前科者への差別~わるいやつはゆるさない!
先日、前科者に関するこのような意見を目にしました。その主張を箇条書きにすると以下の通りです。
◎社会復帰が困難だと嘆くのならば、最初から罪を犯すな。
◎犯罪者が職を見つけられないのは当たり前、自業自得。
◎被害者のことを考えろ。
要は、「前科者は差別されて当然、仕事も与えるな」ということでしょうか。まあ、分からなくもありません。実際、犯罪者の中には、本当にクズとしかいいようのない者もいます。また、少年法ゆえに軽い刑で社会復帰した後、またしても罪を犯す事例もあります。こうした話を聞けば、前科者を差別する気持ちが湧き上がるのも分かりますね。
ただし、前科者への差別は、様々な問題を伴うのですよ。ここから、その問題について語ります。
まず勘違いされている人も多いようですが、犯罪者は全員が某アニメに出てくるモヒカンのごとき人物ではありません。「俺たちはアウトローだぜヒャッハー! 社会のルールなんか完全無視だぜヒャッハー! やりたいことやるぜヒャッハー!」というようなメンタリティーの持ち主ばかりではないのです。まあ、こういう残念な人が存在するのも事実ですが。
ごく普通の社会人として生活していながらも、不運な偶然が重なり犯罪者になってしまう人もいます。たとえば町で酔っ払いに絡まれ、相手が殴りかかってきたから咄嗟に両手を前に出して防いだら、相手が突き飛ばされる形になり倒れた……これ、傷害罪になる可能性があります。まして、倒れた瞬間に後頭部を地面に打ち付け死んでしまったら……傷害致死です。この場合、刑務所行きは免れないでしょうね。
逆に、こちらが酔っていたとします。そこで絡まれ、思わず強く突き飛ばしてしまった……これまた傷害罪の可能性があります。死なせてしまえば傷害致死です。ちなみに、正当防衛は実際のところ成立しづらいそうです。検事によっては、裁判の時「あなたは、何故その場から逃げなかったのか?」という点をしつこく突いてくる場合もあるとか。仮に先に殴られたとしても、殴り返した結果相手が病院送りになれば、正当防衛が成立する可能性は低いそうです。
他にも様々な事例はありますが、不運な偶然が重なった挙げ句に、もらい事故のようなケースで犯罪の加害者になり、前科者になってしまう……これ、誰の身にも起こりうる事態なんですよ。「俺は絶対に犯罪者にはならない」と言い切れる人は、いないのではないかと思います。
実は、ここからが本題なのですが……前科者を差別し、仕事に就かせなかったらどうなるでしょうか。恐らく、彼らはまた犯罪に手を染めるでしょう。結果、また刑務所に逆戻りすることとなります。
その刑務所ですが、囚人ひとりを養うのに、年間三百万円近くかかると聞きました。この数字が正確なものかは不明ですが、いずれにせよ金がかかることに違いはありません。その金はどこから出るのかと言えば、我々の税金なんですよ……言うまでもないことですが。
刑務所という場所は、当然ながら赤字です。一応は民間企業から仕事をもらい、刑務作業という形で囚人を働かせてはいますが……経費を賄うには至っていないそうです。つまり、我々の税金の一部は囚人たちを食わせるために使われているんですよ。
しかも犯罪には、ほとんどの場合被害者がいます。肉体の被害、精神の被害、金銭の被害……こうしたトータルの被害というのは、単純には数値化できません。社会に与える損害は、かなりのものですよね。
では、犯罪に手を染めない場合はどうでしょうか。職がない、しかし生きていくには金が必要……となると、彼らは生活保護の支給を申請するでしょうね。結果、通るか通らないかは私には分かりませんが、通った場合は生活保護をもらい生きていくこととなります。生活保護、つまりは我々の払った税金で彼らを食べさせていくわけですね。
私が何を言わんとしているか、もうお分かりでしょう。前科者を差別すれば、結果的に社会に対する損失に繋がるんですよ。犯罪が起きれば、様々な形での損害をもたらします。被害者の損害はもちろんのこと、被害者の周囲にも影響を与えるでしょう。さらに、そんな連中が刑務所に入れれば、税金で食べさせていくことになるわけです。
刑期を終えて出所したら、差別を受けて職に就けない。なので、またしても犯罪に手を染めて刑務所に行く。その負のスパイラルを繰り返して歳を取り、やがて生活保護の世話になる……これ、本当にバカバカしいと思いませんか。
前科者ほど、社会に対する借りがあるんですよ。その借りを返させるため、社会で真面目に働いてもらうべきなんです。ところが、その社会への借りを返させるチャンスを、差別することで奪う。結果、またしても罪を犯す……これは、誰も得しません。
もちろん、仕事をしていながら罪を犯す者もいるでしょう。楽して金を稼ぎたい、だから犯罪に手を染める……そんな人間も、間違いなくいるでしょう。だからといって、更生する意思のある者をわざわざ差別し、更生の可能性を潰すのは、これまた誰も得しないと思います。
また今の法律では、刑期を終えて出所してきた加害者を、被害者が民事で訴えることも出来ます。被害者の受けた損害を、金という形で払わせることが可能なんですよ。現状では、判決に納得いかない被害者が加害者に対して取りうる数少ない措置のひとつです。
ところが、加害者側に収入がない場合、支払わせることが出来ません。仮に加害者が定職に就いていた場合は、収入を差し押さえることも可能ですが、加害者に収入がなければ無理です。この場合もまた、誰も得しません。
結局のところ、前科者こそ社会に復帰させ、ガンガン働いてもらって税金を納めてもらうべきなんですよ。「わるいやつはゆるさないぞ!」という気持ちに突き動かされるまま前科者を差別したとして、果たして誰が得をするのでしょうか。
ここからは完全に余談ですが、私が何を書こうが前科者に対する差別を消し去ることは不可能でしょうね。差別と偏見は、永遠になくならないでしょう。また、刑務所と娑婆を行ったり来たり……という人間を無くすのも不可能です。さらには無期懲役という、残りの人生全てを刑務所で過ごさなくてはならない人もいます。
なので、そろそろ刑務所の経営も改革するべきではないかと思うんですよね。無駄な部分をなくし、刑務作業で黒字に出来るような経営をしていく………黒字になった部分のうち、僅かづつでも犯罪被害者へ、さらには社会へと還元していければ……今よりは、ずっとマシな世の中になるのではないでしょうか。Z〇Z〇タウンの前〇社長みたいな大富豪には、是非とも検討していただきたいものです。あるいは、堀〇貴文さんのような有能かつ服役した経験のある方に乗り出していただきたいものですね。
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