第15話 会議
「帝国が無くなって以来だな、緊急連合国会議を開くのは」
頭から足まで、隙間なく漆黒の鎧に身を包む、ヴァンガラウンドの王『ハイルロッド』
職業スキル【騎士王】
「確かにな……」
白い王冠を身につける、スリーク王国の王『バルガイド』
職業スキル【大賢者】
「ふわぁ〜……緊急会議を開いたのは、シャロルだったな。どうした?、何かあったのか?」
乱れた着物に身を包む、ホムラノ国の王『コジロウ・タチバナ』
職業スキル【剣豪】
「タチバナ!、アンタは緊急会議くらい、ちゃんと身だしなみを整えて来なさいよ!」
「おいおい、今日は口喧嘩しに来たんじゃねぇだろ?、とりあえずシャロルの話を聞こうぜ」
「……まぁ、そうね」
タチバナへ注意するぬいぐるみ、プラスタンドの女王『マナテイル』
職業スキル【神魔法師】
「それで?……どうしたんだ?、おチビちゃん」
「子供扱いしないでください」
凛とした表情で王達を見る、レッドイン王国の王『シャロル』
職業スキル【覇王】
「……ゴホン…まずは、これを見てほしい」
「なんだ?」
シャロルは王達に、スリーク王国の王子ボーレインが、自身の暗殺を企てていた証拠の記録を見せた。
「おいおい、お前の倅、とんでもねぇことやってんな!」
「これは……」
「暗殺の件も重要だが、一番の問題はここだ」
魔法記録機が、転生者らしき人物の映像を映し出した。それを見て、王達の顔色が変わる。
「……バルガイド、これはどういうことだ」
「これはどう見ても転生者か、転移者だよなぁ!」
「異界のモノの召喚は、禁止されているハズよ」
王達に問いただされ、バルガイドは少し焦った様子で弁解した。
「私は何も関与していない」
「……ほう?」
「暗殺の件も、異界のモノの件も、恐らくはボーレインが独断で行った事だ」
それを聞いて、シャロルは納得した様に頷いた。
「……ああ、バルガイド王がその様な事をする男ではない事は知っている」
「確かに」
「それじゃあ、暗殺も異界のモノも、ボーレインが勝手にやったって事?」
「…そうなるな」
するとハイルロッドは、シャロルに尋ねた。
「ボーレインはどうなったんだ?」
「……異界のモノと共に消えた。行方は分からない」
「そうか。では、ボーレインの手配書を作らねばな」
「…ボーレインめ、何をしようと……ッ」
バルガイドは、怒りの混じった声で呟いた。
「すんません!失礼しますッ!!」
「ブラッド!?」
会議をしていた神殿の中に、ブラッドが焦った様子で入ってきた。
「何かあったのか?」
「…はい……これを見てください!!」
そして真ん中のテーブルに魔法記録機の映像を映し出した。
「何だこれは……」
「……魔物が…こんなに沢山…」
映像には、とてつもない数の魔物の姿が映っていた。
「これは……何をしているんだ…?」
魔物達は石材や木材を運び、建造物を建てている。
「…魔物は巣を作ると聞くが……これは…」
「………街…?」
「だが、この規模は……まさか…」
「…はい……そのまさかです…」
映像の視点が切り替わり、別の視点の映像が映った。それを見て、王達は絶句した。
「魔物達は!国を作っているのです!!」
魔物達が建てていたのは、家や砦を人間の国と遜色ない程の規模で作り、一つの国を作り出していた。
「場所は何処だ…!」
「スリーク王国から、2000km離れた場所にある死者の森です!!」
「……魔物共がどうやって、結束したのかは分からぬが……こんな時に…ッ」
すると、ハイルロッドが落ち着いた様子で、王達に言った。
「魔物共のリーダーを調べるのだ。恐らくは話に出ていた異界のモノだ」
「…だな……あの獣共をまとめられるのは、異界の奴としか考えられねぇ」
「……じゃあ、ボーレインもこの件に関わっている可能性が…」
「ブラッド、頼めるか?」
ブラッドはその問いに対して、少し自信無さげに答えた。
「魔物の巣窟に潜入…王直属の隠密では手に余ります……」
「まぁ、危険な魔物も多いし、何より異界のモノがいる可能性もあるしね…」
「この者らに気付かれず、情報を持ち帰る事ができる者はそうはいまい……」
「タチバナ、お前のお墨付きの忍者のカゲロウではどうだ?」
「……アイツは気まぐれだからなぁ…『はい分かりました』って素直に言う奴じゃないからねぇ……」
王達が話していると、ブラッドは不敵な笑みを浮かべて言った。
「…王直属の軍には所属してはいませんが、適任の者達がいます」
「ほう?」
「その者達の名は【夜明けの騎士団】、彼らなら必ず…!」
その名を聞いて、王達はざわめいた。
「夜明けの騎士団……隠密から騎士までこなす、怪物の集まりだと聞いている」
「確か、元公認騎士団……だったか?」
「はい、その夜明けの騎士団です。あの者達なら、必ず情報を持ち帰ってきてくれるでしょう」
それを聞いたシャロルは、その場の王達へ言った。
「夜明けの騎士団に依頼するという意見が出たが、異論は無いか」
「無いな」
「無い」
「無いわ」
「無し」
「では、調査は夜明けの騎士団に依頼するものとする」




