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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第三章 地球の回復薬編
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第12話 我が家秘伝の『青汁』です

「我が家秘伝の『青汁』?」


 高畑医師の不意打ちに、俺の声が思わず裏返った。


「何故に疑問形だ!?」


 高畑医師が呆れた表情で突っ込んできた。


 まずい…。

 俺は瓶一本分の回復薬(ポーション)を吸い飲みへ入れ佐野先輩へ与えたわけだが、3/4程飲み込ませた後、残りを病室へ置いて来てしまったのだ。まさか見た目『青汁』そのものの回復薬に注目する人間がいるとは思わなかった。ちゃんと回収しておくべきだった…。


「いやだなぁ、先生。先生の云い方だと、まるで『青汁』のおかげで脊髄損傷が回復したみたいに聞こえますよ。『青汁』なんかで難病が治るわけないじゃないですか」


 俺は正攻法で反撃することに決め、極力馬鹿にしたようなニュアンスを込めて云い放った。


「そう聞こえたんなら、それで正しい。僕はこの『青汁』が佐野君を直したと確信しているんだ(・・・・・・・・)。これを見たまえ」


 しかし高畑医師はまったく動じた様子もなく、冷静にタブレット端末を操作すると、新しい映像を表示して見せた。大学の研究室らしき場所で、白いネズミが映ったAVI動画だ。


「うちはこれでも大学病院だからね。伝手を頼って研究室の院生に手伝って貰った。このマウスはメスで右脚の筋と神経を切断してある。ほら、右脚を引きずってて上手く歩けないだろう? このマウスにこの『青汁』を飲ませて30分後…」


 スポイトで『青汁』を飲ませる映像が映った後、元気よく走りまわる白いマウスの姿が映し出された。別のマウスの別の個所がケガされられ、『青汁』を飲まされ回復させられる。何匹も何匹も…。


「僕が確信している理由がわかっただろう? もう一度君に聞くよ…。この緑色をした液体は、いったい何なんだね?」


 俺は答えることが出来ず、黙りこくってしまった。


 まさかここまでやってくるとは考えもしなかった。この医師の目的は何なのだ? 俺を問い詰めて、何をしようと云うのか?


「この『青汁』の正体を知って、先生はどうするつもりですか?」


 俺は辛うじて掠れた声を絞り出した。


「どうするって…」


 問われた医師は、困ったような顔で即答を避けた。


「名誉ですか? どんなケガも治癒可能なノーベル賞級の薬を発見したって、発表しますか?」


「そんなつもりはないよ…」


 高畑医師が、戸惑った様子で首を横に振った。


「なら金ですか? どんな深刻な故障でも即座に回復出来る薬があると知れば、億の金を積んででも欲しがるアスリートや億万長者が沢山いるでしょう」


「確かに金はある程度必要だが、金儲けを目的にする気はないよ。分を越えた金を持っても、害にしかならないからね」


 高畑医師は金儲けの線をきっぱりと否定した。


「ならば医者としての使命感ですか? 目の前の病気やケガで苦しむ全ての患者を治したい。この薬があれば、今まで治療不可能だった患者の治療が可能になるかもしれません」


「そりゃあ医者としてはそれに越したことはないと思うが、何か問題でも起こるのかね?」


 高畑医師の質問に、俺は肯いてみせた。


「ある理由があって、この『薬』は俺一人しか入手できません。大量に入手することも不可能です。そうするとどうなると思います?」


「まずは値段が高騰するだろうね。少ない『薬』を巡って、患者同士で奪い合いになるかもしれない。入手出来なかった患者からは、君は誹謗中傷を受けることになるだろう」


 高畑医師が納得したような顔をした。


「例えばこの『薬』を大量に配備すれば、前線で負傷した兵士が即座に復帰できる『超人兵団』が誕生するかもしれません。もし何処かの国の独裁者が俺に目を付ければどうなりますかね」


 俺はなるべく深刻そうに見えるように、高畑医師の目を真っ直ぐに見つめながら云った。


「なるほど、僕の好奇心は、君にとっては迷惑でしかないわけか…」


 高畑医師は暫く俯いて考え込んだ後、顔を上げた。


「君がそこまで話してくれたのだから、僕も本音を話そう。他の多くの患者とか正直どうでも良い。僕にはどうしても直したい患者が二人だけいるんだ。二人とも現代医学ではどうすることも出来ない症状だ。たった二人分だけで良い…。どうか治療に協力してくれないだろうか」


 高畑医師が、中学生の俺に深々と頭を下げた。

ここの部分は何だか書くのが難しかったです。

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