表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
6/73

地球側(アースサイド) 第1話 小杉雄太の憂鬱

「かはっ!」


 悪夢から目覚めた俺は、全身汗びっしょりだった。

 時計を見ると6時を少しまわったところ。寝直すには中途半端な時間だ。


 俺は小杉雄太。高校受験を控える中学3年生だ。

 俺は物心ついた頃から、奇妙な夢を見るようになった。色も味も臭いもある。ケガをすると痛みを感じる。まるで現実のような、明晰夢と云うやつだ。


 夢の中の俺は、中世ヨーロッパのような農村に住む、下級貴族の次男坊だった。名前をカイルと云う。

 そのカイルが冒険者になるため村を出ることになった。ところが旅の途中で、荷物を野生の猿に盗まれた。追いかけたカイルだったが、運悪く崖から転落、瀕死の重傷を負ってしまった。


 今日の夢はここまで。


 寝汗でパジャマがベタベタだ。さすがにこのままでは気持ちが悪い。

 洗面所で歯を磨き、シャワーを浴びる。ついでに朝シャン。

 制服に着替え、台所へ顔を出す。


「あんた今日は早いのね。熱でもあるんじゃないの」


 母親から皮肉を云われた。

 どうせ毎朝、遅刻ギリギリですよ…。


 朝のニュース番組をポケーっと見て時間を潰す。|(受験勉強に充てるには時間が足りないだろ?)

 トーストとサラダ、ベーコンエッグを食べた後、定刻にかばんを持って家を出た。中学まで徒歩15分だ。


 いつもは先に出た幼馴染の川上雪華(かわかみせつか)に途中で追い付くんだが、今日は逆になった。雪華が小走りに駆けて来る。


「なーに、ユータ。今日は早いじゃん」


 雪華は名前の通り色白でちょっとした美人だ。小顔で髪を二本の三つ編みにしている。D組の学級委員を務めるくらい頭が良い。


「ああ、今日は夢見が悪くてな。早く起きた」


「夢見って、何? 例の夢?」


「そう、例の夢だ。夢の中で俺、死んだかもしれん」


 こうやって会話しながら通学するのが、俺と雪華の朝の通常だ。

 家が近くで同い歳。雪華とは保育園以来の付き合いだから、もう10年近くになるかもしれない。

 10年続けても話題が尽きないのだから、大したものだ。


「夢の中の俺が死んだら、二度とあの世界の夢を見る事がなくなるのかな」


「暗いぞユータ。夢は夢じゃん。気にすることないって。それよりユータ、進路はどうするつもりなの?」


 雪華が少し緊張を交えた口調で訊ねて来た。


「どうするって、今の俺の成績で行けるグレードの公立へ行くだけさ。雪華なら、ランクの良い私立に行けるんだろ?」


「ううん、わたしはユータと同じ高校でいいよ。私立なんて、うちの家お金そんなにないし…」


 俺だって雪華の気持ちには気付いていた。朴念仁じゃないからね。

 でも雪華は保育園の頃からいつも一緒にいた幼馴染だ。妹みたいに思っているけど、いきなりそう云う気持ちをぶつけられても、その気になれないのだ。


 カイルは幼馴染の村娘と結婚する方が気が楽だと云っていた。地球側(アースサイド)にいる俺には、いまいち理解し難い感覚だった。そのうち雪華にも理解して欲しいのだが…


 おっと、校門が近付いて来た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ