第17話 魔物の国
「オ部隊は国の外観、及び周辺区域の記録を。ラ部隊は、俺達レ部隊の反対側から侵入する」
「了解」
「よし、行くぞ」
レインが劇団員の部隊へ指示をした。そして乾いたローブをまとい、魔物の仮面を被って劇団一向は魔物の国へ向かった。
「この仮面かっこいいですぅ〜!!」
「……ところでブラッド、お前演技できるのか?」
「なんの?」
「魔物の演技だよ」
「ギャウガオーッ!!オレマモノ!!」
ブラッドが変な声で、魔物の演技をする。
「…お前は絶対喋るなよ」
「え?」
「そこまで知能低くねーっすよ……」
しばらく歩くと、死者の森が見えてきた。森は薄暗く、異様な雰囲気に包まれている。
「悍ましい雰囲気だな……」
「……気を引き締めていくぞ」
森の中に入ると、そこら中から視線を感じる。劇団一向は、なるべく平静を装って進む。
「…見えてきたぞ」
少し歩くと開けた場所に出た、そこには街があり、魔物達が人間のように暮らしている。
「……よし、気付かれていないな」
「…少しでも多く情報を持ち帰るぞ」
周りの魔物に同化し、劇団一向は街を見て回る。魔物の国は、人間の国と同じで、活気に満ちている。
「新鮮なお肉が入ったよー!」
「うちの子がね……」
「今日は何して遊ぶー?」
人間と変わらないような生活をしている魔物を見て、ソフィアがレインへ言った。
「……魔物は人間にとって、害でしかないと思ってたけど……変わったのか…?」
「人間と共存できるんじゃ……」
劇団員がそう言うと、グリムが言った。
「アハッ!…魔物が人間と共存できるわけないじゃ無いですかぁ〜!」
「なんだと?…コイツらは魔物は魔物でも…」
「グリムの言う通りだ」
「えっ…?」
レインは、ソフィアに「来い」と合図すると、公園に連れていった。
「………は…ッ」
「おーい!どこに蹴ってんだよー!」
「うひゃひゃひゃ!」
そこには、人間の頭部を蹴って遊んでいる、魔物の子供の姿があった。
「今日のおすすめは?」
「今日のおすすめは10歳の人間の肉だよ!」
「うちの子が2人、人間を狩ってきたのよ〜!」
魔物達のそんな会話を聞いて、ソフィアは固唾を飲んだ。
「……共存できると思うか?」
「…いえ……」
震える声で、呟くようにソフィアは言った。
「他の種族を殺し、あまつさえその死体を弄ぶような者達と、共存できるはずがない」
「グロいなぁ〜!」
その現場を後にして、劇団員一向は城へと向かっていった。
「……このような城を…どうやって短時間で…」
「ボーレインを連れていった、異界のモノの仕業だろう」
「確かに、異界の人のにおいがします」
すると、見覚えのある顔が見え、劇団員一向はその場に溶け込んだ。
「凄いじゃないかエンドー!」
「まぁね」
「こんな国を…短時間で作るなんて……!」
「アイツ…ボーレインだ」
ボーレインと、黒髪の青年が城の前に立つ。
「おい!エンドーが帰ってきたぞ!」
「おー!エンドー!」
城の中から、ツノの生えた青年と、少女が出てくる。
「……嘘だろ…」
「誰ですか…?」
「…魔王ケルフィン……ッ!!」
劇団員達の目の色が変わった。クラウンは、ジッと少女を見た。
「あの少女に見える魔物……かつて世界を滅ぼそうとした魔王だ……ハイルロッド王に討伐された筈なのに…」
「もう二度と、あのツラは見たくなかったぜ……」
「ケルフィン、アレは?」
「あるぞ!」
そう言うとケルフィンは、何も無い場所に、骸骨の入った棺を出現させた。
「……よくやったケルフィン」
「もっと褒めてもいいのだぞ?」
「これが、帝王の遺体か」
それを見たブラッドとレインが、前のめりになった。
「…帝王の遺体だと…ッ!?」
「おいおい、まさか奴等……帝王を復活させる気か!?」
「復活!?…でもあれ死体ですよね!?」
動揺するブラッドとレインは、何かを話している。
「……とんでもねぇ情報が取れたな」
するとレインが、魔法通信機でラ部隊へメールをした。ラ部隊のラインから返信が届いた。
[ラ部隊、そちらの状況は?]
[国の軍事力、重要人物、人口、技術力、等の情報を入手した]
[では帰還せよ。こちらはもう少し残る]
[了解]
「……俺達はもう少し、奴等の話を聞くぞ」
そして劇団員達が、盗み聞きしようとした時、グリフィンの目が血走った。
「……人間のにおいがする…」
「チッ……逃げるぞ」
「魔物の臭いが消えてきたか…ッ」
劇団員一向は、急いで来た道を戻っていく。
「待て」
「…!!」
その時、兵士らしき魔物に、グリムが掴まれた。
「貴様ら……人間臭いな」
「えぇ?…僕は人間じゃないですよぉ?」
兵士はグリムの目をジッと見ると、手を離した。
「……人間…ではない…」
「ほらぁ〜!」
「…時間を取らせたな」
「では行きますね〜!」
そして、劇団員一向は魔物の国から脱出した。




