大冒険-3
5F〜
本来ならボス部屋のここも今はもぬけの殻。何も無いが辺りを見回す。ボス戦は激戦であったのだろう。壁には斬撃の跡が多数あり、ボスにとどめを刺したと見える攻撃で壁の一部が壊れていた。
『何もありませんね…頂上に行きますか?』
『うん…』
その時、ゴルドくんは油断していた。うっかり、他とは微妙に色の違うタイルを踏んでしまった。
『う“ぉおおお、グガガガー!』
『くっ、まさかボスが復活する仕掛けがあるとは!』
しかも厄介なことに実体を持たないゴースト系だった。倒すには聖女の祈りか、ゴースト系の魔道具で撃退するか、シブカミ特有の守護者を呼び出すしか無い。自分に守護者は付いていない。パインパックはまだ【浄化】を取得していない。となると、手持ちの道具に頼るしか無い。
『シャァアアア!』
ゴルドくんはパインパックを守るため、自身を囮にした作戦を考え出した。それを伝えようと、隣を見るとパインパックがいない。なんと、少女は単身でボスに歩み寄ってるでは無いか!
『いけません、パインパックさん!止まって下さい!』
しかし、少女は止まらない。風が吹かないはずの室内に風が吹く。すると…どうだろう、少女の身体が白い毛皮に包まれ美しい女性へと変貌した。
『大丈夫…大丈夫、そんなに悲しまないで…』
『ああ“〜クレオ…』
『貴方が愛した女性の名ね…』
『クレオ〜!』
その時、パインパックのリュックから光が漏れた。そう、4Fで拾った指輪だ。
『カーメン!カーメンなの⁈』
『クレオ⁈クレオー!』
恐ろしいボスは美しい男性に変わり、指輪から現れた女性と抱き合った。
『ど、どういうことですか⁇』
ゴルドくんが頭に?を浮かべていると、また風が吹く。するとそこにパインパックが倒れていた。慌てて駆け寄ると、気絶しているようだ。
『よかった…』
『うにゅ?ごりゅくん、どーしたの?』
『ありがとう、貴方達のおかげで私たちはまた出会えたわ』
『あ!おうしゃま、おひめしゃま!』
太古の時代…ここには小さいながら国があった。その国は、美しい妃と心優しい王によって繁栄していた。
ある日、隣の国から戦を仕掛けられた。理由は美しい妃が欲しいという、個人的な欲求のもの。仕掛けられた国は、兵士と共にこのピラミッドを砦に戦った。しかし、妃は捕らえられ国民含め皆殺しにされた。その無念から、王と兵士はモンスター化し砦はダンジョンになった…という話だ。
『私の身体は隣国に連れ去られたけど、心だけはここにいたの。この指輪に自分を封じて…。貴方のそばに居たいから』
『そうだったのか、クレオ。私は殺された後、隣国の奴らが憎くて死んでも死に切れなかった。ミイラ王となり、兵士らを始めとするミイラと共にここにいたのだ。たとえ恐れられていても、一目君をみたかったから…』
『でも何で、私の指輪を見つけられなかったの?』
『コホン、それはこの指輪が聖属性だからでしょう。アンデット系は苦手の物ですから、無意識に避けていたのでしょう』
何百年達ようやく再開した夫婦。身体は持っていかれたが、心は売らなかった妻。ミイラになっても妻を愛し、倒され肉体が失ってもゴーストとして待ち続けた夫。
これが【永遠の愛】というものだろう。
『パインパック、そしてその従者よ。そなた達のおかげで、私たちは再び出会えた。感謝する』
『お礼と言ってなんだけど、これをあげるわ』
ゴゴゴと隠し扉が出現した。不思議な柄の絨毯。そしてペアリングだ。
『これは【浮遊絨毯】 空を自在に飛べるものだ。それでペアリングは…』
『愛する者同士が付けると、凡ゆるスキルが2乗されるものよ』
『あーいがと、ごじゃいましゅ』
『ありがとうございます』
『そして、我が兵士と家臣を労ってくれた礼に、この砦の所有権を差し上げる』
所有権がパインパックに移った旨が書き換えられた【ダンジョンの核】を渡された。
『ここの砦を潰そうが、どうしようが君たちの好きにしていい』
『温度管理も自由に出来るわ』
『「ありがとう、本当にありがとう」』
夫婦は天界へ昇っていった。下の階にいたミイラ達も、後を追うように昇っていった。こうして今日、1つのダンジョンが完全攻略されそのダンジョンの歴史に幕を閉じた。
『パインパックさん、凄いです。最年少でダンジョンを完全攻略しましたね』
『うん!』
『それで…ここのダンジョンはどうしますか?』
『うーんとね、…』
『成る程…それはいい考えです。ではその核に思いをぶつけて下さい』
砂漠にある有名なダンジョンに変化が見られたという。
内部全体はは明るく涼しい。1Fには地下水脈から湧き出た水がこんこんと湧き喉を潤すのに最適だ。
2F~4Fは簡易宿泊所に変わり、5Fは屋根が無くなり星空を見れるようになっている。
砂漠で疲れた体を癒すスポットとして、生まれ変わったそのダンジョンは多くの冒険者・商人たちの憩いの場になった。
そして、入り口には不思議な犬の生物と王様、お姫様、聖女、彼らを守るように大勢の兵士の絵がデカデカと描かれていた。
〜END〜




