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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第二章 マイダス迷宮編
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第41話 ジャイアントピルバグ

 小判型の周囲にドーム状に盛り上がった身体。何枚ものプレート状の装甲を身にまとい、一対の触角、左右七対の脚をモゾモゾと動かしながら俺に近付いて来る。小さな二つの複眼を持っているが、あまり良く見えてないようだ。


 ジャイアントピルバグだ。


 猫ぐらいも大きさがある巨大なダンゴムシだな。ジャイアントピルバグの甲殻は硬く、手甲(ガントレット)脚鎧(グリーヴ)の材料に使われることがある程だ。短剣ではまず刃が通らない。


 俺は木の枝を放り出すと、腰から短剣を抜き身構えた。刃が通らないからと云って、貧乏な俺は短剣以外の武器を持っていないからだ。


 ジャイアントピルバグが突然丸まり、ごろごろと転がり出した。転がる毎に速度が増し、体当たりを仕掛けて来るつもりなんだろう。ジャイアントピルバグの弱点は腹部なんだが、丸まると弱点がなくなる。


 グリーンスライムより硬いので、直撃を受けるとダメージが大きい。体当たりを受けないようにしなければならない。このまま転がってくれば足に当たるが、幸いグリーンスライムより動きが直線的で読みやすい。


 と思ったら、目の前でぽーんと跳ね上がった。


 しかしこれも想定済み。ギョーム・ダンジョンで戦ったあのグリーンスライムに較べたら格段にスピードが遅い!


 俺は余裕で体当たりをかわすと、ジャイアントピルバグの弾道を目で追った。奴は回転しながら俺の脇を抜け、数メートル先の地面でバウンドした。二回目のパウンドで丸まりを解き、14本の節足でブレーキをかける。


 即座に丸まり直し、逆方向、つまり俺に向かって転がり始める。


 こいつの攻撃方法は体当たりだけのようだ。グリーンスライムのように多彩な攻撃は無いな。正直、やり易いくてありがたい。


 ジャイアントピルバグが再び跳ね上がる。


 俺はかわしざま、短剣で奴へ斬り付けた。

 岩を斬り付けたような硬い感触で、短剣が跳ね返される。


「チッ!、やっぱり刃が通らねーか」


 ハルバードとかモーニングスターとか、もっと重量系の武器ならあの装甲を砕けるかもしれないが、俺にそんな腕力ないもんな。


 二度、三度、同じように短剣で斬り付けたが、全て跳ね返された。


「ならば…」


 軌道を読み、すれ違いざま足で蹴り付ける。


「痛って~!!」


 足が痛い。やっぱ硬いわ!


 蹴られたジャイアントピルバグが、サッカーボールのように側壁へぶち当たり跳ね返る。何事も無かったように丸まりを解き、14本の脚でブレーキをかけ止まった。どう見ても、ノーダメージだ。


 俺程度の蹴りの威力では通用しないと云うことだ。でも、ヒントはつかめたぞ。


 ジャイアントピルバグの装甲は確かに硬い。でも体重はそれ程でもない。これなら、あの手で行けそうだ。


 ジャイアントピルバグが丸まり、また転がり始める。跳ね上がる瞬間、奴は僅かに丸まりを開け、尾部で地面を蹴る。そのタイミングを見計るのだ。


「来た!」


 俺はジャイアントピルバグの体当たりをかわすと、奴の着地点へ向かって走った。パウンドした後、奴は丸まりを解き、平べったくなってブレーキをかける。その瞬間をねらって、側面から掬うように蹴り上げる。


 ジャイアントピルバグがひっくり返り、腹を見せて宙に舞った。反射的に丸まる前に、柔らかい腹へ短剣を付き刺す。しばらくじたばたと暴れていたが、すぐに動かなくなった。


「地面に縫い付けるつもりで短剣突き刺したんだが、殻に傷ついてねーや。鎧の材料になるわけだわ」


 俺はポケットからぼろ布を出すと、短剣に着いた虫の体液を拭った。


収納開放(ストレージ・オープン)収容(プッシュ)収納閉鎖(ストレージ・クローズ)


 うん、死体は問題なく収納出来るようだ。生き物は収納出来ないって聞いたけど、完全に死んでる場合は収納可能なことが確認出来た。そうでなけりゃ、冒険者が『収納の魔晶石』を欲しがらないだろう。


 ダンジョンに入る前に、試しに生きた蟻ん子を収納出来ないかやってみたんだが、無理だった。何でそんな制限があるんだろうね。家畜とか、生きたまま収納で運べれば、新鮮な肉が手に入るのに。


「んーと、どっちから来たんだっけ? あっちに木の枝が落ちてて、こっちに曲がり角があるから、曲がり角の方へ行けば良いんだよな…でも、大回廊からの歩数が分からなくなっちまった。一度戻って数え直すか」


 戦闘でマッピングが邪魔されるのは仕方がない。戻る前に、曲がり角の先を確認しておくか。

 通路は直角に左へ曲がっている。慎重に首だけ出してその先を確認すると、


「もう一匹いたよ。はぁ~」


 俺は溜息しか出なかった。

ダンゴムシ(マルムシ)って、子供の頃はよく見かけたんですが、最近はあまり見ないですね。

まあ、関心が無くなって、見えてないだけかもしれませんが。

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