第118話 希望の章 〜第九章 クラウン〜
「…えっ……」
「今のって…Kの記憶…!?」
目の前にいるKの記憶を、読み取ったクラウンや、グリム達は絶句した。
「……アンタは…僕…ッ…!?」
「そうだよ…僕は……クラウンだよ」
「…僕はグリムです…!」
「ええッ!?」
その場の全員が、目を丸くさせた。
「…僕は…未来を変えにきたんだ……クラウン…お前がエンドーに完全勝利する未来にな…」
「…………」
その場にいるクラウン達は、声を出さなかった。
「まぁ…けど……これで僕達のやるべき事は…終わりだな」
「だね」
「………クラウンを…エンドーに負けないほどに強くしたからか…?」
「そうだな、うん」
すると、グリムがKに尋ねた。
「…何故……あなた方がエンドーを倒さないのです?」
「……それはだな…」
Kが目の前に、タイマーを表示させた。そこには、残り10時間47分と表示されている。
「時間移動能力には…重大な欠陥があったんだ…」
「この欠陥があったから…エンドーは時間移動を…使わなかったのかもですね」
「………欠陥…」
「時間移動して…移動した場所には……10日しか滞在できないんだ…そして……一度使えば…この能力は二度と使えない……片道切符だった…」
悲しそうに、Kは話した。
「…逃げ足の速いエンドーを探すには…これだけだと足りない……だから…お前をエンドーを倒した僕と同じくらいに…強くさせる事にしたんだよ」
「……だから…僕を強くさせる事に固執してたのか…」
「………この欠陥に気付くまでは…姉さんやサリー…みんなのいるこの世界で…暮らそうと思った……フッ…まぁ…現実はそう上手くいかなかったけどな……」
すると、クラウンがKの腕を掴んだ。
「会いに行こう!みんなに!…ほら!Gも!」
「…は…?」
「あ…ちょっと…!」
「ほら!残り10時間程度なんだから!急いで!」
「お…おい!!」
◆
「ハァ…ハァ…」
「…クラウン……」
「おーい!…みんな!」
城近くにある、クラウン達の拠点で、クラウンは叫んだ。すると、拠点から仲間が出てくる。
「…なんだクラウン……って…お前はK…」
「……どうした?」
そしてKとGは、拠点の広場にて。クラウン達の目の前に座らされる。それを確認して、クラウンはみんなへ説明しようとする。
「……まず…KとGなんだけど…」
「いい…僕から話そう……目的を果たしたら…アンタらに説明しないといけねぇ契約してたしな!」
Kは立ち上がると、広場でクラウンの仲間達に、自身の事を説明した。
「…え?」
「マジで…?」
「あの髭が?」
夜明けの騎士団達はざわつき、ブラッドは絶句していた。ライト、ランスロット、イリス、サリーにKは近付いていく。
「……お前が…クラウン…」
「そうだよ、少し老けてるけどな、爺ちゃん」
「フン、未来の俺は元気な様だな」
「ああ、今と全く変わってないぜ、ランスロットさん」
「俺は!?…俺はどうなってる!?」
「信じられねぇが、結婚して騎士は引退してるぜ。ブラッドさん」
「マジかよ!!」
「……あの小僧が…未来ではこうなってんだな」
「ああ…信じられないだろ?…だが事実だぜ…レインさん」
「信じられねぇ!マジかよクラウン!」
「未来だと俺たちどうなってんだ!?」
「…相変わらず元気だぜ…みんな」
「………クラウン…」
イリスとサリーの目の前まで来たKは、目に涙を浮かべる。
「……クラウン…辛かったんだな…」
「……………うん」
「…よく頑張ったな……」
そして、Kはイリスとサリーに泣きついた。それを、クラウン達は、笑顔で見ていた。
◆
「未来のクラウンとグリムが、現在に来た事を記念して、カンパーイ!!」
KとGの為に、大至急開かれた宴にて、KとGは呆気に取られていた。
「……ここまでするか…?」
「…フフ…ッ」
「当たり前だろ!…もう二度と会えないんじゃから!」
ライトが、KとGに言った。
「……まぁ…仕方ないな…」
Kは出された酒を飲んだ。
「まさか…クラウンと酒を飲む事になるなんて…」
「クラウン…未来だとアル中ですから」
「マジで!?」
「おい、嘘つくな」
そうして宴が開かれたが、時間はあっという間に過ぎ去った。
「……あと…30分か……」
酔った劇団メンバーと、クラウン達はKと最後の会話をしていた。
「未来のグリムは?」
「…今のグリムと…二人で何か話してる」
「……そうか」
そして、残り5分。
「サリー…姉さん……」
「…ん…?」
「……もう二度と会えないと思ってた……だから…また会えて良かった…」
「……そうか」
すると戻ってきていたGが、Kに言った。
「…この時間が…ずっと続けばいいんですけどねぇ…」
「そんなこと言うなよ」
Kが、大粒の涙を流しながら、Gへ言った。
「悲しくなるだろ」
「………すみません」
残り、1分。
「…さて……そろそろかな…」
Kがそう言うと、KとGの身体が、足元から砂のようになっていく。
「……クラウンを強くするだけのつもりが……フッ…とんでもねぇ思い出ができたな…」
「…ですね」
するとKは、ボロ布のマントを取り、クラウンに渡した。
「汚ぇが…一応魔法の防御が施されたマントだ……お前が持ってろ」
「…!……ありがとう」
それを見たGが、グリムに言った。
「……もう一人の僕……僕がさっき言った事…忘れないでね…」
「…うん……忘れないよ…」
そしてKとGは、クラウン達の方を見ながら言った。
「ではみなさん!…さようなら…」
「……………みんな……ッ…………じゃあな…!!」
すると消えかかったKが、クラウンに叫んだ
「クラウン!…俺の教えたこと!!…忘れ」
残り、0秒。
「言われなくとも!分かってるよ!!」
KとGがいた場所を見ながら、クラウンは叫んだ。
「……クソ…」
次回『また会えるよ、絶対』!!




