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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
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第18話 悔し涙

「この国の権力者は腐った奴等ばっかりなのか? ハンス様、リンデンベルガー・ダンジョンの方はどうなんです?」


 オットーが顔をしかめながら云った。


「リンデンベルガー・ダンジョンは、29年前、当時のリンデンベルガー伯爵の孫アルフレート様が、鹿狩りの最中に発見した。伯爵と後継ぎの息子は、その時王都にいたそうだ」


「まあ、お貴族様の子弟が領地で鹿狩りをするってぇのは、珍しいこっちゃありやせん。こっちの方はまともなんですかぃ?」


 オットーが首を傾げた。


「何がまとなもんか。アルフレート様は昇爵して現リンデンベルガー侯爵家御当主様だ。当年とって32歳。つまりダンジョンを見付けた時は3歳だったってことだ」


 ハンスの代わりにアルバンが吐き捨てるように答えた。


「3歳って、そんな幼児が鹿狩りに出れるわけがないでしょう。国はそんな無茶な申請を受け付けたのか…」


 クラウス兄さんが首を振った。


「リンデンベルガー・ダンジョンを、誰が本当に見付けたのかは分からなかった。田舎の猟師や(きこり)が一人いなくなっても、『読み売り』には書かれないからな。リンデンベルガー、ブラーハ、ヘルガーと、三つ続けて不合理な新ダンジョン発見が続いている。つまりは国の上層部もグルだってことだ。ダミアンたちのことを、国に訴え出ても無駄だ。忘れるしかない…」


「泣き寝入りするのかよ、親父! ダミアンたちの無念はどうするんだ」


 ここまで大人しくしていたが、遂に我慢が出来なくなった俺が叫んだ。


「オラも納得出来ねえ。ヨハンはまだ生きてるかもしれんのに…。オットー、おめえはどうだ?」


「納得出来るわけねぇだろう。テオがもし生きて囚われているなら助け出してやりたい。アルバンの旦那はどうなんだい?」


「そ、それは…」


 ヴィリーとオットーに詰め寄られたアルバンが口ごもった。ダミアンの父親としての立場と、父の従士としての立場の板挟みになっているのだ。


「落ち着け、お前たち。国へ訴え出ても介入が無いとすると、次はどうなると思う? オットー? ヴィリー?」


 そこへ親父が助け船を出した。オットーとヴィリーからの答えはない。


「戦争だ。…アルムス村とギーゼキング伯爵家との戦争になる。アルバン、アルムス村で戦える人間は何人いる?」


 親父が従士のアルバンに、アルムスの現有戦力を訊ねた。


「ええと、領主のハンス様と子息のクラウス様。奥方のアンネ様。カイル様は未だ無理ですか。従士のわたしに息子のカール、狩人のベンノとエッカルトは弓が使えます。しかし他は戦に出たこともない農民ばかりで…」


 アルバンの答えに親父は軽く頷いた。


「それに対しギーゼキング伯爵家は大身だ。常設の私設騎士団が12人。兵士が30人。金にあかせて傭兵を雇うことも出来る。うちに勝ち目はない」


 親父の言葉に、俺も含め、皆黙りこくってしまった。


「ダミアンたちのために、アルムスを危険にさらすわけにはいかん。もう一度云うぞ。ダミアンたちのことは忘れろ。これは領主命令だ!」


 俺は反論することも出来ず、ただ悔し涙を流すばかりだった…。


 ()しくも俺は今、ダミアンたちと同じ立場に立たされることになった。当然、ダンジョン発見を国に届け出ることなど自殺行為だ。


 このまま忘れちまうか?


 一番安全なのはすべてを無かったことにして、忘れてしまうことだ。しかしそれでは、一生に一度あるか無いかのチャンスを逃すことになる。


 カポカポカポと、遠くから蹄の音が聞こえて来る。ガラガラ云う音は荷車だろう。

 随分長いこと考え込んでしまっていたようだ。

 俺は起き上がろうとしたが、熱のため気力が出ない。


 荷車の音が俺の直ぐ脇で止まった。


「あんさん、どないしたん? 血ぃ出とるやないの」


 涼やかな若い女性の声がした。

 薄目を開けて見上げると、そこに天使がいた。

ようやく回想シーン終了です。退屈させてしまった方はご免なさい。

ハーレムパーティーを唄いながら、いまごろ異世界側(ダンジョンサイド)ヒロイン登場か!?

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