第2話 追放された2人
「サリー!」
雨の降る中、ハイルーン家から少し離れた場所で、クラウンが止まった。
「……申し訳ありません…苛立ちを抑えられませんでした」
「…全く……追放されるのは僕一人で充分だったのに…」
クラウンはその場に腰掛けた、それを見てサリーもその横に座る。
「これからどうしようかなぁ……」
「……ふふ」
「…?……どうしたの?」
「いえ、追放されたというのに、表情が変わらないので、余裕そうだなと……」
「…これでも焦ってるんだけどなぁ……」
「……クラウン様を見てると…クラウン様より少し歳上の弟を思い出す…」
「弟がいたんだ……」
「はい……最近は連絡が取れてないですが…」
そして、少しの沈黙が続いた。数分後、その沈黙を破ったのは、クラウンだった。
「……サリー、父さんの言ってた、拾ってやった恩ってのは…?」
「その事ですか……」
クラウンが尋ねると、サリーは少し照れながら答えた。
「昔……私は傭兵でした……金の為なら…女子供も殺す……そんな時…ヘイオス様…貴方の祖父に出会ったのです…」
“お前は、こんな場所で腐っていい人間ではない。私と共に来い、お前に居場所を与えてやる。今よりも、だいぶマシになるハズだ”
「…なるほど……」
「あの方に惚れて、私は傭兵稼業から足を洗った」
サリーの昔話が終わる頃には、雨は止んでいた。びしょ濡れの二人は、夜空を見上げていた。
「……クラウン」
すると、2人の前にイリスが立っていた。
「イ…イリス…様…!?」
「姉さん…!?」
イリスは金貨の入った袋を、2人に差し出した。
「王家と繋がりのあるハイルーン家から追放された以上、この国に居場所は無いと思え」
「…………」
「この国から出るには足りるハズだ、余った分は食事代にでも服代にでも使うといい。勘違いするな、私は私の思う義理を通しただけだ」
そう言ってイリスは、2人の前から足早に去っていった。
「ね…姉さん!」
「……………」
「……ありがとう」
クラウンが叫ぶが、イリスは何も返さず、家に戻っていった。
「…イリス様は、クラウン様の味方だったようですね」
「……うん」
そして、2人は夜の街の中へと入っていった。街の光は星々のように煌めいている。
「……お似合いですよ!」
「…そうかなぁ…!」
2人は適当に服を買い、それに着替えた。再び街を歩いていると、サリーが床屋に入っていった。
「………切っちゃうの?」
「……メイド時代の私との…決別です」
サリーは長かった髪の毛を、バッサリと切った。
「…うん、首が涼しいこの感覚……昔を思い出す」
「……その髪型も似合ってるねサリー…」
「それじゃあ、最後は銭湯に行きましょうか!……雨にも濡れてますし…!」
そして2人は銭湯で湯に浸かった後、牛乳を飲んだ。
「やっぱ美味ぇなぁ!」
「……サリー…なんか印象が全く違うなぁ」
「す…すみません……はしたなくて…」
「いや……僕はそっちのサリーの方がいいや…あと、僕の事も様付けなんてしなくていいよ」
サリーは、少し顔を赤らめてクラウンに言った。
「じゃあ、クラウン」
「うん!」
そして牛乳を飲み終え、2人は馬車に乗り隣国である、レッドイン王国に向かおうとした。
「お客様ついてるね、レッドイン王国行きなら、丁度今から行くので最後だよ」
「おーマジか!」
「じゃあ、それに乗せてください」
2人は、最後のレッドイン王国行きの馬車に乗り込んだ。
「レッドイン王国に行ってどうするの?」
「とりあえず、また傭兵として仕事を探すよ。安心しな、もう殺し関連の仕事はしないからさ」
「魔物狩りとか?」
「まぁ、そんな感じだな」
馬車が出発すると、クラウンはサリーへ言った。
「僕も何か…」
「はは!……有難いけど、もう少し大人になってからだな」
「……もう大人ですぅ」
「まだ13だろ?、子供だよ」
するとその時、国境付近の崖に差し掛かった馬車が激しく揺れながら止まった。
「おい!何かあったか!?……ッ!?」
「どうしたの…!?」
「クラウン、見るな」
サリーの見た先には、馬車を運転していた御者の、無残な姿があった。
「……クラウン…絶対に馬車から降りたらダメだ…分かった?」
「…う……うん」
馬車からサリーが降りると、サリーと馬車を取り囲むようにして、黒い騎士が立っていた。
「………ハイルーン家か…」
「おい、殺すのはクラウンなんだよな。コイツは?」
「好きにしろ、だとよ」
「へへッ…そうか!」
黒騎士が、じわじわとサリーに詰め寄ってくる。
「……私達からの復讐を恐れたのか…理由は知らんが…ハインドめ……先代と違ってとことん腐ってんな……」
「心配すんな!、死なねぇ程度に痛めつけてやっからよ!!」
「フン」
詰め寄ってきた黒騎士へ、サリーが一閃。すると黒騎士の頭がゴトッと地面に落ちた。
「なッ!?」
「コイツ…!!」
「…こう見えても……職業スキル【魔法剣士】なのさ…!」
サリーは周りの黒騎士を、大きな炎で薙ぎ払った。
「ぐお!!」
「さぁ…来いよ!……クラウンには指一本触れさせないよ!」
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