組織『バランサー』
「ふぅ・・・とりあえず一段落だな」
そう呟き様々な世界を上から見下ろし、一息つく男がいた。
彼の名はアルバート・レールベルク。彼は『バランサー』と呼ばれる組織のリーダーであり、約1億年ほど同じ仕事を反芻するかのように続けている。
「まだ帰ってこないのか・・・あいつらは・・・」
組織には彼を含めそれぞれの役割を持った者が5人いる。
「そろそろ次の世界に行ってもらいたいんだがなぁ」
そう気だるそうに呟き、レールベルクは椅子に腰掛けた。
組織の仕事は「世界の均衡を保つこと」。
ここでの「世界」と言われるものは『異世界』『魔界』『天界』『人間界』『並行世界』・・・その他あらゆる「世界」が対象となっている。
「・・・!」
レールベルクが座ってから約10分後大柄な男1人が帰還した。
「ったぁ!!やっと終わったぜぇ!あいつら死に損ないの雑魚のくせにいちいち足掻きやがって面倒だったなぁ!!」
文句を吐き捨てながら戻ってきたのは『破壊』の能力を持つ者エルドラであった。
「お疲れエルドラ。世界の均衡は?」
そう言いながらレールベルクは水の入ったコップを差し出した。
「おお!ベル!サンキュー!!均衡取れたかねぇ・・・なんせ派手にぶっ壊してきたからなぁ!逆に均衡が崩れたんじゃねぇか?」
コップを受け取りつつそんなことを笑いながら言うエルドラにレールベルクもため息をつくしかなかった。
「やれやれ・・・それでは意味が無いんだがな・・・本当にいつも通りだなお前は」
「まぁな!!んなことより他の連中は・・・って聞こうとしたら帰って来たな」
2人の目の前に残りの3人が一斉に帰って来た
「おっ疲れさーん♪あれ?ベルもエルドラも早いじゃん!」
帰って来たのは特に疲れた様子もなく意気揚々と喋る『時間』の能力を持つ者ジルト。
「お疲れ様でした。なかなか楽しかったですよ」
丁寧な物腰の『空間』の能力を持つ者ディラー
「・・・・・・」
一言も発することの無いローブに身を包んだ『創造』の能力を持つ者ウェーガン
ようやく全員が仕事を終え帰還した。
「ふむ・・・ようやく揃ったな。さて・・・ここからが本題だ。全員を待っていたのは最近異常なほど増えた『異世界転生・召喚』の問題についての説明をするためだ」