執事な犬-2
次の席ではクーララカとマセリアが真剣に話し合い、それを微笑ましくミスミセスが見ていた。
『いいか?得物とは値段や価値で決まるものではないんだ。自分の手にいかに馴染むかが重要だ』
『そうなの?』
『あぁ、そうだとも。私は【チャルカンブレード】を使っているんだが、最初はなかなか馴染まなくてな。少し柄を改良したらよく馴染んだんだ。するとな、今まで勝てなかった相手に勝てたんだ』
『わぁ、すごーい!』
『ふふん!』
『んふ、それはぁ、すごいですねぇん』
『なかなか盛り上がってますね。こちらをどうぞ。セブンスチョコです』
セブンスチョコ…さまざまな味のチョコをランダムに七重もコーティングした飴チョコもの。舐めれば舐めるほどに味が変わる。
『ゴルドウルフ!今日こそ勝つぞ、このセブンスチョコの3番めの味を当てるんだ!』
『いいですよ、私はレモン味で』
『じゃあ、ミルクだ!ミスミセス、舐めて確認してくれ!』
『あはぁん、わかりましたわぅ』
チロチロ舐める…そして口をすぼめた。
『すっぱい…レモンよぉ』
『くっ!また負けた!』
『御用がありましたらお呼びください』
・・・
・・
・
『あぁー!それプルのー!よーこーせー!』
『ムグムグ、銀紙隠れの術!』
『全く、我が君の前ではしたないですよ?プル』
『だってゴルドくんが僕のチョコを食べたんだよ⁈』
『今更何を言っているのですか…パフェを3つも食べたというのに、板チョコ1枚で…』
最近あまり出番がない天使と悪魔の席。その席はとても賑やかだった。パフェを頬張っている悪魔に、お上品にクッキーを齧り時折、紅茶を含む天使。本来なら相反するものだが、彼女達にそのような物は関係ない。あの場所で、自分たちが出会った我が君のお陰で互いを支え合う存在になった。
『すいません、我が君。プルがはしたなくて…』
『元気なのは良いことです。ルク、クッキーをどうぞ』
『mgmg…まぁ、美味しい』
『普通のクッキーに、半分だけチョコをコーティングしたものになります。面白いでしょ?』
『はい、新しい食感で病みつきになりそうです』
『あ!ルクだけずるい!』
『プルの分もありますよ』
『やった!』
ハムスターのように頬張るプル。やれやれとルクは肩をすくめた。ゴルドウルフは、そっとルクに先程とは別の菓子を与えた。
内緒ですよ?
口の前で人差し指を立てて、にっこり笑う執事。お嬢様の顔は真っ赤になった。
・・・
・・
・
ゴルドウルフは最後の席に向かった。手には、入れ直したほどよく蒸らした紅茶とマカロン。そして、席の前で一礼。
『お待たせ致しました、プリムラさん。紅茶とマカロンです』
『ありがとうございます、おじさま。あの…ごめんなさい。お姉ちゃんの我儘でおじさまの貴重な休日を潰してしまって…』
『カフェの時にはプリムラさんを含め、大勢の方にご協力をいただきました。これはそれの、細やかなお礼だと受け取って欲しいです』
『ありがとうございます…彼女も来れたら良かったんですが…』
プリムラのテーブルには空席の1席がある。なんでも、リンカーネーション が招待したらしく
【Ms_M】
と書かれた札が置いてあった。
ビックバン・ラブの2人はその人物のことを知っているようだが、その事については話さなかった。尋ねると
きっとまだ、勇気が足りないんだと思う。でも必ず連れてくるから!
と言われた。一体【Ms_M】とは誰なのか?
それは、リンカーネーション とビックバン・ラブの3人だけが知っている。
〜END〜




