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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
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第2話 追いかけて、追いかけて

 何でサルが俺の大事な背嚢(リュック)を持っているんだ!?


 俺から奪えるわけが無いのだ。


 俺がうたた寝していた場所は、アルムス村とダンジョンの街マイダスを結ぶ街道。(直通道路ではない) その傍らに設けられた退避用の広場だ。

 アルムスからマイダスまでは馬車でも一週間以上掛かる。

 途中に幾つかの村や町があるが、一日では辿り着けない距離の場合は、途中に野営用の避難所が設けられていた。

 何台もの馬車が停められる、けっこうな広さがある。

 野生動物や魔獣(モンスター)が入って来ると危険なため、行商人たちが金を出し合って、人間以外が入れないように魔法結界が張ってあった。

 夏場にやぶ蚊が入って来れないので安全&安眠地帯。本当、アルムス村の自宅にも欲しかったよ、魔法結界。


 そうゆう理由わけで、魔法結界の外からサルが俺の荷物を奪えるはずがないのだった。

 にも係わらず、俺の背嚢を背負ったサルが、俺に向かってあかんべえをしながら、お尻ぺんぺんしている。


 ムッカッー! ムカつく!!

 頭に血が上った俺は、サルに向かって躍りかかった。


 サルがひらりと俺のタックルをかわす。

「ケッ」

 バカにしたようにサルが嘲笑った。

 更に激怒した俺は、再度サルへタックルを噛ます。

 ひらり、ひらりと、サルはまるで武術の達人のように俺のタックルをかわし続ける。


 俺とのやり取りに飽きたのか、サルは突然背を向けると、街道を挟んで避難所と反対側の藪へ飛び込んだ。俺は躊躇なくヤツの後を追った。


 あの時の俺はどうかしていたに違いない。

 どんな魔獣が出るか分からない山中へ、身一つで分け入るなど、はっきり云って自殺行為だ。

 それぐらい俺は頭に血が上っていたのだ。


 人の手のほとんど入っていない原生林とは云え照葉樹林。

 広葉樹の隙間から木漏れ日が十分差し込んでいるため、笹や羊歯などの下草が密に生い茂っていた。

 サルはそこを野生生物特有の慣れでスイスイと進んで行く。

 俺は腰に刺した短剣(ショートソード)を山刀代わりに振り回し、小枝や下草を切り払いながら、必死に奴の後を追った。


 直ぐに奴の後ろ姿を見失い、草が倒れた移動跡を追い掛ける状態になってしまった。

 さすがにもうダメかもしれない。

 引き返そうか…。

 そう思い諦めかけた時、唐突に視界が開けた。


 林の中にぽっかりと、直径20メートルぐらいの草地が広がっていた。

 中心には見上げる様な高さの大木が生えていて、根元に例のサルが座っているのが見えた。

 腹が立つことに、呑気に毛繕いをしているではないか。

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