第6話 自家製ヨーグルト作り
新章開始しました。
俺は何時ものように食卓で朝食を取っていた。メニューはトーストとベーコンエッグ。野菜サラダにコンソメスープの組み合わせだ。母さんと妹のななかは食卓についているが、父さんは通勤のため既に家を出ていた。
(う~ん、いまいち物足りないな…。ヨーグルトでも追加するか。)
俺は椅子から立ち上がり、冷蔵庫を開けた。ヨーグルトのパックを手に取り、蓋を開けようとする。家の定番は、砂糖無添加のプロバイオなやつだ。その時はたと気付いた。気付いてしまった。
(カビ菌が繁殖するには一週間ぐらいはかかるけど、これだったら半日でわかるよな…)
小学生の時小遣いをはたいてネット通販で購入したアレ。一時期熱中して作りまくっていたんだが、何時しか飽きて使わなくなってしまった。
「久しぶりに作ってみるか…」
冷蔵庫から未開封の1000ml牛乳パックを取り出した。そのまま電子レンジに放り込み、500Wで3分間チンする。牛乳100%なら成分無調整でなくて調整乳でもいいんだけど、低脂肪乳や乳飲料だと失敗するんだよな。
「なあに、またアレやるの?」
「お兄いが、また変なこと始めた」
母さんとななかが冷たい視線を送ってきた。
構わず牛乳パックを開け、マグカップに半分ぐらい注ぎ飲み干した。熱くもなく冷たくもなく生温かい牛乳は不味かった。
引き出しから100円ショップで購入したステンレスのスプーンを取り出し、殺菌のためコンロの火で炙る。水道の水を掛けると、ジュッと音をたてて冷えた。
そのスプーンで種になるヨーグルトをぐずぐずに崩しておく。塊のままだと牛乳に混ざらないからだ。そうして崩したヨーグルトをスプーンで掬い、丁度マグカップに出した分量ぐらいを牛乳パックに戻してやる。開口部にこぼれたヨーグルトが付着するんで、ティッシュペーパーで拭きとって、これまた100円ショップで買ったキャップで封をする。
この後ヨーグルトの種菌を攪拌するため、封をした牛乳パックをシェイクするんだが、これを乱暴にやると牛乳が飛び散って大変なことになるんで気を付けなければならない。牛乳パックのキャップって、完全にシーリング出来るわけじゃないからね。
ここまでで、一応準備完了だ。
牛乳パックを持って自室に戻った。押入れを漁って目的の物を探し出す。
「あった」
ヨーグルトメーカーだ。スイッチも何もない、コンセントに差し込むための電気コードがあるだけの単純な物だ。これに牛乳パックごと入れると、乳酸菌が増殖する最適な温度に保たれ、10時間後には自家製ヨーグルトが出来ると云う優れものである。
購入した当初、何十回と作成したが。乳飲料を使った時以外は、一度も失敗した記憶がない。
もちろん、その前にやることがある。
「収納開放」
直ぐに黒い霧の渦が現われた。牛乳パックに手を触れ、『収容』の呪文を唱えると、パックが渦の中に吸い込まれるように消えて無くなった。
「ん?」
少し違和感のような物を覚えた。昨日食パンを収容した時に較べ、何か引っ掛かるような感触だったのだ。まだそんなに収納魔法を使い込んでいるわけではないので、気のせいだったかもしれないが…。
『放出』の呪文を唱えると、元の場所に牛乳パックが現われた。今回はさっきのような違和感を覚えなかった。やはり気のせいだったのかもしれない。
「収納閉鎖」
黒い霧の渦が、すっと小さくなり消滅する。
俺は牛乳パックをヨーグルトメーカーへセットすると、プラスチックのカバーをかけ、プラグをコンセントに差し込んだ。動作ランプの明かりが灯り、保温が始まったことが分かる。
後は放置するだけ。10時間後には、結果が出ているはずだ。
ヨーグルト作りに失敗すれば、収納の中で細菌が殺菌されることを確認出来る。逆に成功すれば、未知の細菌感染の恐れが出て来ると云うことだ。
収納を通じて、物品のやり取りが出来るかどうか、この実験の成果に掛かっているのだ。
俺は大きくため息を一つつくと、学校へ出かける支度を始めた。
作中の自家製ヨーグルトの作り方は、魔法部分を除いて(笑)自分で実際にやっている方法をそのまま書きました。この通りやれば、誰でも自家製ヨーグルトが作成出来ますよ。




