第19話 旅の商人マリー
肩まで届く亜麻色の髪。顔は形の良い卵型で、色白の肌に少しソバカスが浮いている。大きく円らな瞳に通った鼻筋。唇はバラの花びらのようだ。
白い長袖のブラウスに、飴色のスカート。足には革のサンダルを履いている。
年齢は俺とほぼ同じぐらいか。
美人と云うより可愛いタイプの美少女である。
俺のどストライクな少女であった。
「あ、あの。あなたは…」
無気力から一転、アドレナリンが放出されたのか、俺は半身を起こした。
「うちはマルローネ。マイダスの街で露天商をしてるんよ。マリーって呼んでや。それであんさん、ケガしてるようやけど、どないしてんねん」
何だか言葉使いが変だし、イントネーションもおかしい。外国出身なんだろうか。
「あっ、はい…。俺はカイルって云います。冒険者になるためにマイダスへ出る途中、魔獣に襲われまして。あの、マリーさんは商人って云ってましたけど、お金は出しますからポーションを売ってもらえないでしょうか」
俺がそう云うと、マリーさんが困ったように眉を寄せた。
「う~ん、さすがにポーションは持ってえへんなぁ。ポーションなんて足が速くて高価なもん持っとるのは、冒険者ぐらいなもんやで」
「そうですか…。次の村へ行けば、ポーションありますかね」
「無いやろうな。ポーションなんて生もんやし、一週間ぐらいで痛んでまうやろ。金持ってて、日常的に魔獣と戦ってケガが多い冒険者には必需品やけど、この辺の一般人はマイダスの治療院に行くからな。まあ、冒険者は人里離れた山野とか、階層の深いダンジョンとかで、治療院に行けへん場合が多いから仕方ないけどな」
俺はがっくりとうな垂れた。村には治療師がいないらしい。もう後何日も、この痛みに耐えなければならないのか…。
アルムス村では元冒険者で、水系の治癒魔法が使える母さんがケガの治療してたもんな。隣村のターデントに薬師の婆さんがいたのも、マイダスから遠過ぎるからだろう。
「あの、もしご迷惑でなかったら、マイダスまで荷車に乗せて行ってもらえないでしょうか? ちゃんとお礼はしますから」
俺はマリーさんに頼みこんだ。
「そうやなぁ。このままケガ人を見捨てて放っとくのも寝覚めが悪いかんな。よっしゃ、連れてったる。小金貨1枚でどうや? あと痛み止めの丸薬もあるで。こっちは1粒小銀貨3枚や。朝夕1粒ずつ服用で、マイダスまで5日やから、大銀貨1枚と小銀貨5枚な」
マリーさんが商売人の顔になり、ちょっと悪い笑みを浮かべる。
うっ。俺ってばカモなのか? ネギも背負ってるのか?
まあ、俺の世界の薬は高いし…いや、それを云えば、ユータの世界の薬もけっこう高かったな。
「ううっ…。それでお願いします」
俺は背嚢を開けると、巾着袋から硬貨を取り出し前払いした。右手が使えないので、左手だ。面倒臭い。
アルムス村を出る時、両親が餞別として渡してくれたのが、大金貨2枚と小金貨10枚。それに俺がお小遣いを貯めた大銀貨12枚と小銀貨8枚、銅貨21枚。
乗合馬車が通るターデント村でポーションを買い小金貨1枚を使った。更に両親の監視の目が無いことを良いことに、買い食いで大銀貨6枚を浪費してしまった。乗合馬車に乗らず歩いてマイダスへ向かったのは、買い食いの分を取り戻すためなのだ。
もしあの時買い食いせず乗合馬車へ乗っていれば、こんな目に会う事は無かったのに。あの時の俺を呪ってやりたい。
あっ、でもそうすると、未発見のダンジョンを見付けることも無かったわけか…。
ここで大銀貨1枚と小銀貨5枚を使ったんで、残り大金貨2枚、小金貨9枚、大銀貨5枚、小銀貨3枚、銅貨21枚。減る一方の俺の全財産…。節約しなきゃ。(泣)
「毎度あり」
お金を受け取ったマリーさんは、本当に嬉しそうだった。商人だと云う自己紹介は、嘘じゃないらしい。
「それであんさん、ケガの方はどうなん? ちょい見してみぃ」
マリーさんの顔が近寄って来る。
あっ、ちっと、顔近いですよ、マリーさん。えっ!、あっ!!、…。
マリーさんの描写にはカイルの色ボケ補正が強力にかかっています。
マリーさんの話言葉はエセ関西弁です。関西弁には詳しくないので、おかしなところが有ったらご指導よろしくおねがいます。




