彼女の教え子、後の英雄の話-2
『う〜、痛かった』
自身のお尻をさすりながら立ち上がる、グラスパリーン。そしてあることに気がつく…
先程まで自分達がいた、キッズスペースだがどこか違うことに…
パインパックが描いたゴルドウルフの絵が額縁に入っていた。この前見た時は、普通に壁に飾ってあったのに…
今は 【聖女パインパック・ホーリードール作 頼れる男の象徴】と題してある。
『ゴ、ゴルドくん ここは?』
『ここはあるかもしれない、来るかもしれない世界…そんな場所です』
頭にクエスチョンを浮かべるグラスパリーン。すると、店の入り口から声が聞こえてきた。
刹那…グラスパリーンに衝撃が走る!
それは美しい2人の女性だった。1人は金髪のツインテールのスレンダーな女性。もう1人の女性は今の自分と同じくらいの胸を持ち、サイドポニーに髪を結わえた女性だったのだ!
これにはグラスパリーン…あまりの美しさに傍観…!
『あれ?キッズスペースに誰かいるわ』
『本当のん。ゴルドくんのぬいぐるみを持った子供のん。迷子のん?』
更に衝撃!この2人…自分の教え子の可能性アリ…!
『わ、私は』
ここでハプニング…!ゴルドくんを抱えて勢いよく立ち上がろうとして、再び滑る。そして起きるピタゴラス…!
投げ飛ばされたゴルドくんは商品棚にダイブ
しかしある人物の髪の毛による作用で商品を守る為、空中を蹴る…!すると今度はゴルドくんが危機に攫われるのだが心配無用…着地地点は設定済み。そう…柔らかいお山にダイブ。綺麗な着地、文句なしの満点!
『おっと、大丈夫のん?』
『はい、ありがとうございます』
『ちょっとアンタ!今、明らかにミッドナイトシュガーの胸に狙いを定めたでしょ!』
『…自身の危機をどうすれば防げるか考えた結果です』
このゴルドくん…恐ろしい子!何故なら入り口近くにあの聖女たちが【ふきふき】する山盛りの温かいおしぼりがあったのだ。にも拘らず、お山に満点の着地したゴルドくんはくるりと宙返りをし床に着地した。
『ありがとうございます。先ほどはとんだ失態をおみせしてすみませんでした。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?』
『シャルルンロットよ』
『ミッドナイトシュガーのん』
やはりこの2人、自分の教え子であった。
そして、自分の知っている彼女たちより成長しているという事は…未来、未来に来たという事実!
自身の鼓動が太鼓のように煩く鳴り響く。舌が砂漠のように乾ききり、上手く言葉が出ない。グラスパリーン、勇気を振り絞り問いかける…そう過去に聞けなかったあの答えを…!
『あ、あの!ゴルドウルフさんて知っていますか?』
『えぇ、知ってるわ』
『知っているのん』
『そ、その人は!おっぱ』
あぁ、運命の悪戯か!喉から音が出ない!しかし、なにかを察したのだろう。成長した2人は自分の左手を見せ手を胸に当てた。
そしてたった少しだが…しかとグラスパリーンにヒントを伝えた!
『敵に塩を送りたく無いけど…これだけは言えるわ。未来は無限よ!その証拠が私たち…』
『あとは宿題のん』
『まっ!』
『後は頼むのん。ゴルドくん』
トコトコとグラスパリーンの近くにより、今度は自身で転び再び唱える呪文
『タイムスリップ!』
グラスパリーンが瞬きすると、そこは何時ものキッズスペースだった。壁にはパインパックが書いた絵が、普通に飾れていたのが何よりもの証拠だ。
『私たちが居るべき【時】に帰還致しました。如何でしたか?グラスパリーンさん』
しかし返事はない。それはそうだ。自分の未来の教え子に会ってきた衝撃はなかなか抜けない。すると上の階から、好奇心旺盛な足音がし天井が揺れ階段が激しく軋んだ。そして上の階に繋がる入り口から、コロコロと何か転げ落ちた。
それはジュエリーケース…!世の恋する女性なら必ず憧れる、異性からのプレゼントで欲しいものランキング…堂々の1位の代物!実際はその中身が重要なのだが、一大イベントでの必須アイテム。
それが何故ここに?グラスパリーンは悪いと思いつつ開ける…パンドラの箱を。
と、同時にその持ち主も降りてきた。
『プリムラ!アンタ、抜け駆けしたわね!私たちが気がつかないとでも、思ったの?!』
『これは重罪のん。ギルティーのん!』
『ひぃぃぃん、ごめんなさ〜い!』
パカっと開けるとー魔蝋印、字面を読むと【プリムラ スラムドック】の文字が!少女の細やかな秘密がバレてしまった瞬間であった。中身は魔蝋印だったが、プリムラが誰からそれを渡されたかは火を見るより明らかだった。
未来は無限…いつか自分の想い人から、このジュエリーケースの本当の中身を渡される可能性もある。それにはまず、自分はその人の隣にいても恥じない人間になろう。グラスパリーンは立ち上がり少女たちの仲裁に入った。
~Fin~