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第13話 死神の過去

「グリム君……すごいね…」

「これが美味しいんですよ!」


街の商店街で、タワーのように積み重なったアイスを食べるグリムと、クラウンが歩いていた。


「……ところでクラウン〜」

「どうしたの?」

「…姉さんは、どんな感じでしたぁ?」


その問いに対して、クラウンは少しの沈黙のあと、答えた。


「…………うーん…そうだなぁ……とても静かで優しかったよ…!……だからあの日のサリーを見た時…ビックリした……」

「アハハ!……姉さん必死に本来の自分を隠してたんですねぇ〜!」


そして話が弾み、クラウンはグリムへ目を輝かせて言った。


「けど凄いよねグリム君は……僕と少ししか歳が変わらないのに強いから………」

「そうですかねぇ〜…!」

「うん!……戦いの天才だよ!」


すると、幸せそうに歩く親子を見たグリムが、アイスのコーンを食べて言った。


「……昔々、とある少年と、その姉がいました」

「…え?」

「少年とその姉が生まれたのは、薄暗い牢屋の中。母親は少年を産んだ時点で死んでいました」


グリムはそのまま、ゆっくりと語り始めた。


「姉弟の母は奴隷で、新たな吸血鬼を産ませる為に無理矢理、孕まされていたのです」





「もういいんじゃねぇか?」

「だな」


薄暗い牢の中、2人の男がサリーとグリムを見て話している。そして、牢を開けると2人を引っ張り出した。


「な…なに…」

「クッ……離せよ!!」

「うるせぇ!魔物が!!」


抵抗するサリーを、男の1人が思い切り蹴る。


「姉さん!」

「がッ…か……ッ」

「クソガキが……」

「おい、大事な商品だ。気を付けろ」


しばらく引きずられ、明るい場所へ出ると2人は、正座させられて拘束された。そして、目の前のカーテンが開くと、いやらしい笑みを浮かべた男や女が、豪華な椅子に腰掛けている。


「おぉ〜!…素晴らしい!」

「あれは吸血鬼か?」

「しっかり餌を与えた上物の吸血鬼です!」


そこは、金持ちが集まる、奴隷売買のオークション会場だった。先程の男が、俯いているサリーの頭を掴み、全員へ見せつけた。


「……姉の方は少し凶暴ですが、皆様好みに調教してあげてください」

「おー、いいね」

「姉に対して、弟は大人しいので、嗜虐心(しぎゃくしん)がくすぐられますよ」

「あら、あの子可愛いわね」


「では最初は姉の方から、開始価格は1000万Gです!」


金持ち達が、一斉に入札を始める。そして、3000万Gまで釣り上がった時、肥えた男が大きな声で叫んだ。


「8000万G出す!その兄妹2人とも貰おう」

「おぉ、8000万Gという提示額が出ました!……誰か入札されますか?」

「…クッソ……欲しかったんだがなぁ…」

「8000は…無理だなぁ……」


静かになった会場を見て、男達は言った。


「では、この兄妹はあの紳士の方に差し上げます!」

「次は没落の貴族の娘です!」


そうして、兄妹はとある金持ちによって買い取られた。そこからは、地獄の日々だった。


「グヘッ……さーて、どっちで遊ぼうかね〜…」

「私がグリムの分まで、アンタの相手になる。だから、コイツには手を出すな」

「…ほーう………いいだろう」


度重なる暴行に、サリーは耐えた。


「……姉さん…」

「…私は大丈夫……」


毎日、傷を作ってくるサリーを、グリムは心配していた。そんなある日、サリーが目覚めると、グリムが鼻を啜る音が聞こえた。グリムは、ぐったりして横たわっている。


「…うっ…ぐす……ッ…」

「……グリム…?」

「ほほほ、目覚めたかな?」

「…アンタ……グリムに何をした……」


すると、男はオークション会場で見せた時と同じ、いやらしい笑みを浮かべながら答えた。


「お前の弟……女にも勝るほどの名器だったぞ…?」

「……このゲス野郎ォォ!!」


牢屋の鉄格子に突っ込み、頭から血を流しながらサリーは叫んだ。


「一つ言っておこう。私が無理矢理したわけではないぞ?」

「…は……?」

「弟の方から言ってきたのだ」

「う…そ……」


サリーは、グリムの方を見た。グリムは、力無く起き上がると、涙を浮かべながらも笑顔で、サリーへ言った。


「僕は、男の子だから…ッ!……姉さんを…守らないと…!」

「グリム……アンタ…」

「泣かせるねぇ……姉弟愛ってやつか…」


そして、男は牢を開け、2人に近付いてくる。


「それじゃあ、今日は姉弟揃って遊ぼうか」

「え…」

「なんかしたくなっちゃったよ」


気味の悪い笑みを浮かべ、ジリジリと歩いてくる。


「僕が相手になるよ!だから姉さんは!」

「いや!私が!」

「そういやらしく誘うな……2人とも相手してあげるから…」


その瞬間、グリムは思い切り男の股間を蹴り上げた。


「おほォォ!?」

「グリム!」

「姉さん!逃げよう!!」

「こ…のガキ!」


サリーとグリムは、牢屋の隣にある手錠の鍵を取り、屋敷から逃げ出した。


「アンタ…臆病かと思ったけど……結構やるじゃん」

「……ずっと思ってたんだ…いつか油断して、逃げるスキをくれるって…」


そして、2人は夜の闇の中へ消えていった。







  

  









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