師匠-1
『明日、私は午後から店に来ますがいつも通りの業務でお願いします』
ゴルドウルフがその日のスタッフミーティングの時、そう告げた。別段珍しいことではない。新しい商品の確保や流通作り等で店をはなれることはある。しかし、花束を買い普段は呑まない酒も買うと周りは気になる。秘書の立ち位置にいるプリムラもその1人だ。
『あの、おじさま。明日はどのようなご用事ですか?あ、その言いたくない用でしたらごめんなさい!』
『いえ、いいのですよ。良かったらプリムラさんも来ますか?』
『え⁈』
ゴルドウルフから誘われて断るはずもないプリムラ。首振り人形のように頷いた。
翌朝、まだ日が昇ってない時間。以前と同じ様にゴルドウルフは、プリムラを抱えたまま錆びた風に跨り走っていた。2人で行くなら本来は馬車を使用する。しかし何故かサクラが馬車を壊してしまい2台のうち1台は行商用に使うのでやむ得ない。
…サクラは何故かプリムラにウィンクしていた…
錆びた風の脚力を使い隣国の目的地に着いた。
『私が用のあるのは此処です』
『此処は…』
そこは霊園だった。墓守に挨拶をし園内に入る。園内は少々荒れていたが、ある一部手入れがされていた墓がある。常に誰かが手を掛けている証拠である。
その墓石には
【〜エンド・フィニッシュ此処に眠る〜】
とある。ゴルドウルフは、持参した桶に水を入れるとタオルで墓石を磨き始めた。慌ててプリムラもそれに習う。買っておいた花束と酒を墓に供えて、手を合わせる。
『…ここに誰が眠っているか気になりますか?』
『あのぉ…はい。この方は一体…』
『彼の名は【エンド・フィニッシュ】。この国のあるギルドに所属しており生涯Eランクを貫いた冒険者です。そして、私の師匠でもあります』
『えぇーーー!』
園内にいた黒い鳥が慌てて飛んだ。
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ゴッドスマイルさんの勇者パーティに私も尖兵として参加し魔王を倒す旅に出ました。その時に立ち寄ったこの国で、エンドさんに出会ったのです。
彼はギルド内のランクは【E】と最低評価でしたが、彼なくてはギルドは成り立たないと言われた信頼がありました。誰もやりたがらない地味な依頼を率先とこなし、臨時パーティに参加した時は進んで汚れ役をかって出ました。エンドさんは言いました。
『煌びやかな華にも根はある。俺は目立たない根でありたい。それで誰かが輝けるならいいモンだ』
彼の口癖ですね。私は彼から作業を効率よくこなす方法、様々な薬学、モンスターの弱点、読唇術、反響音で罠を見抜く方法などを数え切れないほど教わりました。その後もエンドさんとは手紙でやり取りしていました。ある日から手紙が来なくなりました。心配しているとタイミング良く、ゴッドスマイルさんのお子さんの目的地がこの国での冒険で私も誘われました。私はまた尖兵として参加しました。しかし、運の悪いことに私は奴隷商に捕まり奴隷落ちしてしまったのです。
なんとそこで偶然にもエンドさんに出会ったのです。
『ゴルドウルフ⁈なぜ君が此処にいる?』
『実は尖兵としてパーティに参加したのですが、ダンジョンで逸れて奴隷商に捕まってしまったんです』
『くっ、なんて事だ』
『エンドさんはなぜここに?』
『先代ギルドマスターが急死してな。跡を継いだ息子の依頼で活動していたら運悪く捕まったのさ。情けない話だ』
奴隷となった私たちは鎖付きの手枷を付けられ馬車に乗せられ、何処かへ連れていかれました。そして着いた場所は、地下の秘密コロシアムでした。
〜to be continued〜




