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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第二章 マイダス迷宮編
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地球側(アースサイド) 第5話 小杉雄太の恐慌

 人間には免疫のない風土病がアフリカの一部地域に広がり、危うく感染爆発(パンデミック)になりかけたと云うニュースだった。


 またこんな歴史もある。18世紀には30万人の人口を数えたハワイ王国が、白人の持ち込んだ淋病、麻疹、インフルエンザなどによって19世紀にはわずか六分の一の人口まで激減してしまった。ハワイの人々はこれらの病気に免疫を持っていなかったからだ。


 俺は昔TVで見たSF映画を思い出した。宇宙から来た病原体に人々が感染し、次々と死んで行くと云うストーリーだった。また、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』と云うSF小説がある。人類をはるかに超えるテクノロジーを持った宇宙人が地球を侵略して来るが、地球の何と云うこともない細菌に感染して全滅してしまうと云うものだった。


 俺は慌てて回復薬(ポーション)を机の上に戻すと、両掌ををじっと見つめた。


「ヤバイかもしれない…」


 怖ろしい想像に震えが走る。…いや、恐れてばかりいてはいけない。行動しなければ!

 慌てて『収納(ストレージ)』を『閉鎖(クローズ)』する。


 俺はティッシュを二三枚取ると、手の皮膚が直接触れないように箪笥の引き出しを開けた。


「有った」


 冬用の手袋だ。同様にティッシュを使い、何とか両手にはめてゆく。


「うん、これで汚染されていたとしても、手袋の内側だけだ」


 俺は自室のドアを開け、階段を降りた。台所に母親がいないか、様子を窺う。どうやらいないようだった。

 俺は台所に常備してあるアルコール除菌スプレーに目を止めた。まな板なんかの除菌に使うやつだが…。


「確か、アルコールで死なないノロウィルスみたいなのもいるんだっけ。塩素系の殺菌剤の方が良かったような。何処かに有ったはず…」


 俺は塩素系の漂泊・殺菌剤を探し出すと、説明書きを読んだ。どうやら希釈して使うものらしい。


 洗面所へ行き、使わなくなった古いプラスチックの洗面器に水を貯める。目分量で殺菌剤を入れた。ちょい濃い目の方が良いだろう。


 カイルの世界の未知の細菌は脅威だが、地球の細菌が向こうに行かないことも大事だ。俺は洗面器を持って自室へ戻った。


 回復薬の小瓶をつまみ上げ、薬液の中へ浸す。瓶が乗っていた跡を、薬液を染み込ませたタオルで拭く。机へタオルを乗せたまま、しばらく放置だ。


 そして手袋のまま、両手を薬液の中へ突っ込んだ。中で手袋を脱ぐ。箪笥の引き出しを開ける時に使ったティッシュペーパーを一緒に漬けることも忘れない。


 除菌時間はどのくらいだろうか? 多分5分くらいで十分な気がするが、念の為に30分くらい漬けておこう。


 殺菌する時間が暇なんで、色々考えてしまう。はたして異世界の細菌を、地球の殺菌剤が殺せるのか?…とか。いや、そもそも同じ炭素系の生物なら、地球の殺菌剤で殺せない道理はないだろう。そう、同じ『生物』だ。


 俺は収納(ストレージ)の中の物品に、そもそも生きた細菌が付いていない可能性に気が付いた。


 確か生きた生物は『収納』に入れられなかったはずだ。生きた細菌だけが例外なのはおかしい。何故『収納』にこのような意味不明の制限が付けられているのか。ひょっとしたら、今回のような危険を事前に防ぐ目的があるのかもしれなかった。


 異世界と地球の間とは極端な事例だが、カイルの世界に限定しても、大陸の西の端と東の端では、住んでいる生物相がまったく違うはずだ。もし『収納』に生きた生物が収納可能なら、パンデミックのような事例が頻繁に起こるかもしれなかった。そのための制限事項なのではないだろうか。


「実験してみる必要があるな」


 とりあえず回復薬の小瓶は、『収納』へ戻さない方がカイルの世界のためにも安全だろうなと思った。


 再び台所へ行き、食パンを一枚失敬した。包丁で四分割にする。

 次いでゴミ箱の中を漁った。ゴミ出しの日は月曜日なんで、まだアレが残っているはずだ。


「うん、これだ」


 五日ぐらい前に俺が食べたバナナの皮だった。摘み上げで臭いを嗅ぐと、カビ臭かった。十分だ。

 バナナの皮を、食パンに擦り付ける。これで確実にカビ菌が食パンに感染(うつ)ったはずだ。

 四片の食パンを、一つずつラップで厳重に包装する。紙皿へ乗せ、そのまま自室へ持ち帰った。


収納開放(ストレージ・オープン)


 『収納』を開き、ラップに包んだ食パン二片に触れ収容(プッシュ)する。二三秒待った後、すぐさま『収納』から放出(ポップ)した。『収納』へ一旦入れた食パンへ、マジックで印をつける。これで一週間ぐらい放置し、印のない方にカビが繁殖し、印のある方が繁殖しなければ、『収納』に殺菌作用があることが確認出来るはずだ。

異世界召喚物の小説では、細菌に関する免疫など考えてないものが多いですね。

実は大昔から不定期に人員の交換が起こっていて、両世界間で既に細菌が混交していると云う設定なのかもしれませんね。突然インフルエンザの新しい型が流行するのは、実は異世界発だったりして。


さて、わたくしごとで申し訳ありませんが、急遽2週間程度入院することが決まりました。退院したら再開しますので、暫くの間ご容赦願います。

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