ステータス実験開始そして終了
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「よし、ええぞ。目開けろ」
言われるがままに目を開けるとそこは真っ白の世界が広がっていた。
「あの、ここはどこですか?」
「ここは俺の世界や。自分には当分この世界で生活してもらう」
「え?」
声の主は相変わらず姿は見せないが、その透き通るような関西弁は良く聞こえる。
突然の事にタスクは全く理解できなかったが、同時に面白そうなことに出会えたという感覚もあった。
「安心せえや。向こうの世界とこっちの世界じゃ時間の流れが全然違う。向こうの世界の一時間はこっちの世界では1年や」
「まあそれが何だって話ですけど…」
「一日二日くらいなら失踪したことにもならんやろ。まあそうやなぁ…50年は安心してこっちの世界に居れるんとちゃうか」
「そんなに居たくないんですけどね」
「とりあえずこの世界の説明するからよー聞け」
「は、はい」
全く流れを理解できないままタスクは声の主の説明を受けた。
「まず、この世界では普通に死ぬ」
「は?」
「自分らの世界みたいにここは安全と違うねん。普通に人間が襲ってくるし、モンスターもおる。まあそうやな、自分らの世界で言うとこのゲームみたいな世界や」
「…」
「でも、こっちかて何も用意してないわけじゃない。ほれ、これ見てみろ」
タスクの目の前にステータスと表示されたディスプレイのようなものが表示された。
そこには、攻撃力、防御力、素早さ、運、スキルの五項目が存在しており、タスクのステータスはこのようになっていた。
攻撃力:12 防御力:12 素早さ29 運:9 スキル:『放浪』
「これは何ですか?」
「これは自分のステータスや」
そう返答されたタスクだったが、全く理解できない表情でぽけっとしていた。
「なんや?自分。ゲームとかしたことないんかいな」
「そんなもの見たこともありません」
「自分、あの世界に居ってなんでそんなん見たことないねん。まあええ。ステータスちゅーんは自分の力や。これが自分の持っとる力と思ってくれたらええわ」
「ちなみに上限っていくらなんですか?」
「上限は100やな。自分の好きなように振り分けたらええ」
「振り分けることが出来るんですか?」
「せや。その説明を今からするとこや。黙っとけ」
「すいません…」
急に怒鳴られたタスクは怯えながら黙り込んでしまった。
そんなタスクを無視しながら声の主は話を進めた。
「まずこのステータスは相当弱い。なんや?素早さ9って…見たことないわ!自分亀より遅いんとちゃうか?」
「そう言われましても…」
「まあこんなステータスやったらすぐ死ぬのは目に見えとるから、今回特別に俺からボーナスをやる」
「ボーナスとは?」
「ポイント100プレゼントや!」
「…」
堂々と言い張った声の主だが、タスクのぽけっとした表情は依然変わらずにいた。
「なんや?あんまりしっくり来てへんのかいな」
「はい」
「説明聞いてたか?自分弱いから俺が強くしたる言うてんねん」
「その…ポイントとは?」
「だから!ポイントをステータスに割り振るんや!」
「そんなこと一言も言ってないじゃないですか…」
「分かるやろ!大体!」
「…」
人に慣れていないタスクは大声には弱かった。
そんなタスクと怒鳴り散らかす声の主の会話は暫く止まってしまったが、すぐに声の主から話し始めた。
「はよしろや…」
「え?」
「だから、はよポイント振れや!もう自分に付き合うのも疲れてきたわ」
「…勝手過ぎんだろ…」
「あ!?なんか言うたか?」
「いいえ、何も。それでどうやって振ればいいんですか?」
「それぞれの項目のとこ押して自分の好きなように振り分けろや!説明は隣に書いとる」
「は、はい…」
タスクは言われるがままにステータスの項目を眺め始めた。
「うーん、突然そんなこと言われもよくわからんな。とりあえず時間の制限もないみたいだし、ゆっくりと見ていくか」
タスクはまず攻撃力の項目の隣にある?ボタンを押すと説明が浮かび始めた。
『このステータスはあなたの攻撃力を表しています。このステータス値が高ければ高いほど大ダメージを与えられます。ただし、攻撃力と防御力は同じ値になります。』
「ほう、まあ予想通りの説明だが攻撃力と防御力が同じと言うことはこいつらに振り分けることが出来るのはそれぞれ50が限界ってとこだな」
次に防御力の説明を見た。
『このステータスはあなたの防御力を表しています。このステータス値が高ければ高いほど相手から受けるダメージを減らせます。ただし、攻撃力と防御力は同じ値になります。』
「まあ大体は攻撃力と同じだな」
続いて素早さ。
『このステータスはあなたの素早さを表しています。このステータス値が高ければ高いほど素早さが早くなり敵から逃げることが可能になったり、敵よりも先に行動できたりします。しかし、ステータス値が1でも相手の方が上回れば全て先手を取られる上に逃げることも出来ません』
「これはあまり望ましくないな。相手が自分よりも格上だったらポイントを振っても何の意味もない。」
その次に運。
『このステータスはあなたの運を表しています。このステータス値が高ければ高いほどあなたは何事でもラッキーになります。詳細は省きますが運が100になると解放されるスキルもあります』
「うーん、運に頼るのも良くないしなぁ。最後まで見ないと決められないな。スキルってのもよくわからないし」
最後にスキル。
『これはあなたが保有しているスキルを表示しています。以下のスキルがあなたが保有しているスキルです。ほとんどのスキルはポイント50で獲得できます。獲得可能なスキルは以下の通りです』
その下にはおよそ500はあるであろうスキルが表示されていた。
「こんなにいっぱい表示されても分からん。一つ一つ見ていくのも面倒だし、とりあえず今持ってるやつだけ見てみるか」
タスクが唯一保有しているスキル『放浪』の説明の欄にはこう書かれていた。
『このスキルの保有者は最もステータス値の高いステータスを倍にします』
「ほう、つまり100ポイントではなく200ポイントということになるのか。だがそんなことが可能なのか?とりあえずものは試しだ。適当に一番ステータス値の低い『運』とかに振ってみるか」
タスクはディスプレイを操作し、『運』のステータス値を100まで上げた。
『エラー。エラー。ポイントは100まで全て振り分けてください』
「あ、そうなの?じゃあ適当に素早さに残りの値を振ってみるか」
エラーメッセージを受けて修正を加えた結果、タスクのステータスはこのようになった。
攻撃力:12 防御力:12 素早さ38 運:100 スキル:『放浪』
「なるほど、これで決定を押せば運が200になるのかな?もし、それが可能なら攻撃力と防御力に50ずつ振れば2つとも100の状態からスタートできるぞ」
タスクは確かめるために下に設置されている決定ボタンを押してみた。
『ステータスが決定されました。決定されたステータスはいつでも確認可能です。その際には【ディスプレイ】と唱えてください』
「よし、これで運が200になっているのならさっきのプランで行けばこの世界で困ることもないだろう。えっと…唱えればいいのか。ディ…」
タスクが『ディスプレイ』と唱えようとしたその時、
「決まったか。では行くぞ。この世界で生きていくことが出来れば元の世界でも生きて希望にもなるだろう。『転送』!」
声の主から再度声がかかり、タスクは【ディスプレイ】を唱えることを中断してしまった。
声の主もわざとこのタイミングで『転送』しようとしたのではなく、このステータスは一度決定したらその後の変更は不可能であり、決定ボタンを押せばそれは確定してしまうのだ。
「ちょっ、まっ…」
タスクの返答も聞かないまま、声の主は真っ白のその場からタスクをその場から転送してしまった。
今後ともお付き合いの方よろしくお願いします。