時の箱舟-2
『じゃあ、またね』
そう言うと彼女は、階段を下りて行った。しばし魂が女神さまの所に逝きかけたプリムラだが、すぐに我に返った。確かに自身の妹の面影があったその女性。しかし、しかしである!ついこの間まで自分のことを『ねえたん』と呼び、ゴルドウルフの背中に2時間も引っ付いていた彼女…があの成長?あり得ない!
慌てて立ち上がり窓から身を乗り出すと、何時もの見慣れた町並みとは大きく違っていた。例えば広場の中心に建てられたゴットスマイルの像が無くなり、花壇になっていた。
『な、何これ…どう言う事なの?』
階段を下り外へ出る。看板は『スラムドッグマート□』と先程までいた支部の店だった。ただ少々、看板が汚れており一部ゴルドくんのステッカーで治されていた。足元に着いた新聞を見ると、年月日が未来を示していた。
『あぁ、これは悪い夢なの?』
思わず目眩がし倒れかかる。が、しっかりとした身体の男性に助けられた。
『大丈夫ですか?』
『あ、ありがとうございます。大丈夫です』
『よかった。ではこれで』
プリムラに背を向けて歩き出したその青年。そのマントには、シャルルンロットが考えていた騎士のマークが縫い付けられていた。
聖女…プリムラ、手掛かりを見つけ青年を尾行する事にする!
だが、
『じー』
(さっきから何だろう?)
バレバレの尾行で青年の後を追うプリムラ。彼が入っていったのは、スラム街にある場違いな1つの屋敷であった。
『ん?なんなんだろう?こっそり覗けばバレない…よね?』
そ〜と覗き込みと、そこはまさに戦場のようだった。身体に切り傷があるもの、病にかかっているものなど…健康な人間はいなかった。
『ここは一体…?』
隣の部屋と思われる窓を覗くと、そこには!
『ほら頑張って!』
『うーん!うーん!』
オギャー!
『ほら元気な赤ちゃんだよ!』
『ありがとうございます。シスター・パインパック』
『良いんだよ。スネカジリ、次の患者さんを呼んで!ジャイアントはお母さんと赤ちゃんを部屋へ案内して!』
そうここは病院だった!パインパックの机にはスラムドッグマートのマーク入りの医療品が並び、壁には沢山の真写が貼られていた。
しばらく呆気に取られていると、人波落ち着いたようだ。意を決して中に入る。
『あ、あの!』
『あれ?あなたはさっきあったよね?え〜と』
『はい!それでなんですが、ここは一体…?』
『弟子希望?』
『ち、違くて…なんでホーリードール家の人がシスターをやっているのかなーて思って…』
『あぁそれね〜』
パインパックの話によると、聖女で人々を救うには限界がある。ホーリードール家ともなると、公に人助けが出来ない。そこで自分の姉2人には、ホーリードール家としての聖女活動とある人物のサポートをしてもらい、自分は自由が効くシスターとして活動している。
更に女神のお祈りと実技医療の組み合わせで、助けられる人を増やしたのだと言う。
この世界観では珍しいハイブリット治療だ。以前までは、どこも自分の治療法が一番効果的と信じて疑わないので基本的に仲が悪い。しかし、パインパックはその垣根が在ることにより救える患者も救えないと訴え、まずは自分がお手本となったのだ。
その結果、死者が減るということに繋がった。
~to be continued~