表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
7/73

第5話 カイル罠にかかる

「眩しい…」


 俺は西日の眩しさで目を覚ました。どうやら数時間ばかり気絶していたらしい。陽がすっかり傾いていた。

 運が良いことに、気絶している間に野生生物や、魔獣に襲われなかったようだ。


 あれ程酷かった全身の痛みがまったくない。高熱も引いていた。

 俺は左足に体重をかけ、ゆっくりと立ち上がった。

 おっかなびっくり右足を地面へ着ける。


「痛くないな」


 足首が腫れあがっていた場所は跡形もなく、右足に体重をかけてトントンしても、何の痛みも感じなかった。


「謎物質、ポーション、すっげー!」


 小金貨1枚と云う高額ゆえ、使うのは今回で人生初めてだったが、効果は抜群だった。

 マイダスの街へ着いたら、二三本買っておこう。お金が出来たらね…。

 今回、なけなしの一本を使ってしまったので、もうケガは出来ない。慎重に行動しよう。


 短剣はそれほど遠くない崖下に落ちていた。

 あのままこれを持って転がっていたら、間違いなく大怪我をしていただろう。

 GJ(グッジョブ)>あのときの俺。


 背後は俺が落ちて来た崖。

 目の前には、背の高いイネ科の植物が密生した草原が広がっていた。ススキか葦か、多分その類の仲間だろう。

 茜色に染まりつつある夕陽を受けて、幻想的な美しさだった。

 その美しい調和を、醜く乱しているものがあった。

 一直線に倒された移動跡だ。例のサルのものに違いない。


 おそらくここは、川が作り出した谷底なんだと思う。もう少し行けば、川があるだろう。俺が転落した崖と反対側に、同じような崖が見えていた。


「どうする? ここで引き返すか?」


 ありえないな。このまま街道に引き返しても、無一文で食料もない。どうやってマイダスへ行く?

 意を決すると、俺は葦原の中へ分け入った。


「へぶしっ!?」


 …のだが、直ぐにこけた。


「なんだこりゃ?」


 足元を見ると、草が結ばれて輪っかになっていた。子供がよくイタズラで作るようなワナだ。

 アイツの仕業だ。

 直ぐに怒りが湧き上がって来る。


「落ち着け、オレ。怒ってもろくなことにならんぞ」


 俺は崖から落ちた時のことを思い出して、二三回深呼吸した。

 再び罠に引っ掛からないよう、足元に気を付けて歩く。

 結局罠はあれ一つだった。俺に対する嫌がらせかよ!


 川幅は5メートルぐらいだった。対岸にあのサルが上陸した跡が見える。

 川底が見えていたので、ブーツとズボンを脱いで歩いて渡った。深さは一番深いところで膝ぐらいだった。


 対岸の崖は俺が転落した崖よりずっと傾斜が緩やかだった。これなら何とか登れそうだ。

 上へと昇る細いけもの道があった。川は野生動物の水飲み場になっているようだ。

 後30分ほどで陽が落ちる。このまま川辺で夜を明かす選択肢はなかった。寝ている間に鉄砲水に会ったら命はない。


 実はこのままけもの道を行くのも危険だった。

 危険な野生動物や、魔獣に出くわす危険性があるからだ。

 俺は頼みの綱の短剣を握り締めると、けもの道を登り始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ