勇気ある者【Ⅲ】
慣れない縄を登り、山を降りていく。住人は全員避難したようだ。
『歩きじゃ間に合わないから馬で行くぞ!オッサン、俺の腰にしがみつきな!』
『え?いいんですか?勇者の馬には決めた人物しか乗せてはいけないはず…』
『緊急事態だからいいんだよ!』
馬を使い2時間後に無事に学園についた。
『失礼!例え勇者様と言えど、女学園に男性の方は入れられません!』
『くっ、俺の位が低いからか!』
『すいません、学園長にお伝えください。ヒソヒソ…』
『! 了解です!』
『オッサン、この学園に伝手があったのか⁈』
『えぇ、前に一時期ですが用務員をしていましたから…』
その数分後、息を切らせた門番が2人を出迎えた。案内されたのは学園の応接室だった。
『久しぶりだな、確か君が…』
『すいません。緊急事態ですので…』
『おっとそうだったな。で何ようかな?』
『突然の訪問申し訳ございません。実はホンワカボッボ山が噴火秒読みなのです。そこでお宅の学園の生徒…特に土と氷魔法を扱える生徒を貸して欲しいのです』
『申し訳ございませんが、勇者様の頼みとは言え、噴火直前の危険な山に我が生徒の貸し出しできませんな』
学園長が答えると、ワインレッドは懐から勇者票を出しサラサラと書き込む。
『この額で耐火及び耐衝撃用ローブの最高級を人数分用意すると言ったら?』
『…生徒達に聞いて下さい。彼女達が行動するのですからね』
5:00
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生徒達に呼びかけ集まったのは50人。皮肉にも【勇者】というネームバリューのおかげであった。その【勇者】が山の噴火の原因を作ったのだが。更に、ワインレッドは国1番の転移術師に大金を支払い帰宅用の転移石を買い、ホンワカボッボ山の麓まで転移させた。
『まずみんなに礼を言う。ありがとう。みんなに依頼したいのは、あの山の火口に入り中である場所に土魔法で土壁を作り、氷魔法をぶつけ芯まで凍らせて補強して欲しいのだ。それが防御壁となって、噴火の威力が弱まる筈だ』
もちろん、生徒達はいい顔をしなかったが勇者票と自分の弟【ワインホワイト・マスカット・ゴージャスティス】宛の紹介状を書き協力を約束させた。
3:00
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火口に入り次々と、目標の地点に土壁を作り氷魔法をぶつける生徒達。魔力が切れれば、尖兵が回復ポーションを飲ませ、暑さによろめけば勇者が扇で仰いだ。
そしてなんとか崩れた箇所に新しい壁ができ、以前のような緩やかな流れになったマグマの姿が現れた。
『やった…やったぞー!ありがとう、ありがとう!』
0:30
噴火まであと30分という所で無事に成功させた。ワインレッドは、転移石を1人1人生徒たちに渡し無事に帰らせた。
『やりましたね』
『あぁ』
『ワインレッドさん…貴方は多くの人を救った勇者です』
『へっ、照れるぜ』
0:20