新しい家族『サクラ』
おはようございます、サクラです。今日は私がお世話になっている、ホーリードール家の皆さんについてお話しようと思います。
『サッちゃんご飯でちゅよ〜』
朝、一番鶏が鳴く頃に私に食事を運んできてくれた乳房が牛並みに大きい彼女は【リインカネーション・ホーリードール】
現代にいる聖女の中で最も神聖な魔力を持った女性です。今まで聖女という人間はかなり見てきましたが、彼女は他の聖女とは違いました。
大抵の聖女は自分にしか無い神聖な魔力を自慢し、力無き弱者を虐める生き物でした。怪我している者がいても、其の者に価値が無いとわかると去っていきました。
しかし、彼女はそんな事はせず全てを飲み込む優しさ…いえ行動力で人々を笑顔にしていると思います。
私はご飯を食べ終わる小さくヒンと鳴きます。風さんはゴルドウルフという主人と今日は仕入れに行くようで朝から居ません。私は主人と風さんにお弁当を届けるために、リインカネーションに催促します。
『あら〜サッちゃん。私がお弁当を届けに行くのわかっていたの?賢いわ〜、じゃあすぐに作っちゃうわね!』
だけどリインカネーションは、うっかり屋さんのようで2人分(人1:馬1)作るのを間違えて20人分作ってしまいました。でも安心してください。風さんが私専用にと作って貰った【さすぺんしょん】搭載の馬車があるから何人前だって運べます!
『じゃあ、出発しんこー!』
私はその掛け声で走り出しました。徐々に速度を上げていき、リインカネーションを不快に思わせない丁寧な走りを心がけました。職場に着くと主人と風さんが居ました。他にも取引の商人と彼らが連れている仲間たちもいました。そして優しいリインカネーションは、19人分のお弁当を無償で渡したのです。
皆さんとても信じられないと言った顔でしたが、食べ始めると皆さんの疲れきった顔はみるみる輝きを取り戻しました。
やっぱり、リインカネーションは優しいです!
風さんと主人にお弁当を届け水を飲んで休憩していると仲間が話をしていました。
『いやぁ、風の兄貴の走りには惚れ惚れするね』
『全くだ、あんなに速く走りながらでも揺れを抑えるなんて凄いもんだ』
私は自分の愛する人が褒められて誇らしく思います。愛するといえばホーリードール家の次女【プリムラ・ホーリードール】は少し変わっています。魔蝋印を見てはニヤニヤしたり身をくねらせたりしています。こないだも、風さんがお昼休みの時に彼女が私のところに来て、相談事をしに来ました。
『ねぇ、サクラ。私、悪女なんでしょうか?』
ーなぜそう思うのです?
『だっておじさまがお昼寝中の顔が可愛らしすぎて、ずっと寝顔を見ていたんです』
ーそれぐらいいいのでは?私も風さんの鼻ちょうちんを見れるのは私だけの特権だと思ってますし
『いいえ。私は悪女なんです。だっておじさまが30分経ったら起こしてほしい、と頼んだにもかかわらず寝顔見たさに3時間も見つめていたんです』
ーふふふ、愛しい人と一緒にいると時が経つのは早く感じますよね。私もそうです
『サクラもそうなんですか!私…考えちゃうんです…』
おじさまと結ばれたら、子供はやっぱり欲しいですね。おじさまが望むなら何人でも良いです。けど、きゃ!恥ずかしい///で住む場所は森の中の静かな場所で〜赤い屋根の白いお家〜
プリムラは話し出すと止まりません。そして最後には一緒のお墓に入って、天の国に居るお母様に挨拶する所までいきます。
いいですね、死して尚も常に寄り添う2人…究極の愛ですね。こうして私とプリムラの女子トークは続くのです。
お弁当を届けて、お屋敷に戻り与えられた寝床で寛いでいると
『あぅ、シャクラタン』
人見知りの【パインパック・ホーリードール】が来ました。彼女とは何回か話しているのですが、まだ打ち解けている感じがしません。でも彼女が来てくれるだけいいのかもしれません。私は立ち上がらずに伏せて彼女を優しく見つめます。
『あぅぅぅ、はじゅかちぃ///』
そう言うと彼女は抱きしめているぬいぐるみをさらに抱きしめました。
『…』
いえ、あれはぬいぐるみではなくゴーレムのようですね。ちょっと苦しそうです。
ー助けましょうか?
いいえ、お気持ちだけ頂きます。私を抱きしめる事で、パインパックさんは緊張が幾らか解れるようですから
ーそうですか…あ、彼女にこれをプレゼントしたら変われるかしら?
『あぅ、きれー』
私は自分の薄いピンク色のたてがみを振り、宙に少し毛を飛ばしました。そして風さんの毛と合わせて魔法で腕輪を編みます。昔の女子友のリグラスに教わった物で、色に意味がある特別なものです。
風さんの芦毛は一般的に灰色なので
黒…魔除け
白…健康
の意味があり
私は編み込むことにより濃いピンク、いえ中紅花色になるので
ピンク→赤…勇気
の意味を持ちます。これらの特性をふんだんに使って作られた、腕輪を付ければ彼女も少しは変われるでしょう。
『くれうの?』
ーえぇ、どうぞ
『あっと、ありがとう』
ーお礼が言えて偉いわね
そのニヘラと笑った顔はリグラスを思い出しました。リグラス…貴方は今どこにいるの?人間の寿命から見てもまだ余裕があるはず。いつか再会したいわ。
~END~
腕輪の元ネタはミサンガです。