おっさんを愛する少女のために
地位のある聖女ともなると、船の一隻は持っている。これは主に聖務を行う際に使用するものである。さて、ホーリードール家が所有する船が保管されているドックに、厳つい野郎衆が様々な道具を抱えてやってきた。
彼らは船大工の【メイキング一家】だ。妖精から大鬼まで、様々な船を作り その造船技術は創勇者並みともいえよう。ただ、問題があるとすれば…
『でわ〜みんな、やるわよ〜ん!』
『えい、えい、おー!』
『あらやだ、お髭剃り忘れちゃった♡』
『カンナで剃る〜?』
『やだぁん、顎まで剃れちゃうわん』
従業員も含め、全員オカマである事だろう。その為、技術は確かだが依頼者は極端に限られている。
今回の依頼は、不思議な絵と真写、それと手紙で来た。
絵には船に様々な人物が描かれており、真写に写る人物は渋みのある男性、手紙には
《船を使用するのでメンテナンスを頼みたい》
という事が、書かれていた。
『ペイント姐さん〜依頼がきたわん』
『どれ〜、あらホーリーちゃん家からね。…きゃああ!』
『姐さん如何したの!化粧前の自分の顔見たぐらいの声出して⁈』
『この真写の彼…いい男♡』
『まっ♡本当ね』
さて、依頼を受けたメイキング一家。船のメンテナンスだけでは終わらなかった。
『ホリっち〜船首像はどう〜?』
『素敵に仕上がってるわよん♡』
船首とは、船の先につける飾りのことである。
『まぁ、カッコいい』
とてもゴリラのような人間が彫ったとは思えない、繊細かつ立派な男性型の船首が出来上がっていた。
シュー、シュー
船はいくら大切に使っていても塗装などは剥げてしまう。勇者や聖女、地位のある者は出港前にお色直しをしたりする。
『ペイント〜描けたかしら〜?』
『んもぅ、バッチリ!パインちゃんのアイディアは最高ね。素敵な彼が描けたわ♡』
船内の装飾も余念がない。夏仕様にシートを張り替えている。
『ヌイ〜刺繍はどう?』
『あっ!うんっ!しっかりと縫ってるわ!帆も、彼仕様!さいっこう♡』
『エクスタシィ〜ね!』
船の背面には、基本的にその船の用途が書かれている。協会関連だと十字架だが…
『いい〜?十字架を中心に、周りに家族を散りばめるのよ〜』
ペイントの部下たちが丁寧に描き込んでいく。十字架の中心にゴルドウルフ、肩車をして貰っているパインパック、両サイドにプリムラとリンカーネーション。更に彼らを囲うように、わんわん騎士団、女性従業員が描かれゴルドくんたちアニマルズは、隅で釣りをしている所を描かれた。
作業開始し、僅か3日…不眠不休で彼ら…いや、彼女らは仕上げた!
【ゴルドウルフ・スラムドッグ仕様・聖務船】
本来なら、3日ではメンテナンスが精一杯。しかし、彼女らは恋する少女のため頑張ったのだ!髭も剃らず、化粧が落ちても整えず、寝不足は美容の大敵なのに寝ずに仕上げたのだ!
料金…まさかのメンテナンス代のみ!恋する少女のために…ささやかな贈り物をしたのだ。そして…爆睡!
ありがとう、メイキング一家!ありがとう、最高の贈り物!
彼女たちは、寝る!もちろん、化粧を落としてシャワーを浴びて、パックをして!
〜END〜




