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これですね。あれですか?  作者: 高端 渡
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猫のお祭り 2


 私は思う。私の人生を後から振り返れば退屈そのものだろうと。

 だが何故だろうか、私は今とてもとても生きている事に喜びを感じている。故に私は問おう、

  「あなたは本当に退屈ですか」



私の人生について振り返る機会があった。

私という人間は、地元の幼稚園、小中学校に入学し、県内ではそこそこの公立高校に入り、浪人してしまったが、そこそこの大学を卒業した。大学では、テニスサークルに入ったがそこまで頑張ることも無かった。就職活動では、人並みの苦労をしたが無事に入社できた。

 ここまで振り返って見ると、誰もが羨ましがるという程でもないが、特にトラブルもなく平穏な人生を歩んできている。だがこうも思うのではないか、

「あなたの人生は平凡だ」


奇妙な猫の死体を発見してから1年がたった。切断方法について時々考えていたがそろそろ興味も薄れてきた。この凡人っぷりが、平凡な人生をつくっているのだろう。自虐的になりながら私が平凡な人生を順調に築いている時だった。


私が裁判員候補名簿に載ったという知らせが届いた。久しぶりに面白い話のネタが出来たと思う程度だった。

これから数日後、私は再び手足を切られた猫の死骸を発見した。私の頭の中は、再びあの切り口でいっぱいになってしまった。今回は駄目だとは理解しているがその死骸を持って帰って保存した。今の私には裁判員の事なんの気にもならなかった。


今回こそ、実験を成功させようと思ったが私はただの会社員だ。前と同じようにしても失敗に終わるのは、目に見えている。私は自慢にならないが頭がいいほうではない。しかしだ、私がこの事に興味を持ったきっかけとも言えるアイツは違う。今は大学の研究室に籠っているらしいが、1つ相談でもしてみよう。


アイツからの返事が来た。「切り口の作り方を推理するのは可能だ」との事だ。私が1年掛けて出来なかったことをそのように簡単に言われると、残り少ない自尊心が無くなってしまいそうだが、実に頼もしい事だ。今度の日曜日なら予定が空いているらしい、週末が実に楽しみだ。


アイツに会うと直ぐに「死骸を出してくれるかい」と言ってきた。これではコミュ障と思う者も多かろう。それ以前に倫理的にどうかと思うが。

アイツは奇妙な切り口(とは言っても切るというよりは分裂したと言うべきものだが)を舐めるよう観察し続けた。

そして一言、「あと1年程考えてみたらどうだい。」

私はなんだと落胆した。大口を叩いておいてその程度かよ。


アイツが謎を解けなくて安心した。私は1年かかったのだ。

いくら思考力に差があっても考えた時間が違うのだ。


振り出しに戻ってしまったが、私はゆっくりと考え続けよう。

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