
無視して、クラウン達は森の中から脱出した。森の外までは、魔物は追ってこず、森の中から騎士達を睨んでいた。
「みんな!、大丈夫か!?」
「ああ!、なんとかな……」
「クソ、魔物共め!!」
騎士達がお互いの安否を確認していると、気絶しているハインドを抱えたイリスが、最後に森から出てきた。
「姉さん!」
「……クラウンか」
クラウンは、イリスの前に走っていった。
「…良かった、無事だったんだ……」
「……何とかな…ここまでは追ってこないようだ」
イリスは兜を脱いで、森の方を見た後、5人の王達へ跪きながら言った。
「五王の皆様、早急に対処しましょう」
「……そうだな」
「クソ…奴等とんでもねぇな…」
すると、シャロルが騎士達へと言った。
「これより連合共同戦線令を発動する!」
「レインさん、何すかそれ?」
「……全国共通の法である、世界憲法の一つで、帝国崩壊後に作られたものだ」
連合共同戦線令。世界憲法の一つで、世界共通の敵が誕生した際に発動される法。五カ国全てが、その敵を排除する為に共同戦線を作り、敵の排除を行う。その間は鍛冶屋、公認騎士団、運搬業者を除く民間人は、自国の領土から出ることを禁止される。
「…ほぇ〜……そんなのがあったんすね」
「こんな時の為に、作られた法だ」
「つまり……これから戦争が始まるわけですか…」
「……ああ、そういう事だな」
夜明けの騎士団は、森の中に潜む魔物を、ジッと見ていた。
◆
「……すまないな、お前達には、しばらくこの宿で寝泊まりしてもらう」
死者の森から一番近い国である、スリーク王国の大型宿にて、夜明けの騎士団は寝泊まりする事となった。
「俺達の拠点よりいいじゃねぇか!」
「……何だソフィア」
「あっ、いえ、なんでも無いっすレインさん…」
そして満月の下、宿の前の公園で、クラウンが立っていると、夜の闇の中から凛とした佇まいの、女性が歩いてきた。
「…やぁ姉さん」
「……クラウン」
2人は、顔を見合わせた。




