第1話 GALAXY spirit
シエルの電源を入れる。
目の前に現れるのはいつもの起動ムービー。
俺が初めてこれを被って、電源を入れた時のことはよく覚えている。
“この世界で俺はどんなことができるんだろう”とか思っていたっけ。
そして次にくるのはゲーム選択画面。選ぶゲームは言わずもがなGSだ。果たしてこれからどんな冒険が待っているのか。俺は期待に胸を膨らませながら起動を待った。次の瞬間、目の前が白い光に包まれた。
────────────────────────
視界が晴れると、俺は神殿にいた。
それにしても何だこの景色は。いままでシエルで遊んできたゲームよりもメチャクチャ綺麗に、細かく描画されている。柱にある飾りもくっきり見える。
地面に意味不明な文字や図形が描かれているあたり、どうやら俺は魔方陣の中心にワープしたようだ。
ちなみに俺は、休日は大体web小説を読んでるからこういう展開は予想がつく。
よくある転移系小説の最初の場面だ。
「お待ちしておりました、勇者様」
女性の声が聞こえた。これもよくある展開。
???「貴方は神の導きによって召喚された特別な方です。そして、あなた様に頼みがあるのです。どうか魔王は倒していただけないでしょうか?」
俺「もっ、もちろん、やらせて頂きます!」
噛んじまった...
「勇者様、誠にありがとうございます。紹介が遅れました、わたくしの名は“ミラ”と申します。勇者様のお名前はなんでしょうか?
俺「俺は...タイガです。ミラさん、よろしくお願いします。」
ミラ「‘ミラ’でいいですよ。タイガ様、よろしくお願いいたします。ではこの世界の説明をさせて頂きますね。
この世界には、“星の魂”と呼ばれる非常に大きな力を保有する水晶が存在します。この魂は星王様と呼ばれる絶対神からもたらされたとされていて、私達は先祖代々この魂を守り、その力によってこの神殿もある大都 フィンティオ を治めておりました。
しかしある日、一人の青年によって全てのバランスが崩壊しました。彼は聖の魂を盗み、その力を自分自身に取り込んでしまったのです。
彼は魔王となり、その力によって大陸の端に大きな城を建てた後、星の力で各地に“守り神”を配置していったのです。
彼らは国民の行動範囲を制限し、城への侵入を許しませんでした。それにより私達は騎士団を結成し、日々魔王軍と戦っているのです...。
しかし魔王軍の力は日に日に強力になってきており、私達の力ではどうしようもなくなってしまいました。どうしたら良いかと思っていると、ある者が言ったのです。「「星王様のお言葉を授かるべきだ」」と。
そして私達は一族の力を結集させ、星王様からのお言葉を聞くことに成功しました。星王様はこう言いました。
「勇者をこの世界に召喚せよ。勇者が魔王を倒すだろう。あなた達は彼を全力で助けなさい」と。そして私達は召喚の儀式をし、それによって召喚された勇者様、それがタイガ様です。」
なるほど、星の魂ね。ゲーム名がGALAXY spiritなだけある。俄然やる気が出てきたぞ。
ミラ「タイガ様、これからこの都でできることを紹介いたしますので、ついてきて下さいませ...」
俺はミラに連れられながらこの街を案内されるのだった...