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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第三章 地球の回復薬編
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第20話 ショッピングモール

 改札を抜け駅前のロータリーまで出た。残念ながらイタチ顔の男はしっかり付いて来ている。


(チッ! コケたまま、諦めればいいのに…)

 心の中で悪態をつく俺。


 タクシー乗り場へ目をやると、客待ちの列が三台停まっていた。

 これではタクシーで逃げることも出来ない。仮に俺が一台目のタクシーに乗ったとしても、イタチ顔の男は二代目のタクシーで追跡してくるだろう。


 俺はタクシー乗り場を素通りして、駅前のショッピングモールへ足を向けた。

 そこは駅前商店街を解体した跡地に、大手スーパーを中核として建てられた複合施設で、家族と一緒に俺も何度か訪れたことがあった。


 歩道を歩きながら、男をまく方法を考えた。

 俺の魔法は姿を消せるわけでもなし、空を飛べるわけでもない。ただ物を収納することが出来るだけで、こう云う時には何の役にも立たない魔法だった。


 自動ドアを潜る頃にはなんとなく作戦制作完了。成功率は、まあ良いこと50%程度だろう。


 ショッピングモールの1Fは半分が食品スーパーになっている。残りの半分はドラッグストアや雑貨、家具、家電、食べ物屋など。

 とりあえずスルーして、2Fへ上がるエスカレーターへ乗る。


 衣料品売り場で俺は目的のものを探した。ちょっと季節外れだから、残っているかどうか…。


「あった」


 見切り品コーナーで、俺はそのブツを見つけた。

 リバーシブルのパーカーだ。

 サイズを確認するとピッタリだった。


 売れ残っている理由は歴然だった。何とも下品と云うか、ド派手な原色の赤だったのだ。内側は逆に常識的なグレイ。見切り品で割引されているものの、俺も懐が暖かくなかったら手を出さなかっただろう。


 俺はこれ見よがしに赤い面を表にして、左腕にパーカーを掛け紳士服コーナーを歩き回った。その間ちらちらと売り場に目をやると、イタチ顔の男が物陰からこちらの様子を(うかが)って…はいなかった。


「何だかなぁ~」


 堂々と身を晒して、衣料品を物色していたよ…。その方が俺に疑われないと思ったのだろう。だけれど場所が婦人用下着コーナーなので、完全に浮きまくっていた。そりゃ、旦那が奥さんに下着を買ってあげることもないことはないだろうけど、俺から見たら不審者にしか見えなかった。


 付き合うのもバカバカしくなった俺は、衣料品レジでパーカーの精算を済ませた。せっかくのド派手なパーカーの色が隠れてしまうが仕方がない。


 次に同じフロアにある100円ショップに向かった。


 真っ先にパーカーのタグを切る為のハサミを買い物かごへ放り込む。


 次いでお目当ての食器コーナーへ足を進めた。この手の陶磁器は、スーパーやホームセンターで買うより断然100円ショップが安い。目的は回復薬(ポーション)を使ってしまったカイルへの返礼だ。


 まずマグカップの棚を見た。黒とピンクのプリント柄がないやつを選び出し、かごに入れた。マリーさんと二人で飲む時用の応援だ。


 とは云えカイルの世界でコーヒーはハードルが高いので、白磁のティーカップを二つ追加した。こちらももちろん柄なしのやつだ。向こうの世界で金泥銀泥の色絵付けなんかでお茶を飲んだら、大騒ぎになってしまうに違いない。


 同じく無地のティーソーサーを二枚。


 ティーポットはガラス製が多かったが、陶製・磁器製のものもあり、ティーカップに合わせて無地の磁器製を選んだ。


 最後にシュガーポット。直ぐに白磁のものが目についたので、迷わず買い物かごに入れた。


 次にステンレス製のティースプーンを見繕う。


 一袋に枚数入ったやつを選択した。多い分には構わないだろう。そして長い柄の三本入りを追加。こちらはインスタントコーヒーやクリーミングパウダーの瓶用だ。


 何か他に見落としはないだろうかと暫し考えた。プラスチック製の盆とか、ガラス製の食器なんかは無理があり過ぎるだろうな。今回のところはこのぐらいにしておこう。


 レジで精算して貰う時、食器一枚一枚を丁寧に新聞紙で包んでくれた時は、少々居心地が悪かった。たかが100円の食器に、申し訳なく思ってしまう。

100円ショップ一店舗でこれだけの商品が全部手に入るかと云われると、自信はありません。商品的にはありです。

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