第11話 接触
「……と言う事だ」
「…おいおい」
「マジかよ……」
レインが、魔法通信でブラッドの依頼を劇団メンバーに話した。劇団メンバーは、動揺が隠せない。
「魔法通信で連絡するのは、その為なんすね」
「ああ、これなら聞かれる心配は無い」
魔法通信機、鉄の板に魔法が付与されたもの。板の裏表に水晶が埋め込まれており、それが周囲の景色を読み取り魔法で映像化する。これがあれば、遠くにいても自分の見ている視界や、自分の顔などを共有できる魔道具だ。最近はこれで連絡を取り合う事が多い。
「いやー便利ですねぇこれ」
「一緒の場所にいなくても、みんなの顔が見れるからな。今度から集会はこれにしたらどうすか?」
「…考えておこう」
劇団メンバーは、それぞれ街の至る場所で通信している。クラウンの前には、劇団メンバーの顔が魔法通信機によって映し出されていた。
「とりあえず、ブラッドの依頼の説明は終わりだが、お前たち。つけられていないな?」
「もちろん!」
「誰も来ない場所を選びましたからねぇ!」
「よし、それじゃあ明日の夜に、郊外のあの大樹の下でな」
「はい!」
◆
「ふわぁ〜……」
クラウンは、拠点の自室にて昼寝から目覚めた。すると、ソフィアがタイミングよく入ってきた。
「おーい、クラウン」
「あっ、ソフィアさん」
「そろそろ行こうぜ」
「ですね!」
時計を見ると、ちょうどいい時間だったので、2人は拠点の外へ出た。外に出ると、グリアが壁にもたれかかって待っていた。
「あっ!クラウンとソフィア!」
「グリア…?」
「どうしたの?、待ってたようだけど……」
「ブラッドがね、劇団の手伝いしろって言ってからぁ〜!、手伝いに来た!」
グリアはいつもしている、ニヘッとした笑みを浮かべて言った。
「それは助かるな、じゃあ一緒に行こうか」
「あい!」
そして3人が大樹の元へ向かうと、アサシンが身につけていた、黒い服と鎧に身を包んだレインと劇団メンバーの姿があった。
「お〜!カッコいいですぅ〜!」
「来たか……」
そう言うとレインは、ソフィアとクラウン、グリムへ自分達の装備している黒い武具と同じものを手渡した。
「…作戦通り行くぞ」
「作戦とは?」
「俺達は、シャロルを暗殺しに来たアサシンへ扮して、ボーレインへ接触する。そこで、ボーレインがシャロル暗殺に関わっている証拠を押さえ、即確保だ」
「レインさん!ボーレインが旧市街に現れました!」
劇団メンバーが、魔法通信で連絡してきた。魔法通信機の映像を見ると、ボーレインとその護衛が映っている。
「偽の依頼達成の報告、バレなかったみたいですね!」
「ああ、ちゃんと騙せたようだ……よし、お前たち!行くぞ!」
レインの合図で、劇団メンバーとグリムは、旧市街に向けて避けては通れない森の中へと足を踏み入れる。
「……草が凄いですね…」
「…気を付けろ、隙を見せた瞬間、草むらから魔物が襲いかかってくるぞ」
全員は周囲に気を配りながら、森の中を歩いていく。すると、草木に侵食されている街が見えてきた。
「旧市街に着いたぞ……」
「おい、ボーレインはあそこだ」
劇団メンバーの1人が指を刺した場所に、ボーレインの姿があった。
「バレないようにしないとですねぇ!」
「…俺達は劇団だぜ?……演技は得意だ」
「遅かったな」
ボーレインが、アサシンに扮した劇団達へ言った。レインは、ボーレインの前の地面にレプリカの王冠を投げた。
「ほらよ、少し時間がかかったが、殺してきたぜ」
「ホントだよ、あんなガキ殺すのに何日かかってんだ」
「ガキとはいえ相手は王だぜ?、このくらいかかるのは当たり前だ」
「フン、まぁいい」
レインは、正体がバレないよう自然に、ボーレインへと問いただす。
「しかし、シャロル王を狙ってるのが家臣でも、反乱軍でもなく……友好関係を結んでいるハズのスリーク王国王子だとはな。そんな事、誰も思うまい」
「だからだよ、誰もシャロルを俺が手引きして殺したと思わないから、殺したんだよ」
「理由を聞いても?」
「フン、お前らには理解できん。まぁ、あえて言うなら……俺の夢を叶える為…だな」
「これで十分じゃないすか?」
「だな」
「…ッ!?」
その瞬間、劇団メンバー達はフードを取って顔を見せた。
「お前ら…ッ!…夜明けの騎士団!?」
「お前がシャロル王暗殺を企てた証拠は、この魔法記録機に記録させてもらったぜ!」
ソフィアが、魔法記録機の水晶を押した。すると、さっきまでの映像と音声が、空中に浮かんだ。
「……チッ…それじゃあアイツら…失敗したのか…」
「残念だったな、ここでお縄についてもらうぜ」
「…ク……フフフフフ…」
「どうした?」
「ハハハハハッ!!」
ボーレインは、その場で笑い始めた。
「……その証拠は、誰の目にも留まる事がない」
「…!」
劇団メンバーを取り囲むように、護衛が並んだ。劇団メンバー達は、武器を構える。
「お前らをここで殺せば問題ないからな!!」




