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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
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第1話 冒険者になろう!

 ドスン!


 俺は頭を地面にしたたか打ち付け、目を覚ました。

 どうやら、旅の途中で疲れて休憩しているうちに、うたた寝してしまったらしい。


 俺の名前はカイルと云う。カイル・ペーターゼン。

 ロスマイセン王国の辺境に位置する開拓村・アルムスの出身だ。


 父親はアルムスの領主で、騎士爵のハンス・ペーターゼン。俺はその次男である。

 領主と云っても、領主自ら畑を耕すような貧乏貴族だ。

 爵位は兄であるクラウスが継ぐことが決まっているので、15歳の成人を迎えた俺は家を出ることになった。


 家を継げない下級貴族の次男坊以下の身の振り方にはいくつかある。


①男子が生まれなかった他の騎士爵家へ婿入りまたは養子に入る

 見ず知らずの女性と結婚して、相手の親御さんに気を使って生きるのは、気疲れしそうだなぁ…。


②村の娘と結婚して兄貴の従士になる

 村の娘はみんな幼馴染で気が楽だけど、一生村に縛り付けられて生きるのは、息が詰まる。


③有力貴族の兵士になる

 生活が安定してて良さそうだけど、いざ戦争が起こったら、真っ先に命を使い潰される。マジ勘弁…。


④商家か職人へ弟子入りして平民になる

 細く長くってやつかな。師弟関係きびしそう。俺に耐えられるのか!?


⑤冒険者になって一攫千金を目指す

 半分ぐらいは途中で命を落とすか不具になるらしい。でも大金を稼いで男爵位を買った奴もいる。太く短くだぜぃ。イェィ!


 ってわけで、俺は冒険者を目指すべく、アルムス村を出てダンジョンがあると云うベルマッセン辺境伯領マイダスの街へ一人旅していた。

 健康のために歩いているんだよ、もちろん。決して馬車の運賃を買い食いして使いこんでしまったわけじゃない。ちがうんだよ!(テヘペロ)


 おっと、うたた寝のはなしだった。

 またあの・・夢だ…。


 俺は子供のころから奇妙な夢を見ることがあった。

『地球』と云う世界の俺は、『小杉雄太(こすぎゆうた)』と云う名で学校に通っている。

 ロスマイセン王国には、王都の貴族が通う王立士官学校ぐらいしかないのに、不思議な話だ。

 平民の両親がいて、妹が一人いて、町中の一軒家に住んでいる。

 俺から見たら、かなり裕福な家庭に見えるが、『地球』では平均的な家柄らしい。

 俺の住んでいた村にくらべると、地球はかなり文明の進んだ世界のようだ。

 馬を繋がなくても走る鉄の馬車や、空を飛ぶ機械など、王都にだって無いに違いない。


 子供の頃母親にその話をしたら、祈祷師の婆さんのところへ連れて行かれた。悪霊に取り憑かれたと思われたらしい。

 それ以来俺は『夢』の話を誰にもしなくなった。


 それにしても、俺はなんで頭を打ったんだ?

 背嚢(リュックサック)を枕代わりにして、避難区域で横になり、ちょっと一休みしていたはず。

 俺は右手で背嚢を(まさぐ)って愕然とした。


「無い!?」


 俺は焦った。背嚢には旅に必要な、水筒やら食料やら着替え。何より出立に当たって両親が用立ててくれた大金…俺の全財産が入っていた。


『キキッ!』


 近くで、動物の鳴き声が聞こえた。

 目をやると、褐色の毛にピンク色の顔と尻。俺の背嚢を背負った野猿(さる)が、俺の方を見てバカにするように歯を剥きだして笑っていた。

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