第18話 動き出す
「……何とか脱出できたか」
「グリム、助かったぜ。お前、ある意味魔物だもんな」
「…おい……」
ソフィアがそう言うと、レインがソフィアを小突く。ソフィアは、ムッとするグリムへ謝った。
「あっ……悪い…」
「その悪いお口を、縫って差し上げましょうかぁ〜ソフィア〜?」
「ご…ごめんって、グリム……」
すると、ライン率いるラ部隊が歩いてきた。
「レインさん」
「…ライン、無事だったか」
「はい、何とか」
「……よし、今日の調査結果を報告しに行くぞ」
◆
「……なんと」
「それは本当か!?」
「はい、魔王グリフィンで間違いないでしょう」
その報告を受けて、5人の王達は少し沈黙した。
「…魔王は……職業が【勇者】にしか解くことができない封印をしていた筈だが……」
「……確か、シャロル様のお父上であるスタンリー王が…」
「ああ、勇者であった我が父、スタンリーが確かに封印したと聞いている………」
すると、マナテイルが他の王達へ言った。
「帝王も気になるわね」
「…帝王の遺体か……帝王を生き返らせようとしてるのか…?」
「けど、死者を生き返す事なんてできんのか?」
「……魔法で蘇らせた生物は、見た目こそ生前のままだが、元の人格は戻らない。自我の無い、ただ欲望のまま生きる存在になるだけだ」
バルガイドが、王達へ言った。
「そういう意味では、死者は生き返らない」
「……ふむ…何を企んでいるんだ…?」
「行こう、魔物の国へ」
「…は?」
シャロルが、王達へそう言うと、王達とレイン、ブラッドは目を丸くした。
「人の国の王として、魔物の国の王と対談する」
「…おいおい、マジか」
「……新たな国が誕生したというのに、既存する国の王である我等は、様子見するだけか?」
「いや、でもよぅ……?」
「魔物の王に会い、異界のモノとボーレインとの関係、そして何が目的かを聞けばいい……そうだろう?」
シャロルがそう言うと、王達は少しの沈黙の後に立ち上がった。
「……確かにな」
「…仕方ないねぇ……」
「では1週間後に……」
という話を、レインは夜、劇団員に話した。
「そして、公認騎士団になった俺達は、ついて行かなければならない」
「めちゃくちゃ大事だな」
「最近、国絡みの事ばっかしてる気が……」
すると、拠点に白髪のおじさんが入ってきた。
「あの……あなた達…夜明けの騎士団ですか…?」
「ああ、そうだが」
「…依頼を…頼みたいのですが…」
それを聞いて、レインは残念そうに言った。
「すまない、我等は公認騎士団へ戻ったのだ。だから、前と違い、民間の依頼は……」
「引き受ければ良かろう」
「うぉ!?…シャロル……」
劇団員の中に、シャロルが溶け込んでいた。
「よぉ!レイン!」
「お前ら………仮にも王様と近衛騎士長が、毎回毎回城の外に出てんじゃねぇよ…!…仕事あるだろ…!」
「まぁ、今はそれは置いといて」
「レイン、引き受ければ良いのではないか?」
レインは、ため息を吐いてシャロルへ言った。
「……公認騎士団は民間の依頼を引き受けられません。これはあなた方王様が決めた事です」
「だが、よく考えたらその法はおかしく無いか?何故公認だからといって民間の依頼を受けてはならんのだ」
「…確かに」
「それは作った人に言ってください」
すると、シャロルはレインに言った。
「では、その法は今日で撤廃しよう」
「はぁ!?…そんな簡単に言うんじゃないよ!…法は五カ国で決められてんだから、アンタが撤廃って言っても、他の王様が……」
[シャロルたんの、好きにしたらいいと思うよ:)]
[撤廃でいいと思うぜ〜?…つか、寝てる時にメール送ってくんな!]
[いいんじゃないの?、よくよく考えたら訳わかんない法だし]
[いいと思うぞ]
「……このバカ王どもが…そんな軽く…法を…」
「あっ!レインさんが倒れた!!」
「…あっ…おじいさん…依頼は引き受けますので〜…依頼書を…」
「本当ですか!…ありがとうございます…!」
依頼書を受け取ったソフィアは、クレイにレインを運ぶよう伝えた。
「……なぁ、クラウン」
「はい」
「この前から、俺達と王様の距離感、エグくね?」
「…………はい」
シャロルを見ながら、ソフィアはクラウンに言った。
◆
「……集まったか」
暗い聖堂の中、エンドーが顔の見えない5人に言った。
「ふわぁあ〜あ…ねむ…」
「なんだよ、いきなり呼び出して……」
「君達、こんな事したら駄目だよ」
そう言ってエンドーは、身体の一部を液体状にして、傷だらけの女性を吐き出した。
「俺じゃねぇよ」
「アタシでもないわよ」
「まぁ、だれでもいいよ」
エンドーは、虫の息の女性を踏みつけながら言った。
「力を持ってるとはいえ、僕達はコレと同じ人間なんだから。正義の味方がこんな事しちゃ駄目だろ?……それに、僕たちは、これからヒーローになるんだ」
そして、女性の頭を切断する。
「……野蛮な事は控えてくれたまえ」
「…言われてるぜ、タカナシ」
「チッ……」




