第23話 お宝鑑定
「さあ、カイルはん。そろそろ行くでぇ」
マリーさんとの楽しい道行きも、もう少しで終わりを迎えようとしていた。順調に行けば、昼過ぎにはマイダスの街に入れるそうだ。
周りを侵入防止結界に覆われた広場には、俺たちの他にも多くの旅人が泊まっていた。ターデントからマイダスへ続く街道の最後の宿泊所だ。
「あの、出発する前に、マリーさんにちょっと見て貰いたいものがあるんですけど」
俺はおずおずと切り出した。
「なんやなんや、商人に鑑定頼むと、鑑定料がかかるんやでぇ」
「ううっ…」
忘れてた。マリーさん、けっこうガメツイ人だった。
「冗談やて、カイルはん。何やねん、早よ見しいや」
マリーさんが云うと、冗談に聞こえないんですけど…。
マリーさんがニヤリと悪い笑みを浮かべた。悪いマリーさんも相変わらず魅力的だ。
「これなんですけど…」
背嚢から巾着袋を取り出そうとすると、マリーさんが慌てて俺を宿泊所の隅へ引っ張って行った。
「何処で、誰が見とるかもしいひんからな」
そう云っている間にも、広場からは続々と人々が旅立って行った。広場がみるみる閑散として来る。俺はマリーさんの出発を邪魔しているわけだから、ちょっと申し訳ない。
俺は巾着袋から、例のお骨から回収した金貨と銀貨を取り出した。
「ええと、外国の硬貨だと思うんですけど、どのくらいの価値があるもんなんでしょうか?」
俺の質問に、彼女が眉を寄せた。
「う~ん、外国の通貨なら結構見た事あるけど、これは見た事ないないなぁ。ひょっとしたら、古い時代の古銭かもしいひんな。発行枚数の少ない年の硬貨なんか、お貴族様や好きモンの豪商がとんでも無い値段を付けることがあるそうやけど、うちではちょっと価値が分からんな…」
なるほど。流石に露天商では分からないか。
「じゃあこっちの宝石らしきものは」
金色がかった透明な石で、表面に油膜のような虹の帯が見える。
「これは…」
マリーさんの眼の色が明らかに変わった。
「うちも初めて見るけど、多分これは収納の魔晶石やないかな。もし本物なら収納の魔法が使えるようになる。冒険者にも商人にも人気な魔晶石やから、これ一つで大金貨50枚は下らんで。正直うちも喉から手が出る程欲しいけど、うちみたいな零細業者にはとても手が出せん」
ユータの世界の漫画に出て来る○次元ポケットみたいなもんか? 攻撃には使えないけど、是非覚えたい魔法である。
「最後にこれなんですけど、どうやら錬金術のレシピらしいです」
俺は160年前の錬金術師が書いた備忘録を差し出した。
「これはこの中で一番価値があって、なお且つ一銭にもならんお宝やろうな…」
「えっ!?、価値が有るの一銭にもならないってどう云うことですか?」
「あんさん、ここに書かれとるポーションなんかを自分で作って、自分で使う分にはかまへんけど、他人に売ったら後ろに手が回るで。薬師か錬金術ギルド以外の人間が薬を売るのは違法なんや。考えてもみてみい。何の修行もしてない素人が薬作って売ったらどうなると思う?」
「死人が出ますね…」
「それにここに書かれとる情報を売ったりせん方が良いで。未熟な薬師や錬金術師なら、大枚叩いてもこのレシピを欲しがるやろ。でも薬師ギルドや錬金術師ギルドにとっては、レシピは秘中の秘。師匠から弟子へ伝えられるべきメシの種や。暗殺者が送られるで」
俺の額を冷や汗が一筋流れる。
「は、はあ…。教えてくれてありがとうございます。気を付けます。鑑定料の代わりと云ってはなんですけど、マイダスに着いたら火魔法の新しい使い方をお教えしますよ」
「ええっ? カイルはんは魔法使えんのとちゃうか!?」
「俺の親父は元A級冒険者で、火魔法の使い手でしたからね。絶対習得出来るとは云いませんけど、一緒にダンジョンへ潜って練習しましょう。きっとびっくりすると思います」
新しい魔法については、俺にちょっとした心当たりがある。
「それにしてもあんさん、こんなお宝何処で見付けたん? うちもあやかりたいわ」
「山の中で行き倒れを見付けて回収したんですよ」
「行き倒れのもんなら、遺族に返還せんといかんのやないか?」
「多分大丈夫ですよ。その人160年前に死んでますから。完全に白骨になってました」
俺はニヤリと悪い笑顔をマリーさんに返した。
アイテムボックスや収納魔法はこの手のFTでは定番ですね。




