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処女迷宮 -ヴァージン・ダンジョン-  作者: 如月青河
第一章 処女迷宮発見編
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第13話 対グリーンスライム戦決着!

「ドリル攻撃!!」


 背筋が凍るって、正にこう云うのを云うんだろう。一つ間違えば、俺のどてっ腹に大きな風穴が開いてたんだから。俺の背中を削れば、大量のカキ氷が出来たよ、たぶん…。


 俺はその様子を、口を開けてポカンと見上げることしか出来なかった。足がすくんでいたんだ。


 グリーンスライムは天井にめり込んでいない下半分の身体を流動させると、四本の足腕を作り出した。それを穴の周りにつっかえ、『ふんぬっ!!』って云う掛け声が聞こえそうな感じで踏ん張った。

 上半分の身体がすぼっと抜け、瓦礫と一緒にスライムが落ちてくる。


 これまでグリーンスライムが見せて来たのは、打撃系の攻撃技ばかりだった。ここへ来て刺突系の攻撃を繰り出して来た。打撃技ばかり警戒していては駄目だ。冷静に考えれば、こう云う結論に達しただろう。だけどこの時の俺には、経験も知恵も足りなかったんだ。


 俺とスライムの位置が入れ替わり、スライムが鉄扉を背にすることになった。これで奴は反射攻撃を行えないはずだが。


 グリーンスライムが身を沈める。

 グリーンスライムがソロバンの珠型へ変形する。

 変形が復元し始める…。


 今まで通り、俺は左へ半歩身体をずらした。

 グリーンスライムが俺の右横を通過して行くはずった。

 ところが奴は、今までやって来なかったことをやって来たんだ。


 砲弾型のグリーンスライムから横へ足腕がむにょっと伸び、短剣を持つ俺の右腕に巻き付いた。そのままスライム本体が円を描き、俺の右腕を被うように巻き付いて来る。グリーンスライムの全体重を受け止めることになった俺は、尻もちをつくように引き倒された。


 直ぐにグリーンスライムの意図が明らかになった。短剣を持った俺の右手首を、スライムが凄まじい圧力で締め上げて来たのだ。

 南米の巨大な錦蛇・アナコンダは、人間を絞め殺してからゆっくり食べると聞いたことがあるが、俺の右腕に巻き付いたグリーンスライムの太さはアナコンダに劣らない。奴は俺の効き腕を破壊し、戦闘力を削ぐつもりなのだ。


 俺は短剣を右手から左手に持ち替えると、がむしゃらに切り付けた。

 しかしゴムタイヤを切り付けるような感触は変わらず、いっこうにスライムへダメージを与えることが出来ない。


 その間もスライムの締め付けは止まない。血管が破裂してしまいそうな圧力だ。

 そして遂に…


 ゴキン!と云う低い音と共に、俺の右手首が折られた。鈍い衝撃が右手から肩へ伝わり、折られた部分は痛いと云うより痺れた感じだ。

 同時にグリーンスライムの締め付けが緩んだ。攻撃を終えたのではない。俺の止めを刺しに来たのだ。


 右腕と俺の顔までは数十センチしかない。グリーンスライムはするすると右腕の巻き付きを解くと、俺の顔目がけて薄く広がった。


「!?」


 最初何が起こったのか分からなかった。だが直ぐに呼吸が出来ないことに気付く。グリーンスライムが俺の顔前面を覆うように張り付き、鼻と口を塞いだのだ。


(死ぬ…)


 この状態では数分と持たない。息が続かない。窒息する…。


 グリーンスライムが自分の顔に張り付いているので、短剣で攻撃することも出来ない。下手をすれば自分の顔を傷付けてしまう。何もしなければ窒息死する。絶体絶命である。


(ちくしょう!、死んでたまるか!!)


 俺は破れかぶれで口を大きく開いた。当然のようにグリーンスライムの肉が口の中に侵入して来る。それに構わず、俺は口の中へ短剣の刃先を突っ込んだ。

 分厚いゴムを突き刺しているみたいで、短剣の刃が通らない。


 俺はグリーンスライムごと短剣を噛んだ。肉を切り裂き、歯が金属を噛む感触。

 口の中に生臭い、そして青臭いような味が広がる。

 同時にグリーンスライムの身体が弛緩した。


 俺は必死に左手でスライムの死体を顔から引き剥がした。

 空気を(むさぼ)るように荒い呼吸をする。


「勝ったのか?…」


 こうして俺の初のダンジョン・モンスターとの戦いは決着した。

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