TSF文化はよくわからないけどTSF描写を書いてみたい方へのアドバイス
TSF文化はよくわからないけど、TSF描写を書いてみたいんだけど……。
そんな、もしかしたら世界中を探したら10人ぐらいは居るかもしれない稀有な方に向けて、指南講座を開いてみたいと思います。
①TSFの基本は「女の子になった戸惑い」を描くこと
TSFの基本は、男が突然女の子になったことの戸惑いを描くことにあります。
一例を挙げますと、周囲の扱いの変化。親友だったはずの男が自分に恋愛感情を向けてくるようになるというのは、その最たるものです。
ほかには、女装、トイレ、化粧など、男女の違いを意識させられる場面を描くことが肝要となります。
なお、TSFは男→女が圧倒的に多く、逆のパターンは入れ替わりと転生以外ではほとんど見かけません。
②「女になったことの喜び」を描く
TSFがGID(性同一性障害)と異なるのは、女性化が肯定的な要素である点です。どちらかといえば、オートガイネフィリア(女性化による性的興奮)的な欲求満たすためのジャンルと言えます。
たとえば、ガールフレンドやクラスメイトに化粧されて鏡を見て、「僕ってこんなに可愛かったんだ……!」などと、自分の美しさや可愛さにうっとりするなどは定番の展開です。
ほかにも、可愛い服を着ることを楽しんだり、美少女であることの役得を享受したりすると、TSF好き読者に「快」の感情を与えることができます。
③「女の子の大変さ」をアクセントとして描く
チョコレートの甘さをカカオの苦味が引き立てるように、女ならではの大変さを描くことは、とても良いアクセントになります。
しつこいナンパ男に絡まれたり、生理で苦しんだり、女社会のドロドロに疲弊したり。あまり描写が重くない部類ですと、重い荷物を持ち上げることができなかったり、言葉遣いやお行儀を注意されたり、トイレが近かったり混んでいたりなどが挙げられます。
他には、本来の男の姿と同一人物であることを証明するために苦労するというパターンもあります。
④主人公は女性化を望まない
前述のようにTSFはオートガイネフィリア欲求を満たすものでありながら、主人公は女性化を望まないのが基本です。これは、女性化が最初から目的だと、①で挙げた「女の子になった戸惑い」が描けない点に尽きるからではないかと思います。
最終的に精神が女性化する場合でも、物語の序盤は女性化を望んでいないのがセオリーです。
⑤TSFと女体化は似ているようで違う
萌えジャンルの一つに「女体化」があります。TSFと異なるのは、生まれたときから女性かどうかという点です。生まれたときから女性である設定なら女体化になります。
女体化は、①で挙げた「女の子になった戸惑い」は発生しないので、TSFとは似て異なる文化です。
以下はTSFの分類と傾向です。
①可逆と不可逆、精神の女性化
可逆は男に戻れるパターン、不可逆は戻れ(ら)ないパターンです。前者の代表作は「らんま1/2」「君の名は。」、後者の代表作は「かしまし」「ボクガール」でしょうか。前者の場合は精神的には女性化せず、後者の場合は精神的にも女性化するか、もともと性格的に女性的な場合がほとんどです。中には、女性化したときだけ精神的に女性化する可逆作品もあります。
また、主人公が男に戻れる可能性が示されても、あえて女性でい続けることを選び、結果的に不可逆になる作品もあります。
②恋愛対象
可逆作品ではほとんど恋愛対象は女性です。不可逆の場合は、男女に別れます。文脈としては男性を恋愛対象にする場合はNL(ノーマルラブ、異性愛もの)作品になり、女性を恋愛対象にする場合はGL(ガールズラブ、百合)になります。
ただし、TSFを百合とすることに拒絶反応を示す百合好きも少なくないので、その点はご注意ください。
③女性化の原因
TSFで性転換に至るには、いくつかのパターンがあります。
③-1.朝起きたら女の子になっていた
通称「朝おん」と呼ばれるパターンです。「理由は不明だが、起きたらなぜか女になっていた」という展開です。面倒な前振りが省けるのが利点です。
③-2.薬や魔法などの影響
これも多いパターンです。リアルでも行われる女性ホルモンの投与は、後述する「手術」に分類されます。
③-3.入れ替わり
何かの拍子に男女の魂(人格)が入れ替わってしまうパターンです。
③-4.憑依
入れ替わりの亜種で、男性の魂や霊が女性に入ってしまうパターンです。本来の女性の魂は眠ってしまう場合と、男性の魂が主導権を握りつつ共存する場合があります。
③-5.転生
転生したら美少女だったというパターンです。どちらかと言うと女体化との間の子のような文脈になります。
③-6.皮モノ
女性の皮(文字通りの意味です)を被ったら骨格や声なども女性化してしまうという、割とキワモノなパターンです。
③-7.手術
文字通り女性ホルモンの投与と性転換手術によって女性化するパターンです。女性化に限界があることが知られているためか、あるいは生々しすぎるためか、あまり見かけないパターンです。術後しばらく行動に移れないのもネックです。中には、半ばファンタジックな技術で完全に女性化するものもあります。
以上が、TSFの描き方と分類です。
「君の名は。」の大ヒットに見られるように、百合に比べると一攫千金を狙いやすい分野かもしれません。