第16話 王達の依頼
「……という事で、王達が夜明けの騎士団に依頼したいって…」
「お前……ほんとに…」
「いや、勝手に言ったのは悪かったって!…けど、調査できんのお前らくらいしかいないだろ!」
王達のいる神殿の前で、レインがブラッドと話している。
「…とりあえず、王達に……」
「クソ……お前覚えとけよ…」
「ごめんて!今度奢るからさ!」
劇団員達が神殿の中に入ると、5人の王が座っている。
「よく来てくれた。話はブラッドから聞いているだろう」
「はい」
「……魔物達の調査、頼めるか?」
「…………はい、引き受けましょう」
それを聞いて、王達はホッとする。
「…感謝する」
「報酬は?、何か欲しいものある?」
「……報酬…ですか」
するとレインは、シャロルの方を一瞬見た。そして、声高らかに言った。
「富はいりません、その代わり、我々夜明けの騎士団を、公認騎士団として迎え入れてほしい」
「…ふむ」
「自分から辞しておいて、と思われるかもしれませんが、どうか……」
それを聞いたハイルロッドが、尋ねる。
「……何故、戻りたい?」
「我々が公認騎士団に戻る事を、望む友がいるからです」
レインは、シャロルの目を見ながら言った。
「…シャロル王、我々が公認騎士団となる為には、我々の本拠地があるレッドイン王国の王である、あなたの許可が必要…………許可、してくれますか?」
そう投げかけるレインへ、シャロルは即、答えた。
「…はい……ッ!」
それを見て、他の王達は笑みを浮かべる。
「フッ、そうか。噂は本当だったのだな」
「青春してるねぇ〜」
「男同士だがな」
「それがいいのよ」
「……愛の縁は結ばれなかったが……絆は結ばれハッピーエンド…というわけか…」
そして、後ろに立っていたブラッドは小声で「ナイッス〜」と言った。
「もう一つお願いがあります。ブラッドの給料を減らしてください」
「…いいだろう」
「おぅい!何でだよ!!」
厳格な雰囲気だった神殿は、和やかな雰囲気へと変わった。
◆
「…あの時、俺が勝手に報酬決めて、悪いな」
「団長の赤面する顔が見れたんで、いいっすよ!」
「初めて見た、あんな顔の団長……」
調査当日、魔物達の国から少し離れた廃村にて、劇団員達は入念に準備していた。
「……恋愛かぁ…そういえば、彼女できた事ないなぁ……」
「マジで?、じゃあお前、経験人数0?」
「はい……」
「マジかよ〜!、俺でも3人はいるぜ?」
ソフィアとクラウンが談笑していると、背後から気配を感じた。
「僕が相手しましょうかぁ〜?…クラウン〜」
「うわ!、グリム君!?」
「ちゃ〜す…!」
「びっくりしたじゃないか!、何で君はいつも突然現れるのー!?」
びっくりしたクラウンは、グリムの肩を掴みながら言った。
「…ってか、何でグリムがいるんだよ!」
「俺が手伝えって言ったんだよ」
「えっ…ブラッドさん…!?」
ブラッドが、大きな箱を持って歩いてきた。
「来たかブラッド」
「ああ!来たぜ!」
「例のものは?」
「はッ!…この通り、取れたてピチピチさ!」
箱をドスンと置くと、ブラッドは蓋を開けた。中から、生臭いにおいがする。
「……よし」
「うわ……これ魔物の死体ですか…」
「ああ、人間のにおいを消すには、コレが必要だ」
劇団員は魔物の死体を箱から出すと、目の前に寝かせた。
「…あー……クラウン…最初はキツイが、段々と慣れてくる……」
「おい、ライン。コレの準備しろ」
「はい」
劇団メンバーのラインが、ナイフを取り出して死体の腹を裂く。ドプッと音を立てて、内臓が飛び出した。
「うぷッ……」
「……キツかったら見るなよ」
「いえ…大丈夫です……」
ラインが内臓を取り出し、近くに置かれているローブに向かって絞り、ローブに赤黒い液体がかかる。
「人数分できました」
「…よし、ローブが乾いたら出発だ」
それを見て、クラウンはソフィアに尋ねる。
「あのローブを着るんですよね……」
「そうだ」
「……臭いヤバそう…」
「初めは口呼吸しろ、そうすれば不快感な臭いは無くなる筈だ。そして、慣れてきたら、ゆっくり鼻呼吸に切り替えるんだ。初めから臭いに耐えられるやつなんて、いないからな」
すると、まだ乾いてないローブを着て、グリムがはしゃぐ。
「いい匂い〜!」
「…ソフィアさん……」
「……あれは例外」
それを見てソフィアが、レインに言った。
「…それにしても、なんか最近、グリムと行動する事が多い気がしますね」
「……たしかにな…まぁ、こちらとしては、死神が仲間でありがたいが」
「劇団を気に入ったんだとよ」
レインへブラッドが言った。
「……なんでも『いいひとが多いから』って事らしい…ははッ!…もう劇団員の1人だな!」
「…ブラッド」
「何だ?」
何かをレインはブラッドに伝えた、ブラッドは目を丸くしている。
「……マジ?」




